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    まとめ読み「NEWS通」

    イギリス総選挙~保守党が過半数割れ

     イギリスで8日(日本時間9日)行われた下院総選挙は、開票の結果、与党・保守党が第一党を維持したものの、議席数は過半数を割り込む結果となりました。今後、メイ首相の責任問題が問われるほか、欧州連合(EU)との離脱交渉にも大きな影響が出ることが予想されます。総選挙をめぐる最新のニュースと、イギリスのEU離脱の経緯をまとめました。(肩書や年齢などは当時)

    • 9日、ロンドンの首相官邸で演説するメイ英首相(AP)
      9日、ロンドンの首相官邸で演説するメイ英首相(AP)

    与党・保守党が過半数割れ

    閣僚人事に着手…主要5閣僚は続投

     英国のメイ首相は9日、下院(定数650)総選挙での事実上の敗北後も首相を続けることが決まったことを受け、閣僚人事に着手した。英PA通信などによると、ハモンド財務相やジョンソン外相ら主要閣僚5人については続投させる。

     留任が決まった主要閣僚はこのほか、欧州連合(EU)との離脱交渉を担当するデービスEU離脱相、ラッド内相、ファロン国防相。残る閣僚については、10日にも決まるとみられる。

     ただ一つ開票作業が続いていたロンドンの選挙区では9日夜(日本時間10日未明)、数え直しの末、約20票差で労働党候補の当選が決まった。この結果、各党の議席数は最終的に保守党318、労働党262、スコットランド民族党(SNP)35、自由民主党12、民主統一党(DUP)10――などとなった。

    EU離脱交渉に影響必至(6月10日)

     8日投開票の英下院(定数650)総選挙で、メイ首相率いる与党・保守党は解散前の議席を維持できず、過半数(326議席)を割り込んだ。第1党の座は守ったが、事実上の敗北を喫した。欧州連合(EU)からの離脱交渉に影響が出るのは必至だ。

     メイ氏は9日午後(日本時間9日夜)、バッキンガム宮殿を訪れ、エリザベス女王と面会した。メイ氏は女王との面会後、首相官邸前で、「私が今から政府を発足させる」と述べ、首相続投を表明した。

     メイ氏は、「最大議席を得た保守党に政権を担う正当性がある」と強調した。EU離脱を巡る立場が近い北アイルランドの民主統一党(DUP)が10議席を獲得しており、同党の協力を受ける考えも示した。

     英BBC放送によると、9日午後4時(日本時間10日午前0時)現在、649議席が確定し、開票が続く議席は残り1となっている。保守党は解散前の330議席より12議席少ない318議席にとどまっている。労働党は261議席で、32議席上積みした。自由民主党が3議席増の12議席を獲得した一方、スコットランド民族党(SNP)は35議席と伸び悩み、19議席減らした。

     英下院で、どの政党も過半数に達しない「ハング・パーラメント(中ぶらりん議会)」となるのは2010年以来となる。

    【イギリス総選挙に関する深読みチャンネル】
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    突然の解散、相次ぐテロ~イギリス情勢まとめ

    車が暴走・刃物で襲撃…テロで7人死亡(6月5日)

    • ロンドン中心部でロンドン橋に通じる道を封鎖して警備する武装警察官=角谷志保美撮影
      ロンドン中心部でロンドン橋に通じる道を封鎖して警備する武装警察官=角谷志保美撮影

     ロンドン中心部のテムズ川にかかるロンドン橋で3日午後10時(日本時間4日午前6時)頃、白いライトバンが歩道に乗り上げ、歩行者を次々とはねた。

     乗っていた男3人は橋の南岸で車を降り、近くの食品市場「バラ・マーケット」で通行人らをナイフで襲撃した。ロンドン警視庁などによると、7人が死亡し、48人が負傷した。男3人は警察に射殺された。英国のメイ首相は4日、テロ事件との認識を示した。英国でのテロは今年3件目。

    保守党が急失速(6月2日)

     英下院(定数650)の総選挙が8日に迫るなか、メイ首相率いる与党・保守党の支持率が低下している。前倒し総選挙は、欧州連合(EU)との離脱交渉本格化に向けて、選挙で圧勝して政権基盤を強化することを狙ったものだったが、圧勝どころか保守党の過半数割れの可能性さえ取りざたされている。

     「EU離脱を成功させれば、より強く、公平で、より繁栄した英国を築くことができる」。メイ氏は1日午後、英中部で演説し、EU離脱を成功させることができるのは、自身が率いる保守党をおいて他にないと、支持を訴えた。

