文字サイズ
    まとめ読み「NEWS通」

    ノーベル賞の大村智氏ってどんな人?…苦労人、美術愛好家の一面も

    • ノーベル生理学・医学賞が決まった大村智さん(2007年4月撮影)
      ノーベル生理学・医学賞が決まった大村智さん(2007年4月撮影)

     スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2015年のノーベル生理学・医学賞を、大村智・北里大学特別栄誉教授(80)ら3人に授与すると発表した。

     大村氏の授賞理由は「寄生虫病に対する新しい治療法の発見」。

     日本のノーベル賞受賞者は23人目で、青色発光ダイオード(LED)の開発で昨年の物理学賞を受賞した赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏に続く2年連続の受賞。(→記事へ

    「山梨の誇り」称賛の声…高校時代はスキーで国体にも

     大村さんと実家が近所で、中学高校時代は一緒に通学する仲だったという甲府市の山梨科学アカデミー常任理事の功刀能文くぬぎよしふみさん(79)は5日夜、受賞の一報をうけ、「受賞は私たちの悲願でもあり、やっと受賞してくれて本当にうれしい」と笑顔をみせた。

     大村さんは負けず嫌いで、勉強だけではなく、高校時代は国体にスキー選手として出場するほどのスポーツマンで、「勉強ばかりの秀才タイプではなかった」と振り返る。

     大村さんは山梨大卒業後、都内の夜間高校で教べんを取っていたが、その際、「手に油をつけて、学ぶ生徒たちの姿を見て、『もう一度、研究の道に進もう』と決意したと聞いた」という。

     自身の研究の傍ら、地元山梨の後進の育成にも励み、同アカデミーを大村さんが中心となって設立し、子供たちの理科離れを食い止めようと、小中学校でセミナーを開催してきた。功刀さんは「ふるさとに対する強い思いがあった。ノーベル賞にふさわしい人物が受賞してくれた」と話した。(→記事へ

    毎年数千万人を救う抗生物質、新発想で合成

     細菌やカビの一部は、別の微生物の増殖を抑える抗生物質を作る。75年、静岡県内の土から新種の放線菌(カビに似た菌糸を伸ばす細菌)と抗生物質を発見。この物質からフィラリアや糞線虫(ふんせんちゅう)など寄生虫病の特効薬イベルメクチンが開発され、メルク社の大ヒット商品となった。

     70年代後半、研究者の間に「主な抗生物質は調べ尽くした」という、あきらめに近い空気が流れ始めた。ペニシリンの発見から、半世紀が経過していた。

     本当にそうなのか。微生物の力を引き出す方法を考え、「細菌の共同作業」というアイデアを思いついた。ある菌の物質合成を途中で邪魔し、別の菌が合成した、少しだけ構造の違う「材料」を培養液に加える。すると細菌は、二つの物質の特徴を併せ持つ新物質を作ったのだ。

     さらに新しい発想が浮かんだ。「二つの菌に作らせるより、遺伝子を一つの菌に移した方が効率的ではないか」(2007年04月16日)(→記事へ

    苦労人が切り開いた独自の領域

     「微生物は無駄なものを作らない」

     大学卒業後、都内の夜間高校で教べんを執りながら大学院に通って、化学を学んだ苦労人。助手の職を得た山梨大でワイン醸造の研究に取り組み、微生物の魅力に引き込まれた。北里研究所では、化学と微生物学の両方の視点を生かして、独自の領域を切り開いてきた。(2011年09月07日)(→記事へ

    財布には常に小袋…「新しいもの見つける心構え」

     若い頃に化学と微生物学の両方を学んだことが、研究生活の礎となった。両分野の分析手法を融合して独自の研究スタイルを築き、170種類を超える物質を発見、命名した。その物質名は、英字表記の頭文字がAからZまで全てのアルファベットに及び、同僚から「化合物の辞書を作り出した」とも評される。

     今も財布には、土壌から微生物を採るための小袋を常備する。「絶えず新しいものを見つけるぞという心構えが大切。実際にはコンクリートだらけで土なんかない」と笑う。そうした心構えを次世代に伝え続けるのが、これからの大事な役目だと考えている。(2012年10月30日)(→記事へ

     写真特集はこちらへ。

    2015年10月06日 11時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP