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    泥団子で ヘドロ退治

    微生物入り 流れに「えいっ」 川遊びで教える 生きる力

     「せーのっ!」

     渡良瀬川の支流の一つ、松田川の河川敷で7月中旬、幼稚園児から小学生まで15人の子供たちが、一斉に泥団子を川の中に投げ入れていた。泥団子はヘドロを浄化するEM菌(有用微生物)を練り込んだ土の塊だ。足利市葉鹿地区の環境学習クラブ「葉鹿エコクラブ」が、渡良瀬川やその支流をきれいにしようと、13年前から行っている。

     「泥団子を投げつけて川をきれいにするなんて、遊び心があるでしょ」。この日、投げ入れた泥団子は約500個。子供たちと一緒に手足を真っ黒にして泥団子を投げ続けた同クラブ代表の大塚久子さん(56)が誇らしげな表情でほほ笑んだ。

     ◇

     渡良瀬川の支流、月谷川が流れる足利市の山あいの町で生まれ育った。水源近くを流れる川の水は冷たく、浅瀬に素足を浸すと夏でもひんやりして気持ちよかった。それなのに、夏休みが近づくと、決まって周囲の大人たちは子供たちに注意した。

     「川は危ないから遊んではダメだよ」

     でも、急な増水などを心配する大人たちの言いつけを破り、大塚さんはよく川に遊びに行った。ザリガニやドジョウを捕まえたり、川岸の草むらで見たこともない草花を見つけたり、川にはいろいろな驚きや発見があった。

     高校卒業後、都内の大学に進学したが、24歳で足利に戻り、寺の住職を務める真司さん(56)と結婚。寺が運営する幼稚園で保育士として働く傍ら、4人の子供を育てていたある日、テレビゲームばかりに興じる子供を前に、自身の子供の頃の記憶がよみがえった。

     「この子たちに川遊びの本当の楽しさを教えてあげたい」

     ◇

     しかし、子供たちが川遊びをするには、渡良瀬川やその支流は汚れすぎていた。河川敷には空き缶やペットボトルが散乱し、工場や家庭排水の影響で川面にはヘドロが浮いていた。

     1999年、次男が当時通っていた足利市立葉鹿小で、川をボランティアで清掃するクラブが設立。2003年に地域全体の子供を巻き込んだ「葉鹿エコクラブ」に改編されると、代表になった。小学校の近くを流れる渡良瀬川の支流、彦谷川の河川敷を子供たちとリヤカーを押しながらゴミを拾って歩く。リヤカーの荷台はすぐに満杯になり、1日でトラック3台分のゴミを拾ったこともあった。

     大人たちの環境意識も高めようと、毎月、「親子環境学習会」を開催し、廃油でせっけんを作ったり、EM菌を使った水質浄化方法を教えたりした。親子で川に親しみを持ってもらおうと渡良瀬漁協と連携したサケの放流も始めた。

     やがて、家でばかり遊んでいた子供たちが、進んで川に遊びに行くようになった。「やっぱり子供は川が大好きなんだ」。改めて気付かされた。

     ◇

     「川は決して怖いばかりではない。むしろ川遊びを通じて、自然とどう向きあい、どう対応すべきか。本当の生きる力を身に着けることができる」と大塚さんは強調する。

     葉鹿エコクラブ草創期の子供たちはもう成人している。結婚し、家庭を築いた者もいる。そしていま、懸命に泥団子を投げつけている子供たちもやがて大人になっていく。「いずれ故郷を出て、別の土地で暮らすことになるかもしれない。でも、川は至る所にあり、そのそばには人々の暮らしがある」と大塚さん。

     エコクラブの活動が将来にわたって、川を慈しみ、大切にしないといけないと思う子供たちの心の源流であってほしい。それが大塚さんの願いだ。

    〈EM菌〉

     乳酸菌や酵母菌、光合成細菌など、自然界に存在する約80種類の微生物の集まりで、ヘドロや悪臭を減らす効果がある。1982年に日本の学者が開発した。泥団子にする時は、原液を薄めた「活性液」を作り、土に練り込む。水質改善に取り組む市民らの間で広まっている。

    〈ゆかりの地 歩く〉

    ◆豊かなアユ 再び

     釣り針にかかったアユが、水面を小石のように、ピッピッと跳ねて疾走していく。釣った男性が、身長の5倍近くある長いさおを掲げ、「見ろ、25センチはあるぞ」と披露すると、周囲の太公望が羨望のまなざしを注いだ。

    • 釣り上げたアユを手に笑顔の釣り人。「ほら、25センチはあるぞ」と自慢げに掲げる(足利市の渡良瀬川で)=工藤圭太撮影
      釣り上げたアユを手に笑顔の釣り人。「ほら、25センチはあるぞ」と自慢げに掲げる(足利市の渡良瀬川で)=工藤圭太撮影

     渡良瀬川ははるか昔から良形のアユが釣れることで知られる。奈良県の藤原宮跡で出土した木簡には、「下毛野国足利郡 波自可里 鮎大贄 一古参年十月廿二日」と記されている。律令時代(703年)、足利市葉鹿町周辺で釣れたアユが天皇に献上された記録で、木簡の複製が県立博物館に展示されている。

     「遠出して大きな川に出かけなくても、誰でもアユ釣りが楽しめる。渡良瀬川は、町中の川で釣りが楽しめる全国的にも珍しい川です」。渡良瀬漁協の小野寺孝之専務理事(70)は胸を張った。

     小野寺さんによると、渡良瀬川のアユの生育が早い原因は、川底の石に黒々と繁殖するコケにあるという。透明度が高く水温も高いため、光合成が活発に行われ、コケが密に繁茂する。豊富なコケはアユのエサとなる。「“アユを釣らずに石を釣れ”と言われるほど、釣り人は足元の石を手に取りながらアユが好む場所を探り当てます」と小野寺さん。

     かつて足尾銅山の鉱毒や工場排水の影響で、魚が姿を消したこともあった渡良瀬川。アユを始め、誰もが釣りを楽しむことができるのも、地域住民の清流を取り戻すための地道な努力が陰にあることを忘れてはならない。(工藤圭太)

    2013年08月29日 10時43分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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