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    つかめ固定客

    ■来店者全国3位 でも売上高は低迷

    ■とちまるショップ開店3年

     県が東京スカイツリーにアンテナショップ「とちまるショップ」をオープンして3年が過ぎた。来客数は全国3位ながら、売上高は伸び悩んでおり、他県の取り組みも参考に、どのような工夫が必要なのかを探る。(市川大輔、草竹敦紀)

    ■スカイツリータウン

     年間3000万人以上が訪れる東京都墨田区の「東京スカイツリータウン」。商業施設「東京ソラマチ」4階にある「とちまるショップ」には、平日夕方でも客が絶えず訪れる。

     2012年5月、タワーの開業と同時に出店。初年度の来店者は215万人に上り、14年度も150万人を超えた。読売新聞の調べでは、来店者数は北海道、沖縄県のアンテナショップに次いで全国3位だ。

     ところが、年間売上高(商品・旅行券除く)は開業以来、1億4000万円前後。3億円以上の店も10か所以上あり、とちまるショップの低調さが目立つ。

     ソラマチには約300店が競合しており、とちまるショップを目当てに訪れる客は少ないとみられる。来店者のうち購入者は1割程度で、客単価も約600円と低い。ソラマチ全体の来場者減に伴い、来店者も減少傾向で、加藤恵三マネジャーは「じり貧になる」と危機感を募らせる。

     今後、鍵となるのが固定客だ。客単価は約1600円と客平均の2・5倍。固定客が増えれば、客が減っても売上高を伸ばせる可能性がある。

    ■ポイントや割引

     1万5000円の買い物をすると1000円分の商品券がもらえるポイントカードを12年末に発行。昨年からは、試験的な商品を3か月販売し、好調なら本採用する「チャレンジ販売制度」も開始した。

     カードは発行数が約1500枚に達したが、毎月利用する客は1~2割に過ぎない。これといったヒット商品も生まれていない。

    • 「3割引」のポスターが至る所に貼られてあるとちまるショップの店頭(7月31日)
      「3割引」のポスターが至る所に貼られてあるとちまるショップの店頭(7月31日)

     今年6月からは、地方創生の交付金を使い、3割引きで売る「ふるさと割」を始めた。先月末には墨田区の約3万2000世帯にチラシを配布。6月の売り上げは前年比約1割増えた。

     県観光交流課は「安さで手に取ってもらい、商品の良さに気づいてもらうきっかけにしたい」と期待する。

    ■福井 購買率7割 鯖寿司ヒット

     福井県のアンテナショップ「ふくい南青山291」(東京都港区)は表参道駅から徒歩5分の県有地のビル1階に02年に開店した。大通りから外れた場所にあり、14年度の年間来店者数は約17万人だが、売上高は1億6000万円でとちまるショップを上回る。購買率は来店者の7割で、客単価がとちまるショップの4倍の2500円にもなる。

    • ふくい南青山291でヒット商品になっている「焼き鯖寿司」
      ふくい南青山291でヒット商品になっている「焼き鯖寿司」

     秘密は固定客だ。2階の貸しスペースで開かれる催しの来場者や、ショップ周辺の住民に会員になるよう呼びかけてきた。会員には、越前ガニの発売や催事に合わせ、こまめにメールやはがきを送る。

     商品開発の工夫も好調な売り上げを支える。店員は毎月、同県に帰って新商品を発掘する。例えば、「焼きさば寿司ずし」は、地元では丸ごと1匹使うが、東京では核家族が多いため、半身で販売。ヒット商品になっている。

    • 他店との連携で「食の國福井館」が開いた地酒を飲み歩く催し。7月31日~8月2日の3日間で約1300人が来店した(食の國福井館で)
      他店との連携で「食の國福井館」が開いた地酒を飲み歩く催し。7月31日~8月2日の3日間で約1300人が来店した(食の國福井館で)

     13年には銀座に2店目「食の國福井館」を開店し、商品の約7割を海産物にして「海の県」をPR。銀座の他県ショップと連携した催しも開き、売上高は1億2000万円に達している。

    ■長野 連日イベント 移住相談も

    • 銀座NAGANOで開かれた地酒の講座(7月15日)
      銀座NAGANOで開かれた地酒の講座(7月15日)

     東京・銀座にある長野県アンテナショップ「銀座NAGANO しあわせ信州シェアスペース」で先月、日本酒講座が開かれた。「この酒はバナナのような香りがします」。講師の説明を聞きながら、参加者たちはワイングラスを傾けて同県の地酒を味わった。

     同店の特徴は、県の魅力をPRするイベントをほぼ毎日開催していること。移住に結びつける狙いもあり、相談や情報提供も行う。

     ビルの3フロアのうち、1階は物販で、2階はオープンキッチンがあるイベントスペース。名物を生かしたそば打ちやワイン講座、信州野菜の料理教室などを開いており、平日でも満員という。4階の移住やビジネススペースには、県職員のほか、地元銀行や長野労働局の職員が常駐し、住まいや就職の相談に乗る。

     同県が実施した来客調査によると、オープン直後の昨年12月は同県出身か住んだことのある人が3分の2を占めた。だが、今年5月には同県に縁のない人が3分の2近くに上った。同県は「固定客が着実に増えており、移住にもつながるはず」と期待を寄せる。

    ■地域活性化センター畠田・広報室長に聞く

    ■「ここだけ」が大事

    • 畠田千鶴広報室長
      畠田千鶴広報室長

     自治体のアンテナショップに詳しい「地域活性化センター」(東京)の畠田千鶴・広報室長に「とちまるショップ」の課題克服の方策を尋ねた。

     アンテナショップは、地場産品や地域の情報発信によって自治体のブランド力向上を狙える。2000年代に入って急増し、特に、銀座周辺に集積しており、消費者にとっては回遊して旅気分も味わえる。集積効果を狙い、近隣店と連携イベントを開く自治体もあり、鳥取と岡山両県は店を共同運営している。

     とちまるショップの場合、スカイツリーの観光を目的とした客が多く、「栃木」を目当てに来る客は少ないはず。銀座のようなアンテナショップの集積もない。

     訪れた人にアピールするには、ツリーや他店と協力した限定商品を開発するのが有効ではないか。ソラマチ内のレストランで「とちおとめフェア」を開いたり、有名パティシエとイチゴのスイーツを共同開発したりすることが考えられる。

     固定客獲得には、ここでしか手に入らないという「特別感」が大事。ショップ内でイチゴや日光東照宮などをテーマにしたミニセミナーの開催も手だ。

    2015年08月20日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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