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    不明29年「似た男性」ネット騒動…鑑定も別人

    • 伸矢ちゃんの情報提供を呼びかけるポスター(徳島県吉野川市役所で)
      伸矢ちゃんの情報提供を呼びかけるポスター(徳島県吉野川市役所で)

     愛知県で保護された身元不明の男性が1月末、民放の番組に出演し、情報を求めたところ、1989年3月に徳島県つるぎ町貞光(旧貞光町)で行方不明になった松岡伸矢ちゃん(当時4歳)ではないかとの声が徳島県警に寄せられ、県警が今月、DNA鑑定を実施した。

     結果は別人。伸矢ちゃんの家族は鑑定を行う前から「違うのではないか」と冷静さを保ちつつ、関心を寄せてくれた人たちへ「感謝したい」と述べるのを忘れなかった。関係者は今なお、発見への手がかりを求め続けている。

     放送された1月31日夜の直後から、インターネット上で「男性と伸矢ちゃんが似ている」などの書き込みが相次ぎ、県警へも多くの情報提供があった。県警は、2月3日に伸矢ちゃんの両親に会って試料の提供を受け、男性との親子鑑定を実施。6日には男性が両親の子どもではないことを確認した。

     「たとえ1%でも可能性がある以上、白黒をつけなければならなかった」と県警幹部。伸矢ちゃんの行方がわからなくなってから約30年。県警も捜索の糸口すらつかめずに苦しんでいる。

     伸矢ちゃんは89年3月7日朝、家族と訪れていた親類の藤本弘子さん(77)方で姿を消した。家族で散歩に出掛けて戻った際、父親の正伸さん(60)が目を離したわずか数十秒の出来事だった。県警や地元消防団などによる大規模な捜索や、警察犬による探索でも成果はなく、現在に至っている。

     そんな中、突然もたらされた今回の情報。「もう伸矢の話はせんようにしている。つらいばっかりやから」と今も同じ家に住む藤本さん。「テレビを見てもピンとこない」と話した。また、正伸さんもDNA鑑定が行われる前から、茨城県牛久市の自宅で取材に応じた。

     正伸さんは、伸矢ちゃんの情報が寄せられた時にすぐに捜しにいけるようにと会社を辞め、現在は自営業を営んでいる。「テレビを見たが、顔が似ていないので別人だと思った」と話した。

     だが、正伸さんはDNA鑑定で別人だったことを伝えられると、フェイスブックで「諦めずに長男をこの腕に抱くその日まで前向きに歩んでまいりたいと思います」とコメントすることを忘れなかった。

     徳島県警は現在も役所にポスターを設置するなどして情報提供を呼びかけている。伸矢ちゃんは当時、左目の眉に蜂に刺された痕があり、今も残っているとみられる。また、左利きだった。情報提供は美馬警察署(0883・52・0110)。(行田航、三味寛弥)

         ◇

     ◆特定失踪者リストにも

     県警は行方がわからなくなった当日、地元の警察官のほか、機動隊員や警察犬を派遣し、消防署員や消防団員らを含め計100人態勢で捜索。翌日にはさらに増員し、200人態勢で捜したが見つからなかった。警察犬による捜索はその後も約3か月間続いたが、手がかりは得られなかった。

     93年6月には県警が、情報提供を呼び掛けるポスター1万2000枚を作製し、全国に配布。正伸さんも同年10月、誘拐事件として捜査を求め、約2万8000人分の署名を警察庁に提出した。

     また、伸矢ちゃんは、北朝鮮による拉致の可能性が排除できないとして、民間団体がつくる「特定失踪者」のリストにも名前が入っている。

     ◆同種ケース、どう向き合う

     県警が今回、DNA型鑑定を実施した背景には、インターネット上の反響が予想以上に大きかったことがある。番組を見ずに、ネットの情報を見て県警に通報したケースもあったとみられ、幹部の一人は「似ているという情報は行方不明事案ではよく寄せられるが、一致することはほとんどない。ここまで至るとは思わなかった」と驚いていた。

     服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)は「匿名性が高いネット社会が発達した現代では、同種のケースが起きることは今後も予想される。捜査機関はネットに端を発した情報と、どう向き合うか検討が迫られている」と指摘していた。

    2018年02月13日 10時27分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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