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    8社増益、2社黒字化/県内上場14社

     県内上場企業のうち14社の2015年3月期決算が出そろい、税引き後利益で8社が増益、2社が黒字化を達成した。前期に本格化した安倍政権の経済政策「アベノミクス」による円安・株高傾向が続いたが、商品力や営業力など企業努力も目立った。円安に不利な原材料を輸入する企業も自社努力で克服した。16年3月期は、7社が増益・黒字化を予想している。

    (市川大輔)

    • 好調な業績だった元気寿司の決算会見(19日、東京都中央区で)
      好調な業績だった元気寿司の決算会見(19日、東京都中央区で)

    ◇ 円安効果と企業努力

    ■好調

     建設資材の鉄筋を扱う電炉メーカーの東京鉄鋼は、税引き後利益を約3・4倍へ大幅に増やした。人手不足による工事遅延で需要は盛り上がりを欠き、生産で大量消費する電力料金も高値だった。だが、作業を省力化できる主力のネジ節鉄筋の競争力が高く、売上高を約1割増やした。原料の鉄スクラップ価格が低下し、利益を積み上げた。

     売上高が過去最高だったのは元気寿司。国内では、「魚べい」が100円超の“高額メニュー”も含めて好調を維持。回転レーンを設けず、注文に応じて高速レーンで運ぶ「オールオーダー型」の人気が高く、新規や改装店舗に投入。採算性の低い店舗を閉じ、税引き後利益も約8割増だった。

     建設資材商社の藤井産業は、売上高や税引き後利益が過去最高。12年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度がスタートし、急増した太陽光発電の関連資材の売り上げがそれほど落ち込まなかった。円安で好況の輸出企業を中心として設備投資も増加した。

     食品加工機械を国内外へ販売するレオン自動機は、大手メーカーによる製パンラインの設備投資が続き、米国関連会社も堅調だった。円安基調で過去最高益だった前期を上回った。

     ハンバーグレストランのフライングガーデンと滝沢ハムはともに、前期赤字の税引き後利益が黒字に転換した。それぞれ季節メニューや新商品が人気で、高騰する原材料価格のコスト削減を進めた。

    ◇ 価格競争で利益減らす

    ■打撃

     自動車部品のタツミは、自動車業界の回復基調で、売り上げを増やした。円安の為替差益で経常利益も膨らんだが、メキシコ子会社の設立や保有株式の売却損で、税引き後利益を約3割減らした。

     住宅販売のグランディハウスは、今後拡大を狙う千葉県内を中心に注力。販売棟数は1170棟で過去最高を更新した。消費増税前の駆け込み需要の反動減で厳しいなか、価格競争した影響で利益は落とした。

     カワチ薬品は、福島県を中心とした地価の下落で損失を計上し、税引き後利益で初めての赤字に転落した。16年3月期は、店舗の規模や立地を踏まえて出店と退店を進め、V字回復を見込む。

    • 2期連続で過去最高益を更新した決算を発表する栃銀の菊池頭取(8日、県庁で)
      2期連続で過去最高益を更新した決算を発表する栃銀の菊池頭取(8日、県庁で)

    ◇ 北関東4行は増益

     北関東3県の地方銀行6行の2015年3月期の連結税引き後利益は、足利ホールディングス(HD)と東和銀行を除く4行が前期から増加した。

     増益4行では、栃木銀行が投資信託の運用や販売が好調で前期比約5割増となり、2期連続で過去最高益を更新。群馬銀行は、中小企業や個人への貸し出しを伸ばし、単体の過去最高益を塗り替えた。常陽銀行も4期連続の増益で過去最高益。筑波銀行は前期比で約3割増やした。

     減益2行をみると、東和銀は過去最高だった前期並みだったが、足利HDは、前期に保有株式などの売却益を大幅に計上したため、約3割減少した。

     16年3月期の業績予想では、5行が減益を見込む。市場環境に依存する有価証券や投資信託などによる利益を見込んでいないためだ。

     各行とも本来の業務である中小企業への貸し出しを伸ばしたい考えで、足利HDの松下正直社長は「設備投資が増えていて資金需要はある」。栃木銀の菊池康雄頭取は「業績が上がりそうな中小企業には積極的に融資する」と話した。

    ◇ ベア県内でも広がり

     県経営者協会が今年2~3月に実施した調査(回答91社)では、定期昇給制度がある71社のうち約2割が、定昇に加えてベースアップ(ベア)を予定していると回答した。

     企業の規模別では、300人以上で44%に上ったが、100人未満では7%にとどまった。業態でみると、製造業は3割を超えたが、非製造業は1割台だった。

     一方、定昇制度がない20社では、4割が賃上げをすると答えた。同協会の石塚洋史専務理事は、ベアや賃上げを歓迎しながら、「多くは業績回復の還元ではなく、売り手市場で人手を確保するために上げざるを得ないのだろう」と懸念を示した。

     足利銀行は7月から、従業員の給与を1%引き上げるベアを実施する方針だ。対象はパートを含む約4500人。ベアは1995年以来、20年ぶりとなる。経営環境の改善を背景とし「従業員の士気向上を図りたい」としている。

     銀行業界では96年以降、不良債権問題による経営悪化でベアを見送っていたが、昨年、大手3行が19年ぶりに実施。今年は全国の地銀にも広がっている。

     また、元気寿司は4月から、正社員約450人の基本給5000円のベアを実施した。同社初のベアで、県内でこれほどの額を引き上げるのは珍しい。今後の事業拡大を見据え、優秀な人材を確保する狙いだ。大卒初任給も今春から5000円増の21万5000円とした。

    • あしぎん総合研究所 豊田晃・主席研究員
      あしぎん総合研究所 豊田晃・主席研究員

    ◇ あしぎん総合研究所/豊田晃・主席研究員に聞く/もはやリーマン後ではない

     県内企業の業況は、おおむね昨年後半に底を打った感が強い。昨年4月の消費増税後の景気停滞は当初、夏頃に回復するとの予想だった。長引いて1年かかったが、4~6月期は回復してきた。

     7~9月期も、円安の恩恵を受ける機械や食品などをはじめ、全体としても上向くだろう。

     今年度の賃上げは、定期昇給ではなく、基本給を底上げするベースアップが広がっている。今夏のボーナスも前年を超えてリーマン・ショック前の水準に迫るとみられ、「もはやリーマン後ではない」と言える。

     個人消費も、消費増税前の駆け込み需要があった乗用車や住宅を中心に力強さを欠くが、着実に回復に向かっている。

     景気の見通しでは、中長期的には不透明だが、当面1年ほどは回復を強めていくだろう。日経平均株価は4月、ITバブル期以来15年ぶりに2万円を突破した。株式市場は実体経済と異なるとの見方もあるが、期待感が先行して高騰した当時と違い、今回は先行指標になる。

     株価を支える円安は、日本や米国の金融政策を踏まえると、今後も進むはずだ。県内を含めて輸出企業の業績がさらに上向き、また一段と株価が上がる可能性がある。

    2015年05月28日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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