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    活性化へ集中議論


    ◆県議会6常任委特定テーマ決定

     県議会の常任委員会が集中的に調査する特定テーマが決まった。県土整備や経済企業など六つの常任委員会は年内にそれぞれの報告書をまとめて県に提言し、県が具体的な施策に反映させる。今年度は地域活性化や人口減少などへの課題解決に関するテーマが多く、報告書で処方箋を示せるかどうか。調査の行方が注目される。(萩原栄太、市川大輔、永井綾香)




    ◆農村に誘客女性照準

     農林環境委員会は「農山村資源を活用した交流拠点の活性化」をテーマに調査する。委員長の若林和雄県議は「農村レストランや、農産物直売所で地方創生につなげたい」と説明する。

    • 10年前は、まだ集落には子どもがいて、百堂念仏の踊りが継承されていた(2005年8月撮影=茂木町提供)
      10年前は、まだ集落には子どもがいて、百堂念仏の踊りが継承されていた(2005年8月撮影=茂木町提供)

     農村レストランとは、農家や農協が地元農産物の料理を出す施設。県の調査によると、1990年代に増加し、2005年度に70か所に達したが、その後は横ばい。直売所も1985年度の14か所から増え続けたが、2000年度をピークに頭打ちとなった。

     人を呼び込むにはどのような方法があるのか。

     里山に囲まれた集落に立つ農村レストラン「花農場あわの」(鹿沼市中粕尾)は、多い日に200人以上が訪れる。約1ヘクタールの敷地内に年間200種類のハーブや花も育てられており、爽やかな香りに包まれて色とりどりの花畑を眺めながら、自家製のハーブや野菜を使ったパスタやピザを楽しめる。

     社長の若林ふみ子さん(65)は「ターゲットは夫や友人を連れてくる女性」と話す。食事だけで帰るのではなく、とどまってもらうよう工夫し、手作りのジャムやクッキー、手芸品を販売したり、ドライフラワーや押し花を体験するスペースも設けたりしている。

     大田原市佐久山地区の農家たちが運営する直売所「きらり佐久山」は昨年9月、敷地内に飲食施設を建てた。無農薬、有機肥料の地元のコメや旬の野菜を使った定食を提供。主婦が作る家庭の味にリピーターがついた。

     調理場で煮物やきんぴらなどの総菜も作って直売所で商品として販売し、地元野菜の売れ行きを後押しする。昨年の売上高は1億5000万円で、県内の直売所平均の約3倍に上る。

     都市農山漁村交流活性化機構(東京都)の宍戸信一氏は「農村拠点の活性化に必要な要素は飲食、体験、景観、土産、宿泊の5点。首都圏に近く、農業が盛んな栃木県は恵まれている」と話す。

    • 採れたてのハーブ入り料理を食べながら望む花畑では散策もできる(4日、鹿沼市の花農場あわので)
      採れたてのハーブ入り料理を食べながら望む花畑では散策もできる(4日、鹿沼市の花農場あわので)

     県は今年度、新たに農村地域の施設を整備する補助事業に取り組むが、総事業費は1000万円にとどまる。県による支援拡充で魅力のある施設ができるか注目される。


    <特定テーマ>
     県議8、9人からなる六つの常任委員会が年度ごとに設定。参考人から意見を聞いたり、現地調査を行ったりして、県に政策提言する。既に提言されたテーマについては、県の施策の状況もチェックする。議会の政策立案機能の強化を目的に、通年議会が始まった2012年春に導入された。



    ◆今年度8項目 

     今年度の特定テーマは前年度より一つ減り、8項目。

     経済企業委員会は、2020年東京五輪・パラリンピックを控え、施設整備とおもてなしのソフト・ハード両面から、観光誘客の戦略を探る。

     地方創生や人口減対策に関するテーマを掲げたのは、4委員会で5項目。

     県政経営委は、行政の地域間競争が激化する中、新たな政策課題に柔軟に対応する職員の養成について考える。県土整備委は、道路などの産業基盤整備や防災対策のあり方を探る。農林環境委は、農山村地域に若者や都市部の住民を呼び込むための方策を研究する。

     生活保健福祉委は伝統文化の保存や継承について調べるほか、若者が仕事と家庭を両立できる環境づくりも研究対象とする。

     文教警察委は2テーマを設定。児童虐待や配偶者からの暴力(DV)の未然防止と拡大防止について考える。教育分野では、地域や国際社会で活躍できる若者の育成を取り上げる。


    ◆過疎化伝統芸能の継承模索

     生活保健福祉委は、県内外への地域文化の魅力発信や伝統文化の継承など、「『とちぎの文化』の振興」をテーマに議論する。人口減による後継者難で、休止に追い込まれる伝統芸能も増えつつあり、解決策を模索する。

     今年1月の県文化振興審議会では、出席した委員から「指導者、伝統文化を守る人が高齢化している」「過疎化で担い手がいない。地域の問題は深刻だ」などと伝統文化の先行きを懸念する意見が相次いだ。

     現在、県内の無形民俗文化財は国が13件、県が22件、市町が183件。しかし、県指定の「山内上組百堂念仏」(茂木町)は7月から正式に活動を休止するほか、同町指定の「飯野歌舞伎」なども休止に追い込まれている。

     百堂念仏は200年以上前から伝わる。2頭の獅子舞と念仏踊りに口上が加わり、無病息災や五穀豊穣ほうじょうを願って毎年8月のお盆に3日間上演される異色の芸能。戦後混乱期の1947年以降、しばらく上演が途絶えていたが、83年に復活。最盛期には100人以上が携わったが、2012年に獅子舞が地区内を巡回して以降、休止状態だった。

     保存会の小林忠会長(74)は「限界集落で地区に子どもがいない。全盛期の映像を残しているので、それを見て復活してくれる人を待つしかない」と嘆く。

     県は09年度に設置した文化振興基金で、担い手の育成や用具・衣装の修繕など、昨年度までに計104件2648万円を助成したが、後継者不足の根本的な解決には至っていない。

     文化庁は、伝統芸能の体験プログラムなどの地域活性化事業に補助金を出しており、三重県名張市では、途絶えた獅子舞が復活したケースもある。

     県郷土芸能保存協会の桜井基一郎会長(68)は「伝統芸能は世代を超えた絆づくりに役立っている。なくなればコミュニティーの崩壊につながる。県や市町と、地域が一丸となり、全国にPRしていくことが重要だ」と指摘している。

    2015年06月06日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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