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    迅速会計クラウドで提供

    岩田 稔顧問 61 岩田会計事務所

    • iPadを手にクラウド化を活用した戦略を語る岩田さん(3日、岩田会計事務所で)=草竹敦紀撮影
      iPadを手にクラウド化を活用した戦略を語る岩田さん(3日、岩田会計事務所で)=草竹敦紀撮影

     かつては安定経営を誇った会計事務所も、価格やサービスの質の競争を強いられる時代になった。そんな中、小山市の岩田会計事務所は、先進的な情報通信技術(ICT◎)を駆使した「クラウド化」で生き残りを図ろうとしている。旗振り役の岩田稔顧問(61)に聞いた。(聞き手・草竹敦紀)

    ■市場規模横ばい

     ――会計事務所を取り巻く経営環境は厳しくなっている。

     「市場規模は10年ほど前から横ばいです。一方で、(報酬が自由化された)2002年の税理士法改正で、価格競争が激しさを増しています。会計事務所の収入源は、顧問先の事業所での記帳代行、月次決算の確認、年に1度の年末調整や確定申告申請による報酬ですが、小山でも価格下落圧力がかかっています」

     「会計ソフトの急速な普及で、税務・会計サービスの提供だけでは不十分になっています。顧問先が納得できる付加価値を提供できるか、業務効率を高められるかが重要になっています」

    ■出先でもスマホで即応

     ――生き残り策は。

     「(ネット経由でデータを管理・利用する)クラウドを活用して、顧客の問い合わせに迅速に対応できるサービスを提供しています。全所員に(携帯型端末の)iPadとiPhoneを貸与し、顧問先の決算書や通帳などを全てインターネット上のサーバーに蓄積して、所員間で共有できる仕組みをとることで、出先でも早急に対応できる態勢を整えています」

     「所員は12人しかいません。個人の生産性の向上は、事務所の生産性のアップに直結します。会計事務所には、所員の行動に自由度を与えつつも、所長が集権的に管理する必要があるという矛盾した課題がありました。クラウド化により、所員が他の所員の日程や達成度を確認できるため、情報共有に要するコスト削減が可能です。文書を紛失するリスクや余分なスペースを削減できる点も挙げられます」

    ■環境変化に対応

     ――クラウドに活路を見いだしたのはなぜか。

     「ICTの変遷を見ると、15年くらいの周期で大きな技術革新が起こっています。栃木県では価格競争はまだ低調で、クラウドの活用も進んでいませんが、技術の波及速度の速さを考えると、5年後には全く違う競争環境になっていると思います。今の時期に積極的に活用できる基盤を固めておかないと遅いという危機意識がありました」

     ――所員に浸透を図るのに苦労もあったのでは。

     「全員にスマートフォン、タブレットを配るだけでも金銭的コストがかかります。『使い倒すまで使ってくれ』と所員同士で教え合うことを徹底しました。4年かかってようやく情報の共有や業務品質の向上がしっかりできる達成局面に到達できたのかなと思っています」

     「その影響だけではありませんが、当事務所は所員1人が稼ぐ額が業界平均の倍近くです。浮いたコストは投資に回したり、賃金として還元したりしています」

    ■経営に助言も

     ――経営への助言にも力を入れている。

     「事務所で成功した手法を積極的に顧問先の企業に伝えるようにしています。iPadを使って顧客に製品の進捗や納品状況を説明するなどして効率性を高めた企業もあります。顧問先の企業の生産性が上がれば、当事務所に顧問料を払う価値を高めることにもつながります」

     ――今後の展開は。

    • 書類棚がない岩田会計事務所のスタッフルーム
      書類棚がない岩田会計事務所のスタッフルーム

     「小山に拠点を置いており、県南や茨城県西部の中小企業と共に歩むのが使命です。地元と歩むからには、積極的にノウハウを提供し、底上げを図りながら、他の会計事務所の追随を許さない更なるICT化の徹底を図っていきたいと思っています」

    ■ペーパーレス徹底

     岩田会計事務所のオフィスには、書類や本を置く棚がほとんどない。クラウドを活用したペーパーレス化がここでも徹底されている。

     顧問先の通帳や決算書などの情報は、訪問時に携帯式スキャナーで保存しており、データは全てクラウド上で共有できる。職員は、必要な情報を全てiPadやパソコンで検索することができ、紙資料を置く棚が必要ない仕組みになっている。

     外部の人と話し合いをするディスカッションルームには唯一本棚があり、税法の本が所狭しと並べられている。岩田顧問は「会計事務所に税の本がないとまずいだろうと置いている。スペースが節約できることで、開放感とゆとりのあるオフィスになっている」と胸を張る。

     いわた・みのる 1952年、茨城県結城市生まれ。75年、東大経済学部を卒業し、日本長期信用銀行に入行。神戸支店次長、公共金融室長などを歴任し、2000年に整理回収機構へ。大塚ベバレジを経て、09年に兄が経営する岩田会計事務所の顧問に就任。

    【岩田稔顧問】

     いわた・みのる 1952年、茨城県結城市生まれ。75年、東大経済学部を卒業し、日本長期信用銀行に入行。神戸支店次長、公共金融室長などを歴任し、2000年に整理回収機構へ。大塚ベバレジを経て、09年に兄が経営する岩田会計事務所の顧問に就任。

    【事務所概要】

     1983年に岩田顧問の兄で税理士の修一氏(現所長)が茨城県結城市に開業。93年に現在の小山市西城南に事務所を移転した。2009年、栃木市の会計事務所と経営統合。10年からICTの積極活用を始める。所員は12人(税理士1人)。毎月1回巡回する顧問先は約150社。内訳は栃木県約80社、茨城県約70社。会員制投稿サイト「フェイスブック」で所員が近況を更新するなどネットでも積極的に発信している。

    2014年03月05日 08時39分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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