     メイ氏は4月18日に突然、2020年に予定されていた総選挙を前倒しして実施することを表明した。その際、「EU離脱交渉を成功させるために、英国には強く、安定した指導者が必要だ」と訴えた。EU単一市場から離脱するハードブレグジット(強硬離脱)路線に対する国民の信を問い、圧倒的な支持を得ることで、党内外の反対勢力を抑え、離脱交渉で思い切った決断がしやすくなるとの計算があった。

     保守党は当時、支持率が40%台後半で、20%台に低迷するコービン党首が率いる労働党を大きく引き離していた。世論調査では、保守党が100議席以上を上積みして圧勝するとの予測もあった。

     しかし、高い支持率を背景に、5月18日に発表したマニフェストにEU離脱以外にも大胆な改革案を盛り込んだことがあだになった。一定の資産がある高齢者に介護費用の自己負担を求めたり、冬季の暖房費補助の対象から除外したりする社会保障改革が、保守党の支持基盤である富裕層や高齢者から強い反発を呼んだ。

     一方、労働党はマニフェストで、鉄道の再公営化による市民の交通費負担の軽減や大学の無償化など、大衆受けする政策を多数打ち出した。保守党は「財政が破綻する」「左翼的で実現不可能な政策だ」と批判しているが、労働党は若者などに支持を広げている。世論調査会社ユーガブが5月31日に発表した調査結果では、労働党の支持率は39%で、保守党の42%に3ポイント差まで迫った。

    コンサート会場で爆発、22人死亡(5月24日)

    • 英中部マンチェスター中心部にある、容疑者が事件当日に使用したとされるアパートの入り口(24日、角谷志保美撮影)
      英中部マンチェスター中心部にある、容疑者が事件当日に使用したとされるアパートの入り口(24日、角谷志保美撮影)

     英中部マンチェスターのコンサート会場で22日午後10時35分(日本時間23日午前6時35分)頃、大きな爆発があり、警察発表によると、8歳の女児1人を含む22人が死亡、59人が負傷した。実行犯は男1人で、自爆テロとみて、背後関係を詳しく捜査している。イスラム過激派組織「イスラム国」は23日、ネットを通じて「恥知らずのコンサート会場で爆弾を爆破させた」とする犯行声明を出した。

     爆発が起きたのは英国最大の屋内競技施設「マンチェスター・アリーナ」。米国の人気歌手アリアナ・グランデさん(23)のコンサートの終了直後で、被害者の多くは観客の10~20代の若者たちだった。英国では2005年7月に52人が死亡したロンドン同時テロ以来、最悪のテロ事件となり大きな衝撃が広がっている。

     事件を受け、与党・保守党と最大野党・労働党は選挙戦を一時中断することで合意した。他の野党も相次いでマニフェストの発表延期などを表明した。

    EUが離脱交渉戦略 「手切れ金」「在留資格」争点(5月23日)

     EUは22日、閣僚級の総務相理事会を開き、英国の離脱交渉について、詳細な戦略を定めた「交渉指令」を採択した。6月19日の週に英国との第1回交渉が行われる見通しだ。指令では、「手切れ金」と称されるEU予算の分担金支払いと、英国に居住するEU出身者(EU市民)の在留・就労資格の保障問題を当面の2大争点に位置付けた。

     これにより、EU側の交渉準備は完了した。自由貿易協定(FTA)の交渉は、2大争点を決着させた後に取り組む方針だ。EUのミシェル・バルニエ首席交渉官は22日の記者会見で、「これからの交渉で、我々は難題に直面するだろう」との見通しを語った。6月8日の英総選挙を踏まえて交渉を本格化させ、英国は2019年3月までに正式に離脱する。

     EU予算は14年から20年まで7年間の大枠を決めており、英国も負担する予定となっていた。EUの交渉指令は、英国には「複数年度にわたるEU予算」への支払い義務があると明記した。英紙フィナンシャル・タイムズによると、英国はいったん1000億ユーロ(約12兆5000億円)近くを支払うが、払戻金などを差し引き、最大で750億ユーロが実質的な要求額になるという。EU筋は本紙に「加盟国の態度が硬化している。要求額は当初の試算(600億ユーロ)よりも確実に増える」と明かした。

    議会が解散 保守党に勢い(5月3日)

     英議会下院(定数650)は3日、解散し、6月8日の総選挙に向け、選挙戦が正式にスタートした。英国のEU離脱を巡る、EUとの交渉方針が最大の争点となる。最新の世論調査によると、メイ首相率いる与党・保守党が優勢で、議席をどの程度、上積みできるかが注目される。

     メイ氏は3日午後、エリザベス女王に解散を報告した後に演説し、「皆さんは今、未来のための選択に直面している」と訴えた。選挙開始の公示日に立候補を受理する日本と異なり、11日に候補者を確定する。EUとの交渉でメイ氏は、EUからの移民流入を規制し、EU単一市場から完全に離脱するハードブレグジット(強硬離脱)を掲げる。昨年6月の国民投票で残留を求めた最大野党・労働党は、離脱を認める方針に転じたが、経済への悪影響が小さいソフトブレグジット(穏健離脱)を目指す考えを表明している。

