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    バイパス完成も、人口減で「取り残される」不安

    • 開通した国道168号辻堂バイパス(手前)。熊野川を挟んで辻堂地区の集落が広がり、山では紀伊水害で崩れた斜面の保護工事が進む
      開通した国道168号辻堂バイパス(手前)。熊野川を挟んで辻堂地区の集落が広がり、山では紀伊水害で崩れた斜面の保護工事が進む
    • 開通した辻堂バイパスの夢翔大橋(五條市大塔町で)
      開通した辻堂バイパスの夢翔大橋(五條市大塔町で)
    • 辻堂地区の1車線の国道。対向もままならない
      辻堂地区の1車線の国道。対向もままならない

     2011年9月の紀伊水害で大規模な土石流の被害を受けた奈良県五條市大塔町辻堂地区で、狭い国道168号を迂回うかいする辻堂バイパス(4・1キロ)が16年がかりで完成した。

     五條市中心部から十津川村方面への行き来がスムーズになり、観光や救急搬送、災害時の物資輸送などで役立つと期待されている。

     バイパスは幅10・5メートルの2車線。集落内を通る国道は1車線で、車の対向もままならなかった。

     16年3月までに3キロが部分開通。最後の未完区間となった1・1キロ(五條市大塔町辻堂―大塔町堂平)が今年3月、ようやく通った。熊野川沿いの急峻きゅうしゅんな山肌に、夢翔ゆめかけ大橋(384メートル)などが浮き上がるように見える。

     3月18日の開通式典で、太田好紀市長は「災害時の孤立地域の解消につながる」と強調。十津川温泉で旅館を営む十津川村観光協会長の田花敏郎さんは「村民にとっては、生活でも観光でも命の道だ」と喜んだ。

     辻堂自治会長の渡辺清一さん(62)は「狭い道路に車が立ち往生し、大型車が通るたびに振動やほこりで苦しんでいた。静かになってほっとした」と話す。

     ◆水害復旧道半ば 人口4割減少

     一方、かつては旧大塔村の中心だった辻堂地区の集落では、紀伊水害以降、住民の流出が止まらない。復旧工事も道半ば。住民は「集落は取り残されたままでは」と不安を募らせる。

     紀伊水害では、集落近くの2か所の谷で土石流が発生。住宅や大塔保育所など計9棟が全半壊や浸水の被害を受けた。土砂で覆われた集落内の国道は通行止めとなった。

     谷の砂防ダムが完成した14年12月、11世帯20人に出ていた避難指示・勧告が解除され、一部の住民が3年4か月ぶりに戻った。国道も通行が再開された。

     市は活性化を目指し、辻堂地区で木材チップ工場の建設を計画している。

     それでも、水害直前に34世帯58人だった集落の人口は、22世帯36人(今年2月末時点)に減少。実際に住んでいる人はもっと少ないという。旧大塔村全体では276人(今年2月末時点)で、水害前の466人から4割も減った。

     水害で自宅が傾き、集落の外に住む男性(66)は「避難所を転々としたつらさは忘れられないが、いつ山が崩れるとも限らない。古里がさびれていくのは忍びないが、この年齢で自宅を修理する元気はない」と明かす。

     集落に唯一残っていた雑貨店は、水害により店じまいした。集落でガソリンスタンドを経営する男性(50)は「バイパス完成で幹線から取り残され、車がますます減った。いつまで店が続けられるか分からない」と、営業日や時間を短縮した。

     2か所の谷では、斜面の保護工事が続いている。県五條土木事務所の担当者は「台風などで新たな崩落の恐れもあり、完成時期は未定」と説明する。

     自治会長の渡辺さんは「6年半たっても水害が重くのしかかり、豪雨のたびにおびえる日々は変わらない。復旧を急ぎ、まずは安心して住み続けられるようにしてほしい」と訴える。(熱田純一)

     ◆辻堂バイパス=五條市大塔町宇井―大塔町小代の4・1キロ。猿谷ダム湖沿いや辻堂集落などの狭い道やカーブを解消しようと、県が2001年度に着工。紀伊水害では工事用の桟橋が迂回路として使われ、工事が一時中断した。新猿谷トンネル(850メートル)など2か所のトンネルや、10本の橋を整備。総事業費は約280億円。

    2018年04月16日 17時39分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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