文字サイズ

    <観光の目玉 和歌山市検討>次世代交通網 三つの壁

     次世代交通網として、和歌山市がLRT(次世代型路面電車)やBRT(バス高速輸送システム)を導入する検討を進めている。市は観光振興につながる市内中心部のシンボルとして導入したい考えだが、既存の交通事業者との調整や需要確保など、課題が山積している。(久米浩之)

     LRTは欧米で普及し、低床で乗り降りしやすく、デザイン性にも優れている。2006年に導入した富山市の富山ライトレールは、前身のJR富山港線の運行時に比べ1日当たり利用者が平日2・1倍、休日3・4倍になった。BRTは岐阜市などが導入し、連節バスと専用道路の組み合わせなどで従来のバスより輸送力を高めている。

     市は、少子高齢化を見据え、交通網の整備方針をまとめた「地域公共交通網形成計画」を2018年度中に策定する考えで、同計画ではLRT、BRTにも触れる見通しだ。市は策定に向け、JR西日本和歌山支社、南海電鉄、県バス協会、県タクシー協会など交通関係者でつくる協議会を設け、課題を整理している。

     8月25日に市内で開かれた協議会の会合には、約20人が出席。尾花正啓市長は「LRTやBRTは観光の目玉になり、新たな需要の掘り起こしができる」と述べ、導入に意欲を見せた。

     一方で、県バス協会、県警などの委員からは「今の公共交通網の維持が先で、次世代交通網を考えるのは議論の飛躍」「仮に導入するなら、新たな交通ルールの周知が必要」などと慎重な意見が相次いだ。尾花市長自身も導入には「三つの課題がある」とし、▽交通事業者との調整▽自動車の交通網に与える影響▽人口減が進む中での採算面の厳しさ――を挙げている。

     市が16年4月にまとめたLRT導入の試算では、JR和歌山駅から市役所、和歌山城前を通り、南海和歌山市駅を結ぶルート(2・7キロ)が最も有望。だが、導入に67億円、運行経費には年2億円かかり、市が見込む年167万人の利用では赤字の見通しだ。BRTも導入や維持に億単位の費用が必要とみられる。

     さらに、「和歌山バス」(和歌山市)の路線バスやタクシーが頻繁に通るルートとの重なりが見込まれ、「『ドル箱路線が奪われるのでは』との懸念もあるようだ」(市幹部)という。

     需要確保も課題だ。16年度の市内の路線バス利用者は約85万人で、年300万人超が利用したピーク時の1980年代から3割以下に激減。市の人口もピーク時から1割減の約36万人に減っている。

     課題は山積しているが、尾花市長は「次世代交通には夢がある」と強調。交付金を活用し、自動運転車両の導入などで運行経費を削減するなどして、実現を目指す考えだ。

    2017年09月08日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て