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    計1万8000人を超す死者・行方不明者を出した東日本大震災。発生から5年を迎える被災地で復興に情熱を傾ける人々の姿、再生に向けた足取り、災害の教訓を生かす取り組みをお伝えします。
    現場から

    「東北の子どもたち」~新たな貧困層に光を

    チャンス・フォー・チルドレン代表理事 今井悠介


     阪神大震災は発生から5年で応急仮設住宅の入居者はいなくなったが、東日本大震災の被災3県(岩手・宮城・福島)では、いまだに約6万人が仮設住宅で生活する。復興のスピードが遅い「東日本」の被災地で、子どもたちはどう暮らしているのか。子どもの頃に「阪神」を経験し、「東日本」の被災地域で教育支援を続ける今井悠介氏に執筆してもらった。

    チャンス・フォー・チルドレン代表理事 今井悠介

    支援を求める声は減らない

    • 東日本大震災被災地では子どもたちの問題が深刻化している(Natsuki Yasuda / studio AFTERMODE)
      東日本大震災被災地では子どもたちの問題が深刻化している(Natsuki Yasuda / studio AFTERMODE)

     「3.11から、私たちの時間は止まったままです」

     東日本大震災で被災し、宮城県沿岸部の仮設住宅で生活する、ひとり親家庭の親の言葉だ。家屋は津波で全壊。2人の子どもを育てるために契約社員として休みなく働く。実家も全壊し、頼れる人は誰もいない。仮設を出て、生活再建できる見通しは今も立たない。

     災害の影響を最も受けやすいのは、社会的に弱い立場にある人々、とりわけ子どもたちである。私たち「チャンス・フォー・チルドレン(CFC)」が東北の被災地で提供する学校外教育バウチャー(塾や習い事等で利用できるクーポン券)には、毎年、被災によって経済的困窮に陥った世帯の子どもたちから申し込みが殺到する。2015年の申込者数は1479名で、定員の約7倍だった。

    震災後に貧困に陥る家庭が増加

    • CFCが提供する学校外教育バウチャー。塾や習い事で利用できる。1人当たりの提供額は15万~30万円分( Natsuki Yasuda / studio AFTERMODE )
      CFCが提供する学校外教育バウチャー。塾や習い事で利用できる。1人当たりの提供額は15万~30万円分( Natsuki Yasuda / studio AFTERMODE )
    • 被災地では、家庭の経済的な理由で学ぶ機会を失った子どもたちが多い( Natsuki Yasuda / studio AFTERMODE )
      被災地では、家庭の経済的な理由で学ぶ機会を失った子どもたちが多い( Natsuki Yasuda / studio AFTERMODE )

     CFCは2014年、支援の申し込みがあった子ども・保護者や他の団体の奨学金受給者を対象に独自の「東日本大震災被災地・子ども教育調査」を実施し、計2,338件の被災家庭からアンケートを回収した。

     明らかになったのは、被災家庭の労働状況や経済状況の悪化だ。震災前と比較し、親の非正規労働割合及び無職の割合は約2倍に増加した(震災前:6.3%、2014年:13.1%)。また、世帯所得250万円未満の低所得世帯は、震災前後で8.5ポイント増加していた(震災前:28.4%。2013年:36.9%)。

     2015年にCFCの学校外教育バウチャーの申込書類に添えられていた、被災家庭の保護者からの手紙には、子どもの将来を心配する親の悲痛な胸の内が(つづ)られていた。

     「現在、3人の子どもがおりますが、震災後家庭の収入が激減し、今後回復の見込みがあまり見えない状況で、子どもの希望する進路をどこまで実現できるかが不安です。私(母親)の実家も被災全壊し、4年()った今でも仮設住宅での暮らしが続いており、自分の生活と実家の生活の今後が心配です」

     被災地に限らず、日本中で起こる「子どもの貧困」の最大の問題は、親の貧困状態が次世代に連鎖することだ。子どもが十分な教育機会を得られず、低学力に陥ったり、進学や就労の道が断たれたりする。

    • (図表作成:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
      (図表作成:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

    2016年03月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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