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    再生エネ・上

    • 新青木発電所の水車。この1台で500キロ・ワットの発電ができる(那須塩原市で)
      新青木発電所の水車。この1台で500キロ・ワットの発電ができる(那須塩原市で)

    ◇小水力発電23年で8基◇

     再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を背景に県内では大規模太陽光発電所(メガソーラー)が急増し、県が目標とする今年度の発電量は達成される見通しとなった。一方、生物資源によるバイオマスや、中小規模の水力など、次なる再生エネの取り組みも始まっている。県内の現状を探った。

     固定価格買い取り制度(FIT◎) 国が再生エネの普及を目的に2012年7月に始めた。再生エネで作られた電気を、電力会社に通常の電気料金よりも高い価格で一定期間買い取らせる制度。発電事業者は国から設備容量などの認定を受けた後に発電所を設置して売電できる。対象となるのは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5種類。◎FIT=Feed in Tariff

    ◇川と標高差生かす◇

    ◆水利権持つ住民説得カギ◆

    那須野ヶ原土地改良区連合

     那須塩原市青木にある新青木発電所。倉庫一つ分の施設の中で、1台の水車が轟音ごうおんを鳴り響かせていた。約3キロ上流の調整池から引いた水を44メートルの落差で流れ込ませ、約500キロ・ワットの電気を生み出している。

     昨年4月に、那須野ヶ原土地改良区連合(那須塩原市)が8基目の発電所として稼働させた。総工費は約6億6000万円だが、同連合参事の星野恵美子さんは「一度作れば、水がある限り発電できる。リターンが多いので初期投資を回収できる」と説明する。

     同連合の最初の水力発電所稼働は1992年。米価の下落に直面し、農家が用水路の維持などのために同連合に支払う負担金を軽減する目的で設置した。那珂川とほうき川に挟まれた約4万ヘクタールの管理地には、480メートルの標高差があり、水力発電に欠かせない水量と落差があることに着目した。

     発電所の設置場所の選定が難しかったという。取水口からの距離が長いほど費用がかかり、農業用水の各地点の流量や傾斜を測り、採算性を調査した。

     また、水利権を持つ周辺住民の同意も必要だ。売電による利益を疑問視し、反対する農家も多かったが、地道に説得したという。

     今では、電気事業者への売電収入が改良区に入ることで、農家の負担金は以前の3分の1に下がった。星野さんは「一つの発電所を作るのに時間がかかる。20年以上、ねばり強く取り組んだ結果」と話している。

    適地多い本県促進へ協議会 出力1万キロ・ワット未満の小水力発電はFITの対象となっているが、まだ広がっていない。全国小水力利用推進協議会によると、本県は水量の多い河川があり、高低差がある地形が多いことから適地も多い。

     だが、県によると、今年4月末現在、県内でFITを使った小水力発電は、同連合と県の事業のみとみられる。県は今年、河川の過去10年の平均流量や、標高を検索できるシステムを始めた。また、県内の事業者らは6月、小水力利用を促す協議会を結成し、適地選びや同意交渉の後押しに乗り出した。

    ◇捨てていた湯で旅館の暖房◇

    奥日光湯元温泉

    • 温泉の排水熱を暖房に利用する仕組みを説明する福田さん(19日、日光市湯元のゆ宿美や川で)
      温泉の排水熱を暖房に利用する仕組みを説明する福田さん(19日、日光市湯元のゆ宿美や川で)

     湯船からあふれ出た湯が建物裏の槽に流れ込む。槽の中には、幾重ものパイプが巡り、熱を帯びたパイプが館内を暖める。

     奥日光湯元温泉(日光市)の旅館「ゆ宿美や川」の福田泰夫さん(62)は、「昔は捨てていた湯が役立っています」とほほ笑んだ。

     周辺はラムサール条約湿地に登録される自然豊かな地域。福田さんは掛け流しの温泉の湯を環境に生かせないかと考えていた。地熱の一つである温泉熱を暖房と給湯に利用するシステムを知り、2013年に導入。総工費は1400万円だったが、建物の省エネ化に受けられる国の補助金約600万円を活用した。

     これまで使っていたファンヒーターやストーブは不要になった。年間の灯油代約100万円は減らせたが、電気代が上がり、コスト削減はわずか。しかし「空気を汚さず、奥日光の自然に優しいのが良い」と話す。廊下など建物全体が暖かくなり、「外がマイナス15度の冬場でも館内では半袖で快適に過ごせる」といい、灯油の臭いや燃焼音もなくなった。宿泊客のリピーターが増え、売り上げも1~2割伸びたという。

     湯元温泉地区でこうした設備を導入しているのは美や川だけだが、行政の働きかけもあり、他の宿泊施設なども興味を持ち始めた。昨年度、温泉熱利用普及促進協議会を発足させ、研究を始めた。既に数軒が導入を検討している。

    ◆エコで地域活性◆

     美や川のシステムの効果などを検証してきた宇都宮大の横尾昇剛准教授(建築環境工学)も、同協議会に助言しているほか、今年度は、湯元地区を中心とした奥日光の活性化に向けたプロジェクトに着手した。再生エネを実践学習する場にしたり、学生と地元民が協力して対外的に情報発信したりする構想だ。

     福田さんは「環境配慮の先進地であるツェルマット(スイス)のようなエコリゾート地にしたい」と夢を膨らませる。

    ◇再生エネ着々増◇

     県が昨年策定したエネルギー戦略によると、県内の電力使用量に占める再生エネの発電量(2011年度)は、7%にとどまる。ただ、30年度に13%とする目標の達成に向けては、順調に滑り出している。

     設備容量でみると、目標は30年度に160万キロ・ワット。15年度に86万キロ・ワットを目標としているが、今年4月末現在(約89万キロ・ワット)で上回っている。だが、太陽光が96%を占め、他の再生エネは目標に達していない。

     太陽光発電が増えている理由について、県地球温暖化対策課は「適地選びや設置交渉が他の再生エネに比べて容易」と分析している。バイオマスは3万キロ・ワット、小水力は1720キロ・ワット。地熱と風力はゼロだった。

     全国の再生エネの設備容量でも太陽光が84%と大半を占めたが、北海道や鹿児島県などでは風力も伸びており、約10%を占めている。

     買い取り価格は、太陽光が当初の1キロ・ワット時40円から設備の増加により27円に下がった。一方、他は下がっていない。同課は「今後は徐々に他のエネルギーも伸びていく可能性はある」と期待している。

    2015年08月27日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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