文字サイズ
    大西飛行士の宇宙便り

    忙しい宇宙の暮らし~週末は朝寝坊OK

     国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の大西卓哉宇宙飛行士(40)が、読売中高生新聞と読売KODOMO新聞に寄稿し、宇宙での生活や実験について子供たちに解説した。その詳細と、宇宙で撮影した写真を紹介する。(執筆は8月時点)=写真はいずれも大西宇宙飛行士撮影(JAXA/NASA提供)

    • ISSのキューポラ(天窓)にて。背景は地球とロシアの宇宙船ソユーズ
      ISSのキューポラ(天窓)にて。背景は地球とロシアの宇宙船ソユーズ

     みなさん、こんにちは。JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙飛行士の大西卓哉です。私は現在、地上から400km上空を飛んでいる国際宇宙ステーション(ISS)からこのレポートを書いています。400kmという距離は大体、東京から大阪までの距離にあたりますが、その距離を地面から上の方に伸ばしていったところに宇宙ステーションがあります。

     宇宙って、遠いようで意外と近くないですか?

     今日は、私の宇宙での暮らしと仕事について、みなさんにご紹介したいと思います。

    胃の中で食べ物フワフワ…すぐに満腹

     ここ宇宙ステーションには現在アメリカとロシア、それから日本という3カ国の宇宙飛行士が合計6人住んでいます。私たちの1日は朝6時に起きるところから始まって、7時半から仕事、途中で1時間のお昼ご飯と2時間半の運動の時間を挟んで、午後7時頃まで仕事です。宇宙ステーションは、90分に1周という猛スピードで地球を回っていますので、1日の間に昼と夜が16回訪れます。世界中の管制センターと交信しながら仕事をするので、私たちも地上の管制官たちも、世界標準時に合わせて仕事をしていて、日本とは9時間の時差があります。

    • タコスを浮かべる大西さん
      タコスを浮かべる大西さん

     宇宙での食事が地上と大きく違うのは料理が出来ないという点です。というのは、宇宙ステーションでは火を使うのが厳禁だからです。ですので、食事はフリーズドライ製品か、レトルト食品ばかりです。味は……やっぱり地上で食べるご飯の方がおいしいですね。でも、日本食メニューもあるんですよ!食べたものは胃袋の中でフワフワ浮いているので、すぐに満腹になったような気がするのも特徴です。

     宇宙で大変なのは、なんと言ってもトイレです。無重力で何でもフワフワ浮いてしまう宇宙では、専用のトイレが必要です。フワフワ浮いてしまうものを吸い取るために、掃除機のように空気ごと吸い取る仕組みになっています。私も宇宙に来てしばらくはこの使い方をマスターするのに苦労しました。

     仕事は毎日忙しいですが、皆さんと同じように週末はちゃんとあります。土曜日の半分と日曜日はお休みを頂けるので、好きなだけ朝寝坊したりできます。休みの日の過ごし方は人それぞれですが、窓から地球を眺めて写真を撮ったり、好きな音楽を聴いたりして過ごしています。

    宇宙飛行士の体を使った研究も

     宇宙ステーションでは、様々な宇宙実験が行われています。そのどれもが、宇宙ならではのユニークな特徴を生かした実験です。日本の実験棟「きぼう」はISSの中でも最大の大きさで、その中では沢山の実験が行われています。例えば、たんぱく質の結晶を宇宙で作るものがあります。宇宙では重力や空気の対流の影響がないため、とてもきれいな結晶を作ることができ、新しい薬を作る研究などの役に立てることができます。9月の下旬にソユーズ宇宙船で新しいたんぱく質の結晶が届くので、今から楽しみです。

    • 医学データを取りながらロボットアームのシミュレーター訓練をする大西さん
      医学データを取りながらロボットアームのシミュレーター訓練をする大西さん

     宇宙飛行士の体を使った研究も行われています。宇宙では、人間の骨や筋肉が地上と比べて急激に弱っていくことが知られています。私たち宇宙飛行士の体や遺伝子の変化を調べることで、骨粗しょう症などの病気や老化の対策に役立つ研究に生かしたりすることができます。地上で暮らす人々の生活や健康に役立つように、私たち宇宙飛行士や地上の研究者たちで力を合わせて頑張っています。

     また、「きぼう」にはエアロックという、宇宙ステーションの中から外の宇宙空間へ物を出すことができる設備があります。先日、そのエアロックを地上からの遠隔操作で自動で出来るように準備をしました。地上から操作ができれば、宇宙飛行士が作業する必要が減るので、これまで以上にエアロックを使った宇宙実験がたくさん出来るようになります。

     9月には、アジアの学生から寄せられたアイデアを「きぼう」で実験する「TRY ZERO G」を実施します。紙飛行機やボールを使った実験や水の動きを観察する実験など、様々なアイデアが詰まった実験を行うので、どんな実験結果になるか楽しみにしていて下さいね。

    宙から見える地球 本当に大きくて綺麗

    • 宇宙から見た北海道・洞爺湖(左)と支笏湖(右)
      宇宙から見た北海道・洞爺湖(左)と支笏湖(右)

     私はソユーズという宇宙船に乗って初めて宇宙ステーションに到着したとき、その大きさに本当にびっくりしました。こんなに大きな実験施設を宇宙に建造した人間の科学力に感動しました。そして宇宙から見える地球も本当に大きくて綺麗です。視界一面に広がる青い海や緑の森林、赤い砂漠やゴツゴツとした岩山、私たちの住んでいるこの星は、沢山の色や様々な地形に満ちています。それらを見ていると、自然の力の偉大さを感じます。そして、その中で私たち人間の営みもちゃんと見えます。そんな地球の様々な一面を、これからも写真に撮ってみなさんにお届けしたいと思います。

     早いもので私の長期滞在も折り返し点にさしかかろうとしています。これからも、皆さんの役に立つような成果を持ち帰れるよう、地上の仲間と一丸となって、様々な研究や実験に取り組んでいきます。引き続き、応援よろしくお願いいたします。

    2016年10月06日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP

    山へ行こう♪

    初心者も、ベテランも 準備はしっかりと