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    進む感染拡大、韓国経済に打撃…MERSまとめ

     韓国で中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染拡大が問題となっている。拡大にいたった経緯や経済に与える影響についてまとめた。

    中東呼吸器症候群(MERS)

    • MERSコロナウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所ウイルス第3部提供)
      MERSコロナウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所ウイルス第3部提供)

     Middle East Respiratory Syndromeの略。2012年に中東で確認された新型感染症。中国を中心に02~03年に感染者・死亡者が出た新型肺炎と同じ仲間のコロナウイルスが原因で起こる。潜伏期間は2日~2週間とされ、38度以上の高熱、せきなどの症状が表れる。世界保健機関(WHO)によると、6月9日までに、感染者は中東のほか、韓国、米国、仏、独、英など計25か国で1218人確認されており、うち少なくとも449人が死亡。現時点で日本人の感染報告はない。

    中東渡航の男性から二次感染

     韓国でMERSへの感染者が確認されたのは5月20日だった。韓国保健福祉省によると、中東のバーレーンなどに渡航した男性(68)が感染。男性の妻や病院の看護師らに二次感染した。

     6月2日には、感染した入院患者2人が死亡し、初の死者が出た。2人は、中東から帰国後に発症した男性と一時期、同じ病棟にいたことから、二次感染した疑いが強いという。感染者は25人に達し、最初の感染者と接触していない「三次感染」も確認された。翌3日には、感染者と接触した疑いのある家族や医療従事者1300人以上に隔離措置を取った。

    情報足りず感染広がる…管理の甘さ浮き彫りに

     その後も、感染の拡大は止まらず、6月8日には感染者は計87人、死者は計6人になった。特に1日約8000人の外来患者が利用する韓国5大病院の一つ、サムスンソウル病院(ソウル市)の感染者が倍増した。医療機関などは、感染者が出た病院名の公開を求めてきたが、政府は「混乱を招く」と拒否。このため、サムスンソウル病院は、平沢聖母病院で感染の疑いがあった男性を知らずに受け入れ、多くの三次感染者を出した。「(感染者が出た)病院のリストがあれば、新たな感染はなかった」。ある医療関係者はそう悔やむ。14日には、病院の部分閉鎖が決まった。感染者が発症前に中国へ出張したり、自宅隔離対象者がゴルフに出かけたりするなど、治療を受ける側の危機意識の低さも露呈した。

     18日現在、感染者は165人、死者23人に上っている。

    在韓日本人も隔離対象に

     韓国政府当局者は15日、感染者と接触した可能性があるとして、韓国在住の日本人が自宅での隔離対象者リストに入っていると外国記者団に明らかにした。
     関係者によると、対象者は母子2人で症状はなく、先週、日本に帰国した。韓国政府は隔離対象者を出国禁止措置にしているが、当局の対応が間に合わなかったとみられる。帰国後、日本の保健当局が健康状態などを観察。これまでのところ発熱などの症状はなく、感染の恐れは低いと思われるという。

    「緊急事態宣言」は見送られたが

     世界保健機関(WHO)は17日、韓国で感染が急拡大した中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスについて、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」には当たらないとの見解を発表した。
     一方、韓国で新たな感染者が出る状況は今後5~6週間は続くとし、各国に対しても警戒を保ち、患者発生に備えることを求めた。ただ、渡航制限や空港や港での全員検査は不要との立場を改めて示した。

    観光客激減、企業活動に影響も

    観光客は敏感に反応…1万人キャンセル

     韓国観光公社は6月4日、MERSの影響で、韓国旅行を予定していた外国人1万1800人が予約を取り消したと明らかにした。9割は中国人などだが、日本人も3日だけで120人のキャンセルが確認されたという。韓国の旅行大手関係者は、「中国人観光客には、かつて中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の記憶が根強いのではないか」と話した。

     5日午後、国内外の観光客に人気の高いソウルの繁華街・明洞は、閑散としていた。買い物客にはマスク姿が目立つ。化粧品店の女性店員は「お客さんは、いつもの4分の1程度」と力なく笑った。

     ソウル南東部にある遊園地「ロッテワールド」の入場客数は、前週比で30~40%減少した。韓国企画財政省が様々な施設の6月第1週の入場者数を調べたところ、映画館は前年同期比54.9%減、プロ野球が同38.7%減った。飛行機の搭乗率も落ち込んでいるという。MERS流行の影響は、人混みを伴うレジャー産業などで特に大きい。

    出張・ツアー自粛

     JTBには、韓国ツアーの予約客から「このまま実施するのか」などの問い合わせが相次いでおり、旅行をキャンセルする人や、延期する人も出始めているという。韓国旅行時にはマスクを着用し、人混みを避けるよう呼びかけている。

     韓国に拠点がある企業は、従業員への感染予防に注力し始めた。IHIは韓国に自動車部品の工場などがある。現地ではマスクが不足しているため、9日、韓国に出張する際には、マスクを持参するよう指示した。みずほフィナンシャルグループは現地の支店に、マスクや消毒薬などの衛生用品を送った。ソニーは、日本などで働く社員に対し、ソウルと周辺都市への出張を自粛するよう呼びかけ、韓国で働く社員には韓国外への渡航を自粛するよう求めた。

     日本貿易振興機構によると、両国間の貿易に影響は出ていないとしている。SMBC日興証券の末沢豪謙氏は、「現時点で両国経済への影響は限定的だが、事態が悪化すれば、風評リスクが高まり、影響が広がりかねない」と分析している。

     

    【関連リンク】

     ヨミドクター ニュース特集「中東呼吸器症候群(MERS)」

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    2015年06月18日 12時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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