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    女性に安らぎ発信…東京30th 平成時代(4)

    • 「オズの魔法使い」から着想を得て名付けられたオズマガジン。2007年3月の「ひとり旅」の企画が転機になった(スターツ出版提供)
      「オズの魔法使い」から着想を得て名付けられたオズマガジン。2007年3月の「ひとり旅」の企画が転機になった(スターツ出版提供)
    • 行きつけの都内のカフェでオズマガジンを読む忠地さん。「いつ開いても情報が古くならない」ところが気に入っている(昨年12月21日)
      行きつけの都内のカフェでオズマガジンを読む忠地さん。「いつ開いても情報が古くならない」ところが気に入っている(昨年12月21日)
    • 2008年からオズマガジンの編集長を務めてきた古川さん(中央区で)
      2008年からオズマガジンの編集長を務めてきた古川さん(中央区で)

    情報誌バブル期から変化

     早起きした朝、入れたてのカフェオレを飲みながら、部屋に太陽の光が満ちる瞬間を眺めているだけで、幸せ――。

     フォトグラファー兼ライターの忠地七緒さん(30)(江東区)は、2014年、都内の出版社を退職し、都外の市役所に転職した。勤務地が遠くなり、1時間早く起きることに。

     ふらりと立ち寄った書店で、「楽しい朝時間」を特集した雑誌と出会った。

     スターツ出版が発行する「オズマガジン」。おいしい朝ご飯を食べられる都内の飲食店、仕事を頑張りたい朝や、憂鬱ゆううつな朝に触れたい本や映画、音楽……。「そう、今読みたかったのはこういう雑誌」

     以来、忠地さんは同誌をほぼ毎月購入している。

    ◆一人旅提案

     江戸川区・葛西エリアの情報を発信するフリーペーパーの発行から始まったスターツ出版は、バブル期に隔月刊のレジャー情報誌「オズマガジン」を創刊。同誌は1989年(平成元年)、一般の書店に並ぶ月刊誌となった。

     当時取り上げたテーマは、「もっと夜遊び東京・横浜」(91年7月号)といったものから、「東京食べ放題カタログ」(92年10月号)などのお得情報まで。首都圏のOL向けにトレンド情報を発信した。

     でも、90年代後半から、インターネットが普及し、情報はタダの時代を迎える。

     「ネットで無料の情報が得られる今、お金を払って買ってもらえるのか」。98年に入社し、2008年から同誌編集長を務めてきた古川誠さん(42)は感じていた。

     情報だけでは限界がある。ならば、情報の向こう側にある「物語」も併せて提供してみたらどうか。

     たとえば、300円のお菓子を、単に「おいしいですよ」と紹介するのではなく、店主の人柄や材料のこだわりをページを割いて丁寧に伝える。読者が気負いなく読めるように、あえて写真の色味を抑え、やさしい世界観を演出する。

     さらに、ある女性編集者の一言が、同誌の新たな方向性のヒントとなった。

     「一回り成長した気持ちになりたいから、一人で旅をしてみたい」

     海が見える駅のホームに女性が一人でたたずむ写真を表紙に使った「女をあげるひとり旅」特集(07年3月12日号)。女性の一人旅なんてさみしそう。そんな空気をさらりと払いのけ、「一人で旅をしてみませんか」と提案した。

     発売前、社内では「表紙の女性の表情が暗い」「こんなの売れない」という声もあった。だが、ふたを開けてみれば、いつもの2割増で売れた。

     「自分だけの時間を大切にする」という独特の視点は、その後も読者に支持された。他の情報誌が次々と休刊する中、オズマガジンの発行部数は約7万6700部。インターネット版の「オズモール」は、会員数280万人を誇る巨大サイトとなった。

    ◆読者から手紙

     3年ほど前から、同誌の編集部宛てには愛読者から手紙が届くようになった。多い月で10通以上も。古川さんは、その一通一通に感謝の思いを込めた手紙を返している。

     情報が氾濫し、何を選んでいいか分からないという時代に、普通の暮らしの中での幸福感、身近な町のいい所を紹介する。「今思うと、せわしない東京だからこそ受け入れられた発想だったかもしれないですね」と古川さんは言う。

     忠地さんは16年に市役所を辞め、フォトグラファーとして独立した。

     「一人でいるのは悪いことじゃない。自分は何が好きで何ができるのか。いろんなことを考える時に、オズは寄り添ってくれた気がした」

     忠地さんも、古川さんに手紙を書いた一人だ。誌面の感想をつづり、旅先の風景を撮った写真を送った。古川さんからは、愛読のお礼と、同じ場所に旅した時の感想などが書かれた返事が届いた。

     「読み返すたびに、元気が出ます」。忠地さんは、古川さんからの返事をお守りのように手帳に挟んで、いつも持ち歩いている。

    2018年01月07日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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