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    (3)都心生まれ武蔵野育ち

    馬込三寸ニンジン

    • 宮寺さんが手にする馬込三寸ニンジン(小平市で)
      宮寺さんが手にする馬込三寸ニンジン(小平市で)

     「食べ比べてみて。味が違うから」。小平市の宮寺光政さん(64)に、引き抜いたばかりの馬込三寸ニンジンと普通のニンジンを手渡された。見た目はその名の通り、10センチちょっとの長さで、首の部分は太く、ずんぐりとしている。かみしめると、みずみずしさは普通のニンジンと同じだが、甘みは濃い。

     JAの職員だった宮寺さんは55歳で退職し、農業を始めた。だが、農地は3000平方メートルと狭く、大量生産の野菜では、ほかに太刀打ちできない。差別化を図るため、7年前から亀戸ダイコンなど伝統野菜の栽培を始め、馬込三寸ニンジンは3年前から育て始めた。

     収穫量が少なく、手間もかかるが、それでも、都内のフレンチレストランや日本料理店などの需要がある。収穫できるのは11月のわずか1か月間しかなく、相対の取引ばかりで市場にはほとんど出ない。

     大田区立郷土博物館などによると、馬込三寸ニンジンは明治から大正期にかけ都内や川崎市で育てられていた丈の短い西洋ニンジン同士をかけあわせて、大田区の馬込地区で誕生した。種苗登録されたのは1950年と遅かったものの、周囲で多くの農家が作るようになった。しかし、急激な宅地化のほか、種を採りにくいという弱点があり、わずか10年余りで育てる農家はほとんどなくなった。

     栽培が再開されたのは7年ほど前。同地区の波田野年成さん(84)が、離農する農家が保存していた種を譲り受けた。波田野さんの畑は既存のニンジンが育ちにくかったが、馬込三寸ニンジンはしっかり成長した。それを聞いた宮寺さんや小金井市の井上誠一さん(50)らが種を手に入れ、東京西部に栽培地が広がった。井上さんは「都心発祥の野菜を、今は武蔵野で育てて都心に送っている」と笑うが、「伝統野菜を守ろうという気持ちはみんな同じだ」と強調する。

     馬込では、「御菓子司わたなべ」が昨年から、波田野さんの馬込三寸ニンジンを材料にしたまんじゅうを販売している。すり下ろして白あんに混ぜ込んでおり、店主の渡辺和彦さん(72)は自ら波田野さんの畑に出向き、ニンジンを引き抜いてくる。

     収穫期の今しか作れないまんじゅうの売れ行きは好調で、渡辺さんは「地元野菜が埋もれてしまうのはもったいない。地域活性化の手伝いをしたい」と意気込んでいる。

    (安井良典)

    2013年12月14日 00時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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