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    Jクラブライセンス意義と課題

    • 大河氏
      大河氏

     Jリーグが導入したクラブライセンス制度の意義と課題について、リーグの責任者と専門家に意見を聞いた。

    大河正明氏 Jリーグクラブライセンスマネージャー

    本拠地盛り上げて

     この不況下で規制をかけたことに、反発しているクラブがあるのは確かだ。しかし、バブル崩壊後の1993年に誕生し、一度も経済成長期を経験しないまま社会に根付いてきたのがJリーグ。不況を乗り切る力は本来備わっている。日本の地方は、まだサッカーに満腹してもいないはずだ。

     では、Jリーグの市民クラブ、つまり大企業を親会社とせずに多数の小規模なスポンサーに支えられているクラブの現状は、どうか。水戸、群馬、岐阜、富山、北九州、愛媛あたりは、営業収益の成長が小さい。多くが、入場料収入1億円未満で停滞している。年間指定券を買う熱心なファンの拡大や新規スポンサー獲得など、身の丈を伸ばす努力は出来ているのか。富山を除いて、スタジアムもJ1規格(1万5000人以上)に満たないので、仮に戦績が良くてもJ1に上がれない「J2ライセンス」しか持っていない。

     甲府、山形、岡山などを見ると、予算管理や成長戦略に計画性がある。集客とスポンサーの数にこだわってきた甲府は、十数年連続で黒字。岡山は歴史の短いクラブだが、J1昇格への焦りがなく、堅実な中期計画に基づいて成長している。

     さて、栃木。経営も施設などの状況も、両グループの真ん中にいる。

     クラブ経営はリーダーの資質で左右される部分が大きい。中津正修社長は非常勤だが、統率力があり、地元経済界の名士でもあると聞く。中津社長の「今季はコスト管理などに踏み込んでかかわりたい」という言葉に期待している。営業収益は7~8億円だから、昇格争いが可能な規模だ。鳥栖は一昨年、7億円規模で昇格を決め、昨季はJ1の5位に入った。

     新陸上競技場の計画をサッカー専用競技場に変更することや、現在のスタジアムの改修を求めるような署名運動をサポーターが始めるぐらい、ホームタウンを盛り上げてほしい。固定の練習場も、用意して頂きたい。チームがどこで練習しているか分からないような状態では、地域で存在感のあるクラブにはなれない。

     新制度はクラブを「ふるいにかける」ものではない。参加資格を明確化することで、経営の成長と施設整備を促す狙いがある。ぜひ前向きな姿勢で、対応してほしい。

     おおかわ・まさあき クラブライセンス制度の責任者。リーグ理事、管理統括本部長も兼ねる。元三菱東京UFJ銀行。54歳。

    広瀬一郎氏 スポーツ総合研究所長

    「お手本」欧州に学べ

    • 広瀬氏
      広瀬氏

     前提として、クラブライセンス制度は、間違いなく必要。そのうえで、制度を運用するJリーグ側に、まず注文をつけたい。

     1992年、イングランドの国内リーグが再編されて、プレミアリーグが誕生した。プレミア(最高の)というぐらいだから、参加資格は当然、高く、厳しく設定された。間もなく、プレミアが何をしたか。国際的な監査法人のデロイト社と連携して、成功したクラブの経営術を全世界のクラブに向けて発信した。市場調査から物販、財務まで、プレミア流のノウハウを詳細に。

     「新しく規制をかけますからみなさん厳守を」で終わるのは、「お役人」のやり方ではないか。ハードルを高くした一方で、クリアする方法も提示したプレミアのやり方こそ、知識の蓄積と共有にたけた優秀な「ビジネスマン」の流儀だと、私は感じる。

     Jリーグも、サッカー界だけでなく民間企業や学識者からも知恵と知識を集め、各クラブと共有しなくてはいけない。3期連続赤字にならない方法、不景気でも広告料収入を伸ばせる秘策、自治体と連携して地域に貢献するコツ。講習会や勉強会を開いて伝えればいい。

