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    思川桜酵母の酒 好評

    近江商人の血 地域に貢献

    • 「毎年1種類はオリジナル商品を開発したい」と話す野崎社長
      「毎年1種類はオリジナル商品を開発したい」と話す野崎社長

    野崎 一彦社長71 野崎本店

     創業150年近い歴史を持つ酒類問屋「野崎本店」(小山市)。5代目の野崎一彦社長(71)は、小山市の市花・オモイガワザクラ(思川桜)の花酵母を使った日本酒など、地元の農産品を使ったオリジナル商品の開発を続けている。(聞き手・谷和幸)

     ◆完売

     ――思川桜の花酵母を使った日本酒「思川桜花酵母の酒」が人気を集めている。

     「2014年に初めて本醸造酒を造り、15年は純米酒を造りました。大量生産が難しく、昨年は1000本、今年は1600本の限定販売ですが、おかげさまで昨年は完売し、今年も残りわずかです」

     ――商品開発のきっかけは。

     「小山高専物質工学科の上田誠教授と『地域のために一緒に何かやりましょう』という話になり、思川桜を使った酒造りを提案しました。上田教授と研究室の学生が13年、約20種類の酵母の中から酒造に適した2種類の抽出に成功し、市内の酒蔵などの協力で商品化しました。来年は純米吟醸酒に挑戦する計画です」

     ◆ハトムギでも

     ――以前から地元の農産品を使った商品開発を行っている。

     「祖先が近江商人で、その教えは地域貢献です。それを実践しようと、95年に小山市産の酒米を使った純米酒と純米吟醸酒を造ったのが最初でした。その後、市特産のハトムギを使った焼酎を開発しました。生産組合から相談を受けたのがきっかけで、ハトムギで焼酎を造った経験のある福岡県のメーカーに製造を依頼しました。03年から販売しており、今では看板商品に育ちました」

     ――焼酎だけでなく、ハトムギ茶も商品化している。

     「ハトムギに関わったことでティーバッグやせんべいなども作りましたが、一番のヒットはペットボトルのハトムギ茶です。6年前に大手飲料メーカー・伊藤園に小山市産ハトムギを原料として売り込みに行きました。20トンからスタートしましたが、昨年は95トンにまで増やしてもらっています」

     ――県や近隣市町の特産品を使った商品も開発している。

     「小山の商品の人気が高まったため、相談が寄せられるようになりました。これまでに栃木市の芋焼酎、野木町のヒマワリ焼酎、下野市の麦焼酎を商品化しました。県についても、特産のイチゴをPRしようと、2005年には県産とちおとめ100%のイチゴワインを造りました。県民の歌の歌詞にちなんで『栃の葉の風』と名付け、同名の芋焼酎、麦焼酎もそろえました。オリジナル商品は今では20種類近くになっています」

     ◆時代に対応

     ――少子化や高齢化で、国内の酒類市場の厳しさは増している。

     「地方の酒類問屋が生き抜いていくには、時代の変化に合った仕事をしなければなりません。消費者ニーズに合った新商品を1年に一つずつは開発していきたいですね。思川桜の花酵母は白ワイン用も抽出してあるので、小山市内のブドウ農家と話を進めています。近い将来には商品化できると思います。また、初めてのオリジナル商品となった日本酒は、昨年から米国のカリフォルニア州のスーパーへ輸出を始めました。オリジナル商品の輸出は今後も拡大していきたいと思います」

    ◎会社概要

     江戸時代には近江商人だった祖先が現在の日光市で造り酒屋を営んでいた。戊辰戦争を契機に1872年(明治5年)、現在の小山市宮本町に移り、酒類問屋として創業。1955年に株式会社化し、92年に本社を同市神鳥谷に移転。売上高は2014年9月期で約12億円。従業員7人。卸売り業務が中心の本社のほか、小売店も持つ。

     

    のざき・かずひこ

     1944年、小山市生まれ。慶応大卒業後、食品商社に就職。3年間勤務した後、野崎本店に入社。88年に5代目社長に就任。県卸酒販組合副理事長、テレビ小山放送取締役も務める。趣味は写真撮影。主に風景写真を撮り、写真展にも出品している。

     ◆消費拡大へ乾杯条例

     国内の酒類市場が縮小傾向にある中、地域の酒類の消費拡大を図ろうと、全国の自治体で「乾杯条例」を制定する動きが広がっている。

     乾杯条例は2013年1月に京都市で施行されたのが全国初で、日本酒造組合中央会(東京都港区)のまとめによると、今年4月時点で全国の103自治体が制定している。内訳は、日本酒を対象としたものが35、日本酒や焼酎など対象が47、本格焼酎対象が10、ワインや梅酒、牛乳など対象が11。

     県内では、県と大田原市が14年1月、小山市が同年4月、佐野市が同年7月に施行している。那須塩原市も今年4月、牛乳対象の乾杯条例を施行した。小山市は条例制定を機に14年12月から試験的に地酒のアンテナショップを開設。今年4月からは毎月第2、第4金曜日にJR小山駅中央自由通路の一角にショップを通年開設するなど、地酒消費を後押ししている。

    2015年05月27日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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