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    計1万8000人を超す死者・行方不明者を出した東日本大震災。発生から5年を迎える被災地で復興に情熱を傾ける人々の姿、再生に向けた足取り、災害の教訓を生かす取り組みをお伝えします。
    震災6年

    後世に残す復興の記録~岩手・大船渡のミニコミ紙の軌跡

     岩手県大船渡市で、東日本大震災の発生直後から被災者向け支援情報を伝え続けてきた無料情報紙がある。「復興ニュース」と題し、3月で155号を迎えた。発行元のNPO理事長、岩城恭治さん(77)は6年を区切りに紙での発行をやめ、これまでの紙面を1冊の本にして後世に残すことを決めた。住民の目線で「小さいけれど大切な出来事」を載せて配布し続けた、貴重な記録だ。(地方部・池田創)

    ■ 炊き出し情報載せ、50部で出発

    • 被災者たちと歓談する岩城さん(3月1日、陸前高田市の仮設住宅で)
      被災者たちと歓談する岩城さん(3月1日、陸前高田市の仮設住宅で)
    • 高台から臨む大船渡市内(3月1日)
      高台から臨む大船渡市内(3月1日)

     「三陸鉄道の記事が多くて楽しかった」「自分の仮設の話題が書かれているとうれしかった」――。陸前高田市の「滝の里工業団地仮設住宅」のコミュニティースペース。「復興ニュース」の最終号を手にした住民たちは口々に思い出を語った。紙面を手にした自治会長の小野田高志さん(79)は「普通の新聞には載らない細かい話題も紹介されているので助かった」と笑顔。ニュースを愛読し、4年前から配布も手伝うようになった村上時子さん(70)は「終わってしまうなんてさびしい」と残念そうに話す。

     岩城さんが復興ニュースの発行を決めたのは、近所の家屋の泥だしなどを手伝っていた発生間もない頃だった。「何か地元の人たちの力になれることはないだろうか」と考え、2011年4月11日から発行が始まった。初期は炊き出しの開催情報が主で、50部からのスタートだった。

    ■ 3000部紙面を独力で取材、編集

    • これまで発行した復興ニュースを振り返る岩城さん
      これまで発行した復興ニュースを振り返る岩城さん
    • 震災直後(2011年3月23日、岩城さん撮影)
      震災直後(2011年3月23日、岩城さん撮影)

     次第にボランティアの活動や被災者の現状、各地域の支援イベントなどを掲載するように。創刊時はA4判1ページの週2回発行、現在は4ページで月1回発行している。自身が理事長を務めるNPO法人「夢ネット大船渡」内で編集作業を行い、今や3000部を発行するまでに成長した。

     記事は岩城さん本人が現地に赴いて執筆してきた。自分一人で取材、写真撮影、レイアウト、印刷発注まで全てこなす。64歳まで32年間市議会議員を務め、議会だよりを編集していたことが役に立った。各地の仮設住宅まで配達し、その先はボランティアに頼る。

     最初はイベントの取材で見知らぬ人に声をかけることに戸惑ったが、次第に度胸がついた。被災者の声を盛り込み、客観的に伝えるように心がけた。「少しでも役に立ち、被災者の相互交流につながるような内容にしたかった」と振り返る。

    ■ 失敗と困難 善意で乗り越え

     発行は楽ではなかった。医療ボランティアが集まった記事で「集結」を「終結」と間違え、痛い訂正を出したことも。「震災からあっという間」と記すと、「被災者にとっては長い時間なのに」と苦情が来た。

     岩城さんは陸前高田市に嫁いだ姉を津波で亡くしたが、自宅の被害は軽かった。「被災者の気持ちに寄り添った記事」を心がけたという。

     住民の求めに応じて発行部数を増やしていくうちに、自宅の小型プリンターでは印刷がまかなえなくなり、内陸部の住田町役場や近くのパチンコ店の事務所の印刷機を借りてしのいだこともある。いずれも少しも嫌な顔をせずに貸してくれ、岩城さんは「多くの人に助けられたからこそ、今まで発行してこられた」と振り返る。

    ■ これまでの紙面をまとめて本に

     発生6年を節目に紙印刷は終え、不定期発行のネット配信に切り替えることにした。喜寿を越え、配布が体力面で限界になったためでもある。「被災地復興の記録として残そう」と考え、これまで出した復興ニュースを1冊の本(計約700ページ)にまとめ、3月10日に発行した。「被災地のあるひとつの記録として、活用してくれたらうれしい」と語る。

     今後はNPO法人の活動である高齢者向けの手芸教室やパソコン教室に本腰を入れ、被災者の支援活動を続けていくという。岩城さんは「発生から6年を迎えるが、高齢化などまだまだ被災地には課題が山積み。今回発行する合本号を読んで、後世の人たちが地震の記憶を語り継いでくれれば」と語った。

    ■ 思い出に残るあの日の紙面

     岩城さんに思い出に残る「復興ニュース」紙面をあげてもらった。

    ▼創刊号(2011年4月11日)

     「流出した写真を探すボランティアの活動を紹介。見つかった写真を後日、公民館で公開すると、多くの方が写真を探しに来てくれました」

    • 第1号
      第1号
    • 第2号
      第2号

    ▼第2号(2011年4月12日)

     「発行初期は炊き出しの情報を多く掲載していました。メニューはカレーうどんが多かったことを思い出します。被災者にとって食糧は大切な問題でした」

    ▼第51号(2011年11月16日)

     「地震が発生したために結婚式を開けなかったカップルが仮設住宅で挙式した話題。私は知り合いを訪ねて貸衣装を借りるお手伝いをしました」

    • 第51号
      第51号

    ▼第87号(2013年4月10日)

     「三陸鉄道の盛―吉浜駅間が復旧したことを紹介しました。鉄道は復興のシンボル。記念式典はお祭り騒ぎで、参加した被災者に笑顔が戻っていました」

    • 第87号
      第87号
    • 第144号
      第144号

    ▼第144号(2016年4月1日)

     「大阪の彫刻家の方が作った小さなお地蔵さんを、月命日に多くの被災者がお参りしている話題。ある方は『亡くなった人たちに会える気がする』と話してくれました」

    *合本は約2000円。購入希望者は岩城さんが理事長を務める「NPO法人夢ネット大船渡」(TEL 0192・47・3271)へ。

     最新号を含め、過去の紙面は同NPOのホームページで公開

    動画を視聴するにはiframeタグに対応したブラウザをご利用ください

    【動画】:住民に支えられた手作り情報紙6年の軌跡。発行し続けた男性が思いを語ります

    2017年03月24日 12時04分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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