     世論調査会社ユーガブの最新調査(4月27~28日実施)によると、政党支持率は保守党44%、労働党31%、離脱反対派の自由民主党11%。英メディアは保守党が解散時の330議席から大幅に議席を上積みし、安定政権を実現すると見込む。

    英総選挙「EU離脱の信問う」…メイ首相意向(4月18日)

     英国のメイ首相(保守党党首)は18日、閣議後に緊急演説し、2020年5月に予定されていた下院(定数650)の総選挙を早め、6月8日に行う意向を表明した。今も世論が分かれる欧州連合(EU)離脱のあり方を国民に問い、今後約2年間続く欧州との離脱交渉に向け、政権基盤を盤石にしたいとの狙いがある。英国民は、EU離脱をめぐり、再び選択を迫られることになる。

     メイ氏は3月29日、EUに離脱を正式通知した。今後は厳しい交渉が予想される。難航すれば、離脱のあり方をめぐって反発する最大野党・労働党などが政権を揺さぶり、英国が強い立場で交渉できなくなる懸念が指摘されている。メイ氏は18日の演説で、「議会の分断はEU離脱の成功を脅かす。離脱を実行するには、強く、安定した指導力を確保する必要がある」と述べ、離脱交渉が本格化する前に選挙を実施する意義を強調した。

    英国のEU離脱を巡る日程

    2016年 6/23 国民投票を実施
    離脱支持が過半数を獲得
    6/24 キャメロン首相(当時)が
    辞任する意向を表明
    7/13 メイ氏が首相に就任
    2017年 1/17 メイ首相は移民規制を優先し、
    EU単一市場から撤退する
    「強硬離脱」の意向を表明
    3/16 エリザベス女王の承認で
    離脱通知法成立
    3/29 メイ首相がEUに離脱を通知
    4/18 メイ首相が総選挙を実施する意向を表明
    2019年 3月末まで 英国がEUから正式に離脱

    国民投票後の経緯

    メイ英新首相が就任 外相に離脱派ジョンソン氏(16年7月14日)

    • 英国経済を支える首都ロンドンの金融街「シティー」から、大量の人材が流出する可能性もある
      英国経済を支える首都ロンドンの金融街「シティー」から、大量の人材が流出する可能性もある

     EU離脱を決めた英国で13日夕(日本時間14日未明)、キャメロン首相が辞任し、与党・保守党の党首となったテリーザ・メイ氏(59)が、ロンドンのバッキンガム宮殿でエリザベス女王から首相に任命された。メイ氏は、英国でマーガレット・サッチャー元首相以来26年ぶり2人目の女性首相となった。今後、EU離脱交渉や経済の安定など、難題に取り組む。首相に就任したメイ氏は、夫のフィリップ氏が後ろに控える中、首相官邸前で数分間演説し、「国民投票の後、我々は大きな変化に直面しているが、英国は試練に立ち向かう」と国民に訴えかけた。

     メイ氏は早速、組閣に着手し、離脱派の中心人物で保守党の党首選出馬を断念したボリス・ジョンソン前ロンドン市長(52)を外相に抜てきした。

    EU離脱法が成立(17年3月17日)

     英国のEU離脱についてEUに通知する権限をメイ首相に与える法案が16日、エリザベス女王の承認を受け成立した。メイ氏が3月末までにEUに離脱を正式に通知し、原則2年の離脱交渉を始める条件が整った。

    EU離脱通知 2年の交渉が開始(17年3月30日)

     英政府は29日、EUからの離脱をEUに正式通知した。これにより、離脱条件を定める協定や新たな自由貿易協定(FTA)を話し合う原則2年の交渉が始まった。交渉を巡る英国とEUの溝は深く、交渉の難航は必至とみられている。

     ティム・バロウ駐EU英大使がブリュッセルで、メイ英首相が署名した通知文書を、EUのトゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)に手渡した。これを受け、メイ氏は英議会下院で演説し、「国民一人一人のために適切な合意を取り付けることが、私の断固とした決意だ。今こそ団結すべき時だ」と呼びかけた。

     通知は、EUの基本条約であるリスボン条約の50条に定められた離脱手続きだ。初めて適用されることになる。通知文は「(EU)単一市場(への残留)を模索しない」と明記し、単一市場から完全離脱する方針を示した。「EUから離脱しても、欧州を出て行くわけではない。深く特別なパートナーシップの構築で合意したい」と繰り返し強調した。

    2017年06月12日 11時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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