文字サイズ

    (2)江戸川の品種復活

    後関晩生小松菜

    • 後関晩生小松菜の成長具合を確かめる木村さん(11月27日、江戸川区で)
      後関晩生小松菜の成長具合を確かめる木村さん(11月27日、江戸川区で)

     冬の葉物野菜の代表格となる小松菜。中でも、「後関晩生(ごせきばんせい)小松菜」を育てる木村重佳(しげよし)さん(40)(江戸川区)は「同じように育てても小さかったり、大きかったりで、甘みや辛みも違う。まるで人間と同じように個性がある」と、その成長をいとおしむように見つめる。

     小松菜は江戸川区小松川が名前の由来。JA東京スマイル(葛飾区)によると、8代将軍・徳川吉宗がタカ狩りに出かけ、そこで出された汁に入っていた青菜を気に入り、「小松菜と呼ぶがよい」と言った逸話があるという。

     同区では今も農家340軒の多くが小松菜を栽培し、年間約2585トンを生産する。都内の自治体ではトップの生産量で都全体の3割を占めるが、これらは大量生産できるように栽培しやすく改良された品種だ。昔ながらの特性を残す後関晩生小松菜を育てるのは、区内では木村さんだけだという。

     後関晩生小松菜は1960年代、地元で種苗店を営む後関五吉氏が、従来品種から育てやすいものを選んで開発した。野菜ソムリエの上原恭子さん(60)によると、シャキッとしてみずみずしいのが特長で、「いため物でも歯応えがある。味も濃く深い」と話す。ただ、さらに育てやすく、束ねやすい今の小松菜に押され、約30年前に市場から姿を消した。

     同じ江戸東京野菜の亀戸ダイコンを育てていた木村さんは2007年頃、誰も作っていなかったとされる後関晩生小松菜に興味を持った。後関氏の親族から種を入手し、栽培に取りかかったが、一度途絶えていただけに育てる方法が分からず、手探りのスタートとなった。

     夏に種をまくと、細くて白っぽくなり、しかも虫に食われて食べられなかった。冬にまき、09年頃から無農薬でも収量が安定するようになったが、育ちにばらつきがある。ただ木村さんは「現在の種は誰が作っても同じで、支配されている感覚。今は自分が育てていると感じられる」と満足そうだ。

     後関晩生小松菜を使う居酒屋やレストランも出てきた。焼きそばや蒸し豚に使っている墨田区業平の居酒屋「押上よしかつ」店主の佐藤勝彦さん(45)は「これから旬を迎え、もっとおいしくなる」と強調する。

     木村さんが今年から体験農園や講習会を始めたところ、関心のある大学生らが訪ねてくるようになった。木村さんは「地元の魅力ある野菜を育てる仲間が育ってほしい」と期待している。

    (倉茂由美子)

    2013年12月13日 00時51分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て