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    老後破産

    認知症と危ない「友達」…「老後破産」の現実(13)

    ファイナンシャルプランナー 柳澤美由紀

     

     高齢社会の今、一人暮らしの認知症高齢者世帯が約94万にも及ぶと推定される。そんな高齢者に近寄り、何かと面倒を見る「優しい友達」が多額の預金を引き出していた――。「 『貯金2700万円』でも危ない… 」「 3500万円が底をつく『死角』… 」「 3000万円も不足? インフレの恐怖… 」「 退職金が半分に!?… 」「 『40代で子宝』夫婦の誤算… 」「 独立したら85歳で1600万円借金?!… 」「 子どもがニート? ひきこもり?… 」「 退職金でも住宅ローンが返せない?!… 」「 月32万円の年金で不足? 迫られたホーム転居… 」「 退職金食いつぶす“保険貧乏”… 」「 年の差婚で『教育費』が重荷に… 」「 退職金食いつぶす“保険貧乏”… 」「 娘のカード浪費が止まらない… 」と続く「『老後破産』の現実」シリーズ。柳澤さんが解説する。

    一人暮らしの90歳女性宅に…

    • (写真はイメージです)
      (写真はイメージです)

     筆者はライフワークとして、「仕事と介護の両立セミナー」活動を行っている。親の介護を理由とした現役世代の離職をできるだけ防ぎ、「一人で抱え込み過ぎない」「公的介護保険を上手に活用する」などのポイントをお話しするものだ。本業のファイナンシャルプランナーとは少し毛色の違うものであるが、母が脳梗塞で倒れたのをきっかけに始めた。今回はその活動を通じて遭遇した老後破産の実態についてお話ししよう。

     最近、ある会場でそのセミナーが開催された。講義を終えたあと、初老の男性が私のもとにやってきて、こう言った。

     男性「身内ではなく、近所に一人で暮らす90歳の女性について相談したいのですが、いいですか」

     男性の話によると、90歳の女性Aさんは昔、小学校の先生をしていた。男性が1年生のときに担任となって以降、家族ぐるみのつきあいが続いてきた。子宝に恵まれなかった先生は、卒業後も本当の子のように自分と接してくれた。お互いにその土地を離れることがなかったので、双方のつれあいが亡くなっても2人の師弟・友情関係は変わらなかった。Aさんは5年ほど前から膝が悪くなり(つえ)をついて生活している。それに伴い、物忘れも進行していたが、元来穏やかな性格だったこともあり、大きな問題もなく暮らしていた。

    「世話好きの友達」が1000万円以上使い込む

     異変が起きたのは、3年前の秋である。見知らぬ中年女性Bさんが頻繁にAさんの家に訪れるようになった。Aさんに聞くと「友達だよ。優しい人で、私が心配だからって毎日、お世話をしに来てくれるの」という。しかし、Bさんは顔を出すたびに身なりが派手になり、いつも大きな買い物袋を抱えてくる。どうみてもAさん一人のために買ってきた量ではない。

     心配になって、自分も毎日、Aさんの家に遊びに行くようにしたら、その女性はAさんのキャッシュカードでお金をおろして、買い物をしていることがわかった。男性がそれとなく聞くと、「必要なものを買っているだけですから」とBさんは答えるが、果たして信じていいものなのか。誰に相談していいかわからず、悶々(もんもん)としていたという。

     筆者「気になるなら、お住まいの地域を管轄する地域包括支援センター(市町村が設置している高齢者向けの相談支援拠点)に相談に行かれるといいですよ。それでも解決しなければ、他の方法を考えましょう」

     そういって筆者の名刺を渡したら、数週間後にその男性から電話がかかってきた。

     男性「僕の心配は的中していました。地域包括支援センターの相談員の方に話をしたら、Aさんの自宅まで調べに来てくれたのです。Aさんの許可をもらって通帳を調べたら、多額の貯金が引き出されていました。Bさんが出入りするようになって、それまで約1500万円あった預金残高が300万円くらいまでに減っていたのです。彼女を『なぜこんなにお金を引き出したのか』と問い詰めたら、『Aさんから頼まれたから引き出しただけだ』と言うのですが、明らかにおかしいです。僕がもっと早くに通報していたら……」

     そのまま放置していれば、Aさんの財産が底をついていたかもしれない。電話越しの男性は泣いていたのだろうか。声をつまらせて、震えているように感じた。

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    2016年10月12日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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