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    政治

    安保関連法成立と内閣改造の損得勘定

    読売新聞編集委員 伊藤俊行

     戦後最長の245日という会期幅となった第189通常国会は、最大の焦点だった安全保障関連法が成立し、間もなく閉会する。政局の焦点は内閣改造・自民党役員人事に移る。
     来年の参院選に向けて、安倍政権の中枢となる布陣だけに、その顔ぶれに注目が集まるのは当然だろう。
     ただ、安倍晋三首相が第1次政権当時に唱えていた「戦後レジームからの脱却」というスローガンからすると、今回で安倍首相にとって3度目(第1次政権を含む)となる内閣改造は、いささか皮肉に映る。なぜなら、内閣改造を人心掌握、政権浮揚の道具とするのは、戦後、吉田茂・元首相が始めた手法であり、頻繁な内閣改造で政策や改革が中途半端に終わることは、「戦後レジームの弊害」の一つでもあったからだ。

    支持率下降局面での改造に益なし

     戦後の内閣改造は42回ある。

     読売新聞社が世論調査を毎月行うようになった1978年以降の23例を対象に、改造前後の内閣支持率を調べると、14例は、改造前に支持率が下降(改造の前3か月の間に支持率が継続して落ち続けるか、5ポイント以上落ちたパターン)または、低迷(内閣支持率が40%を割り込むレベルで推移していたパターン)のタイミングでの改造だった。

     具体的には、【表1】の14例が該当する。

    【表1】改造前に支持率が下降・低迷していた内閣
    番号 内閣 改造時期
    鈴木善幸内閣 1981年11月
    竹下登内閣 1988年12月
    海部俊樹内閣(第2次) 1990年12月
    宮沢喜一内閣 1992年12月
    村山富市内閣 1995年8月
    小渕恵三内閣 1999年1月
    森喜朗内閣 2000年12月
    安倍晋三内閣(第1次) 2007年8月
    福田康夫内閣 2008年8月
    10 菅直人内閣(再改造) 2011年1月
    11 野田佳彦内閣 2012年1月
    12 野田佳彦内閣(再改造) 2012年6月
    13 野田佳彦内閣(再々改造) 2012年10月
    14 安倍晋三内閣(第2次) 2014年9月

    • 第2次安倍改造内閣が発足し、女性閣僚に囲まれる安倍首相(=首相官邸で)
      第2次安倍改造内閣が発足し、女性閣僚に囲まれる安倍首相(=首相官邸で)

     このうち、改造後に内閣支持率が安定的に回復(改造後3か月間、改造前よりも5ポイント以上高い支持率を維持)したのは、(6)の小渕内閣の例しかない。

     ただ、この小渕内閣の改造では、閣僚の交代は1人だけだった。当時、自民党と、小沢一郎氏(現在は生活の党共同代表)率いる自由党が連立政権を組むことで合意し、自由党の野田毅氏(現在は自民党税制調査会長)を自治相に起用する人事を行った結果だ。

     通常は、閣僚の1人や2人を交代させても、改造とは呼ばない。小渕内閣の時は、政権の枠組みが変わったので、たった1人の交代を「改造」と呼んだ。その意味では、内閣支持率が下降局面に行われる通常の改造の成功例は、皆無と言っていい。

     内閣改造によって、もともと下降中だった支持率をさらに落ち込ませた政権もある。その最たるものが(2)の竹下内閣で、改造後1年も経ずに、竹下首相は退陣に追い込まれた。

     これ以外の12例は、改造によって顕著な支持率の回復がなかったか、一時的に上昇してもすぐに下落したケースだ。

     例えば、(8)の安倍内閣(第1次)は、改造直後に20ポイント近く支持率が上がったが、1週間ほどで改造前の20%台の支持率に逆戻りし、その直後に安倍首相は退陣した。(9)の福田内閣も、改造直後は15ポイントほど支持率がはねあがったが、こちらも1週間ほどで改造前の20%台の支持率に戻るという過程をたどり、福田首相も直後に辞任した。

     民主党政権では、(10)の菅内閣、(13)の野田内閣(再々改造)で、改造直後に5ポイント以上の支持率上昇が見られたが、1か月ほどで急落している。

     (14)の安倍内閣(第2次)の改造は、改造2か月前に支持率が9ポイント急落し、改造前の3か月間で見ても支持率が6ポイント下落した局面で行われた。改造直後は支持率が13ポイントも回復し、そのまま推移すれば成功例になるはずだったが、目玉人事の女性閣僚2人が政治資金の問題などで同時辞任した影響で、改造による政権浮揚効果がすぐに失われたことは、まだ記憶に新しい。

     調査方法などが異なるために単純比較はできないのだが、その時々の改造前後のトレンドを見る限り、14例中13例が失敗か、効果なしという結果で終わっていたことは確かだ。この事実から分かるのは、政権の勢いが失われている時の内閣改造のリスクが、いかに大きいかということだろう。

     では、支持率上昇局面での改造の場合は、どうだろうか?

    2015年09月16日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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