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    (5)ソースにハムにピリッ

    内藤トウガラシ

    • 赤が映える内藤トウガラシ。初出荷を楽しみにする成田さん(右)(5日、小平市で)
      赤が映える内藤トウガラシ。初出荷を楽しみにする成田さん(右)(5日、小平市で)

     真っ白なアイスの上に鮮やかな赤のイチゴソースがかかっている。一口食べてしばらくたつと、舌と喉がピリッとした。刺激に一瞬驚いたが、意外に合うので、つい笑顔になった。「食べるとみんな笑ってくれる」。新宿御苑内のレストラン総料理長、伊藤秀雄さん(53)もほほ笑んだ。

     刺激の主は、ソースの中に粉にして入れた「内藤トウガラシ」。新宿御苑のある新宿区内藤町が発祥だ。伊藤さんは「御苑の歴史と文化を食から知ってほしい」とメニューに取り入れた。

     名前の由来となった内藤町は江戸時代、信州高遠(たかとお)藩内藤氏の下屋敷だった。邸内で栽培されていたトウガラシが江戸市中に出回り、薬味として庶民に親しまれた。「八房(やつぶさ)」と呼ばれる種類で、房のようにまとまり、上向きに実がなるのが特徴だ。

     七味唐辛子の売り口上にも、「江戸は内藤新宿八つ房の焼き唐辛子」と登場し、秋からの収穫シーズンは、内藤町から西が赤一色に染まったともいわれる。ただ、「鷹の爪」ほど辛くなかったことから、昭和に入る頃に人気は衰えた。

     復活の仕掛け人はNPO法人「おいしい水大使館」(台東区)の成田重行さん(71)だ。地場野菜を食べる活動をしていた2008年に、内藤トウガラシの存在を知った。練馬ダイコンなどに比べて知られておらず、様々な料理に合う。地元で引き継がれている種はなかったが、文献から八房と突き止め、茨城県つくば市の農業生物資源研究所で原種を手に入れた。

     「楽しみながら広める」のが成田さんのスタイルで、増やした種や苗を地元で配ったり、料理教室を開いたりした。新宿御苑の伊藤さんに声をかけ、ゆるキャラや歌も作った。内藤町の隣、同区四谷のビル経営田中健士さん(51)は、都会の真ん中が発祥というユニークさから「共通の話題として住民同士が盛り上がる絶好の道具」と話し、売り口上や七味の調合を露天商から習い、中学校などで紹介している。

     まろやかな辛みも、嗜好(しこう)の変化から、逆に強みに変わった。食品加工メーカーから商品化の話が持ち込まれ、今年に入り練馬区と小平市で本格生産が始まり、今月までに約70キロ収穫した。

     年明けには内藤トウガラシブランドのハムとソーセージがお目見えする予定だ。「今年は大きな一歩。真っ赤なトウガラシ畑が広がる光景、復活させたいね」。成田さんの夢は膨らむ。(越村格)

    (おわり)

    2013年12月19日 01時08分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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