     規制される側の地方クラブは「お手本」を見つけるのが第一だ。

     本場へ視察・研修に行くといい。栃木SCのようなJ1を目指す地方クラブならば、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドを見ても仕方がない。本拠地の人口やクラブの性質が似ていて、自分たちよりも先んじているところが適切。ドイツやフランスあたりできっと見つかる。収支のバランス、将来像の描き方、他競技や他業種との連動。自分たちに欠けているものが何か、わかるはずだ。

     Jリーグ内のよそのクラブをお手本にする姿勢には「この不況を、どうしのぐか」という、守備的な発想を感じる。そんなことでは、経営のアイデアは生まれない。攻め方を学んでほしい。

     クラブが(サッカー以外の)社会的な付加価値を持つことも大切だと言っておく。老人福祉や医療に貢献するとか、新設予定のスタジアムに太陽光発電のプラントを併設するとか、この時代に求められる方法は色々ある。価値のあるクラブには、不況でも広告料を出すスポンサーが現れる。

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      新体制お披露目イベントでは、新加入の三都主選手が子供を抱きかかえるサービスも。地域に根ざしたチームになれるか(1月19日)

     ひろせ・いちろう 日本のスポーツビジネス研究の第一人者で、多摩大教授も兼務。元Jリーグ経営諮問委員会委員。57歳。

    SC公式ファンクラブ入会無料に

     栃木SCの公式ファンクラブ「クラブトッキー」は今季、入会費を無料化する。会員証に、リーグ戦会場で自動改札機を通って入場できる「Jリーグ・ワンタッチパス」の機能を付けることもできる。SCの幹部は「クラブトッキーの拡充は、今季の営業戦略のカギを握る」と、ファンサービス向上の背景を説明する。

     クラブトッキーは昨年6月、中津正修社長の肝いりで発足した。会員は、入場券やSCグッズを10%割引で購入でき、メールでクラブ情報を受信することもできる。現在の会員数は2500人。

     今季は、入場者の低迷から脱却する戦略として、会員数の倍増を目標に掲げた。入会費の無料化と、従来は年間指定席の保有者にしか使えなかったワンタッチパスも使える特典を新設した。SC側は、パスによって観戦歴を把握でき、会員の観戦傾向などがつかめる。観客サービスの向上や新規ファン開拓にデータを役立てたい考えだ。

     SCの田蔵大地取締役は、「昨季までは、連絡先を把握し、情報をやりとりできるサポーターの数が少なかった」とし、メール配信も有効に活用する。

     SCは、1万人集客を目標に掲げる松本山雅との開幕戦(3月3日・県グリーンスタジアム)で、まずは会員獲得に力を入れる。

    未来の観戦日記

     本社の運動部から宇都宮支局に赴任し、サッカーをはじめとするスポーツを担当して3か月余り。今回の企画「岐路に立つSC」の取材を通じ、思い描いたSC観戦の光景をまずは紹介したい。

     <スタジアムの周りには毎試合、地元のジャズ・ミュージシャンが集まってくる。キックオフへの機運を高める生演奏。音色に耳を傾け、屋台で買った焼きたてのギョーザと地ビールに舌鼓を打つ。佐野ラーメンも平らげ、腹ごしらえは万全だ。

     くぐるゲートは名産の大谷石づくり。選手は「スカイベリー」のロゴ入りのユニホーム姿で、相手ゴールを攻める。応援歌はジャズの名曲「A列車で行こう」。対戦相手からは、「あの歌のリズムに乗せると、手がつけられない」と、警戒されている。

     勝利の美酒は「カクテル」。中心街のショットバーで試合のチケットの半券を見せ、割引き価格で乾杯する。土産はもちろん、イチゴだ>

     栃木のサッカーとジャズは、まだまだ全国的な知名度は低い。一緒に楽しめるゲームになれば、相乗効果も期待できる。

     チーム名も、ひと工夫があっていい。松本育夫・シニアアドバイザーは取材の中で、「変えてもいいかも」とまんざらでもなかった。「宇都宮ジャズ」はどうだろうか。所在地の文化や個性を鮮明に表せば、知名度アップ、地域密着型のチームづくりの足がかりになるに違いない。

    (込)

    2013年02月08日 01時53分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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