文字サイズ

    足銀統合影響は不透明

    • 経営統合の基本合意が決まり握手する常陽銀行の寺門一義頭取(左)と足利ホールディングスの松下正直社長(2日午後5時25分、東京都中央区で)=稲垣政則撮影
      経営統合の基本合意が決まり握手する常陽銀行の寺門一義頭取(左)と足利ホールディングスの松下正直社長(2日午後5時25分、東京都中央区で)=稲垣政則撮影
    • 経営統合について説明する足利HDの松下社長(右)と常陽銀行の寺門頭取(2日午後4時28分、東京都中央区で)
      経営統合について説明する足利HDの松下社長(右)と常陽銀行の寺門頭取(2日午後4時28分、東京都中央区で)

    ◇ライバル行再編可能性も◇

     足利銀行と常陽銀行(水戸市)両地銀の経営統合が2日、正式に発表されたが、店舗の整理方針や本社の所在地なども決まっておらず、県内経済への影響は不透明だ。今後、統合による合理化や、経営基盤の強化などをどう進めていくのか、丁寧な説明が求められる。また、県内の更なる地銀再編につながる可能性もある。

     「人口減少とか経済縮小、低金利の中で、どういうふうに地域で生きたらいいのか。こんなことが背中を押した」。2日の記者会見で足銀を傘下に持つ足利ホールディングス(HD)の松下正直社長は、統合に至った経緯をそう説明した。

     足銀の県内での貸出金のシェアは4割を超え、トップの座を維持している。県内の国内銀行による貸出金はここ5年は増加しているものの、同行幹部は「5年ほど先からは下がっていく。その前に経営基盤を強化して先手を打つ意味もあった」とする。

     だが、統合によるシナジー(相乗効果)は不透明だ。常陽銀の寺門一義頭取は「確実に出る」と胸を張ったが、会見では、具体的な数字は出なかった。今後、関連会社の統廃合やノウハウの共有などによる効果を詰めるとみられる。東京商工リサーチ宇都宮支店は、「店舗を整理して、浮いた資金で相当な低利を出して、競争に臨んでくる可能性もある」と指摘する。

     足銀は埼玉県に16、群馬県に15、常陽銀は千葉県に6、東京都に5、それぞれ店舗を置いており、統合をきっかけに栃木、茨城両県以外への進出に本腰を入れる見通しだ。

     足銀と常陽銀の統合により、今後ライバル行の再編が進む可能性もある。

     足銀と常陽銀との統合発表を受けて、栃木銀行の菊池康雄頭取は、「経営統合や再編は、将来を見据えて経営体質を強化していく上で選択肢の一つ。当行としては、将来的に検討することを否定するものではありません」とコメントした。同行は昨年12月、茨城県第2位の筑波銀行(土浦市)と、群馬県の東和銀行(前橋市)と情報交換や合同で商談会などを実施する広域連携協定を結んでいる。

     福田知事は2日夜、県庁で足利HDの松下正直社長と会談し、統合のメリットについての県民への説明や、県内企業の経営・資金両面での積極的な支援など5項目を要請した。福田知事は、会談後、記者団に「経営統合については歓迎したい」と話した。

     

    ◇支店重複地域不安と歓迎◇

     県内には常陽銀の店舗が4市に計8店舗ある。足銀と常陽銀の統合で、両行の支店が重複する地域の整理が進むか注目される。

     真岡市には、足銀と常陽銀がそれぞれ3店舗を抱えている。東京商工リサーチ宇都宮支店によると、常陽銀と取引がある同市内の企業は約120社。製造業の社長は「これまで付き合いがあった支店がなくなれば痛手。残す方向で考えてほしい」と不安を漏らした。一方、別の製造業社長は「大きくなった方が経営基盤も安定する」と歓迎した。

     足銀も茨城県内に8店舗を持つが、足利HDの松下社長は記者会見で「店舗をどうのこうのするとは考えていない」と、現時点での支店の整理は否定した。ただ、「未来永劫えいごう、どうするかについては発言できない」とも付け加えた。

     

    ◇群銀「統合考えていない」◇

    ◇ATM業務など3行連携は継続◇

     同じ北関東の地銀、群馬銀行は、足銀や常陽銀と現金自動預け払い機(ATM)業務で提携し、現金の引き出しなどにかかる手数料を無料にした。食をテーマにした商談会の開催でも協力し合っている。

     群銀関係者は「将来的にどうなるかは分からないが、足利、常陽銀行のグループに入ることは今は考えにくい」と話している。

     ATMの提携や商談会についても、3行連携が顧客にとっても利便性が高いため継続する見通しだ。ただ、足銀が経営統合を機に攻勢をかけてくることも考えられ、群銀への影響は大きいとの声もある。

     群銀の斎藤一雄頭取は2日、「現時点では他行との経営統合について考えていない。お客さまへの価値ある提案活動の充実、収益力や経営基盤の強化を図ることにより、地域の発展に貢献していきたい」とのコメントを発表した。

     

    ◇「M&Aなど利便性高まる」 足利HD松下社長◇

     松下正直・足利HD社長と寺門一義・常陽銀行頭取の2日の記者会見での発言は次の通り。

     ――他の地銀にも統合を呼びかけるのか。

     寺門 地域金融機関から声をかけていただければ、検討させていただく。

     ――いつ頃から経営統合を検討していたのか。

     松下 春頃から交渉を開始した。人口減少や経済の縮小、続く低金利が統合を後押しした。

     ――本社所在地は。

     松下 東京は一つの選択肢だが、決まったわけではない。

     ――統合のメリットは。

     寺門 331店のネットワークが出現する。利便性と同時に情報を提供できる。

     松下 営業エリアがかぶる地域もあるが、共同化できる部分は共同化し、差別化できる部分は差別化していく。店舗をどうするかは現状で考えていない。

     ――群馬銀行との連携は。

     松下 別に排除することは全くないし、話もしていないので、どのような考えか分からない。

     ――既存取引先への融資の審査や締め付けが厳しくなるのではないか。

     寺門 融資方針を現時点で変える予定はない。

     松下 リスクについて軽量化する手段が相当程度発展しているので、審査に影響することはまずあり得ない。

     ――統合でのプラス効果は。

     松下 広域になればなるほど、ビジネスマッチングや事業承継にかかわる企業の合併・買収(M&A)など利便性が高まる。

     

    ◇強み共有相乗効果に期待◇

    ◇地銀再編全国で加速◇

     全国でも地銀の再編が加速している。統合する銀行間で強みがある分野のノウハウの共有や、重複店舗の整理などコスト削減によるシナジーに期待する。

     10月1日に鹿児島銀行(鹿児島県)と肥後銀行(熊本県)が統合して誕生した九州フィナンシャルグループは、2017年度までに60億円の統合効果が出ると見る。

     シナジーの柱は、両行が強みを持つ農業や観光分野などでのノウハウの共有だ。同じ農業県だが、鹿児島県は畜産、熊本県は畑作が盛んだ。お互いに相手が苦手な分野の融資手法を教え合うことで、両県にまたがる取引先の6次産業化の提案や広域の観光振興の手助けなど新たな取引先の掘り起こしができるとする。

     来年4月に統合予定の横浜銀行(神奈川県)と東日本銀行(東京都)も統合後の5年間で67億円の統合効果を見込んでいる。両行の重複店舗の統合を行い、余った資金を東京都などで20店舗拡大する投資に回す。都内の店舗のすみ分けを行い、効率的な展開が可能になるとしている。

    2015年11月03日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て