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    イノシシ被害最悪1.5億円

    ハンター養成急務

    • 山の斜面にくくりわなを仕掛ける松沢さん。地中に埋めた筒状の型に、板と松沢さんが手に持っているワイヤを置く。イノシシやシカが足を踏み入れたら、ワイヤで一気に締め上げる仕組みだ(9日、鹿沼市で)
      山の斜面にくくりわなを仕掛ける松沢さん。地中に埋めた筒状の型に、板と松沢さんが手に持っているワイヤを置く。イノシシやシカが足を踏み入れたら、ワイヤで一気に締め上げる仕組みだ(9日、鹿沼市で)

     イノシシによる県内農作物の被害が深刻だ。2014年度の被害額は1億5600万円と過去最高を記録した。生息数も増加傾向にあり、ハンターの減少が一因とみられている。県に登録する狩猟者数はピーク時の5分の1となり、高齢化も進行している。県は今年度から、捕獲した際の奨励金の増額やハンターの技能講習会を増やすなど、対策を強化しており、ハンターの養成は急務となっている。(草竹敦紀)








    ◇毎日が知恵比べ

    • 箱わなにイノシシのエサをまく松沢さん
      箱わなにイノシシのエサをまく松沢さん

     「毎日毎日がイノシシとの知恵比べ。あいつらは敏感だから、感づかれないように神経を使うよ」。今月9日、鹿沼市永野地区の山の斜面に、地元のハンターの松沢吉治さん(64)がくくりわなを仕掛けていた。

     松沢さんのくくりわなは、掘った穴に筒状の型を埋め込み、板と土を覆いかぶせて、イノシシやシカが足を踏み入れると、輪になったワイヤがしまって縛り上げる仕組みだ。

     イノシシは、獣道の臭いの変化に敏感なため、設置する際は土の臭いのこびりついた手袋を使い、約1か月土まみれにしたわなを使う。

     本職は自動車整備業で、山菜採りが趣味だった。山菜がイノシシに荒らされるようになり、10年ほど前、わなの狩猟免許を取った。


    ◇年20頭捕獲

    • 箱わなにかかったイノシシ=県提供
      箱わなにかかったイノシシ=県提供

     農家からのSOSが相次ぎ、今では常時15か所にくくりわなと箱わなを設置し、年間約20頭捕獲している。わなにかかったイノシシは足を引きちぎって逃げることもある。高齢のため、やりでとどめを刺すのが難しくなり、昨年、銃猟免許も取得した。日に2回以上の見回りやイノシシの埋却など負担は大きいが、今後も続けるつもりだ。





    ◇ソバ生産断念 鹿沼の農家

    • イノシシ被害でソバの生産を断念した小太刀さん。家庭菜園の畑は電気柵で囲っている(鹿沼市で)
      イノシシ被害でソバの生産を断念した小太刀さん。家庭菜園の畑は電気柵で囲っている(鹿沼市で)

     「獣たちも生きるために必死だから、どんな対策をしてもいたちごっこだよね」。鹿沼市下永野で農業を営む小太刀清さん(78)はため息をついた。イノシシの被害が深刻になったのはここ6、7年。収穫期には毎夜、裏山からおりてくるイノシシに、ソバの芽を食べられ、約1ヘクタールの畑が全滅したこともあった。

     畑の周囲をロープで囲ったが、イノシシは穴を掘って入り込んでくる。唐辛子やドクダミの刺激臭を発するロープに切り替えたが、いったん慣れたイノシシには効果がなかった。

     昨年からソバとトウモロコシなどの生産を断念せざるを得なかった。電気柵で囲った家庭菜園と、麻の生産で食いつないでいる。





    ◇登録者ピークの1/5

     県の調べでは、県内には2013年度末時点で約3万3000頭のイノシシが生息していると推計される。分布域も、全県的に広がっている。県は23年度までにイノシシを半減させる計画を立てる。

     県は13年度、1頭捕獲するごとに奨励金6000円をハンターに支給する制度を開始。イノシシの捕獲数は、14年度は過去最高の約1万3000頭に増えた。今年度は奨励金を8000円に増額した。

     だが、ハンターの減少と高齢化は深刻だ。14年度の狩猟者登録数は3101人で、ピークだった1976年(1万7659人)の20%未満に落ち込んだ。現在、60歳以上が7割を占め、県猟友会は「5年後、10年後に現在の捕獲頭数を確保するのは難しい」と分析する。

     第1種銃(火薬を使う銃)猟免許登録者が減り続ける一方、近年、わな猟の免許登録者は増えている。14年度の狩猟免許合格者数は251人と3年間で倍近くなった。14年度の合格者のうち、わな猟が176人と、合格者の7割を占めた。

     しかし、県の調べでは、わな猟免許登録者のうち、年間1頭も捕獲できない人が半分を占める。

    • 県猟友会が開いた免許試験の事前講習会。若い世代の参加者も。14年度の第1種銃猟免許合格者は70人と、2年連続で増加した(8日、宇都宮市で)
      県猟友会が開いた免許試験の事前講習会。若い世代の参加者も。14年度の第1種銃猟免許合格者は70人と、2年連続で増加した(8日、宇都宮市で)

     県自然環境課によると、鳥獣の生態を知らずにわなを仕掛けていることが原因といい、県は今年度から、わな猟免許を更新する人を対象に技能講習を県内10か所以上で開催する。山を知るベテランから経験を伝授してもらうのが狙いだ。

     県はこのほか、捕獲を専門業者に委託するなど新たな対策を模索している。




    ◇農地侵入防止 里山整備進む

     イノシシ被害対策は、捕獲だけではない。農地への侵入を防ぐため、県や市町は里山と農地を隔離する事業も進めている。

     電気柵やメッシュ柵の設置は、被害を減らすことに一定の効果を上げている。

     茂木町では、2006年度から国の交付金を使って電気柵の設置費用の7割を補助している。各集落で設置が進み、14年度の被害額は10年前と比べて10分の1となった。

     だが、柵周辺の草刈りや設置作業などで住民間の協力が不可欠で、柵の設置で国の交付金を得るには集落単位で申請する必要がある。このため、合意が得られずに設置できないケースもあるという。

     イノシシは人目に付く場所には警戒して近づかないため、平地と里山の境界の草木を切り開いて、見通しをよくすることも効果がある。県は08年度から整備事業を始め、13年度までに1881ヘクタールに達している。

    2015年07月18日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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