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(1)魔物すむ掲示板

学校裏サイト 力に酔う15歳

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学校裏サイトにあふれる中傷の言葉。削除するも残すも管理人の判断一つ(画像を一部修整しました)

 「『俺には、ほかとは違う力がある』と感じていた。全能感と言っていいかもしれない」。中部地方の中堅都市。かつて学校裏サイトの管理人として知られたトオル(18)(仮名)は、ぽつりぽつりと振り返り始めた。

 ケータイの無料レンタル掲示板で学校裏サイトの運営を始めたのは2006年10月。高校1年、15歳だった。夏休み明け、ささいなことで仲間から無視されるようになり、学校に話し相手が誰もいなくなった頃だ。

 憂さ晴らしのつもりで始めた裏サイト作りは、予想以上に簡単だった。メールアドレスやパスワードなどを打ち込むだけ。10分もかからない。いつしか地元の中学高校約50校の裏サイトを管理するまでになった。

 アクセスは多い日で1000件以上。〈きもい〉〈うざい〉といった書き込みも増えていった。書き込みを消したり、特定の投稿者のアクセスを制限したりするのは管理人の権限だ。トオルの元には〈私の悪口を削除して〉と依頼してくるメールが3日に1度は届くようになった。

 ある日、そんなメールに〈本人確認のため顔写真を送って〉と返信してみた。悪ふざけのつもりだったのに、本当に送ってきた。女の子の写真だった。「管理人の力ってスゴイ」。気持ちが高ぶるのを感じた。

 こんな手口で10人ほどの少女から顔写真を送らせた後。その中学3年の少女には、下着姿の写真を要求してみた。〈従わないなら消せない〉。相手はためらったが、数時間後、写真を送ってきた。「俺の命令を何でも聞くぞ」。欲望はエスカレートしていく。〈じゃあ今度は下半身を〉〈次は全裸〉〈言うことをきかなければネットに流すぞ〉――。

 入手した画像は6枚。ケータイの向こうで、少女がどんなに恐怖に震えていたか、想像する心は失われていた。

 児童買春・児童ポルノ禁止法違反と強要の容疑で逮捕されたのは、その1か月後だった。

 「罪の意識がマヒしていた」。少年鑑別所を出て、今は地元企業で働くトオルはネットの魔力を時々考える。「何の能力もない自分なのに、見知らぬ人から次々と頼み事をされて、自分が大きくなったと勘違いしてしまったのかもしれない」

音楽違法配信「賞賛に喜び」

 無料掲示板とは、文章や動画、音楽などのデータを登録できるサイト上のスペースだ。利用者は運営業者から無料で借り、自分の管理するデータを不特定多数に披露する。閲覧数が増えれば、業者は広告収入を得ることができる。金のない子どもでも、簡単に情報の発信者になれる世界だ。

 福岡県警が今春、無料掲示板で音楽を無断配信したとして計7人を摘発した著作権法違反事件の場合、6人は未成年だった。彼らは海外の海賊版サイトからダウンロードした曲などを自分の掲示板で無料配信していた。中には、自宅にパソコンがないのに、携帯型ゲーム機の通信機能を使って配信していた“強者”もいた。

 中学2年だったショウタ(15)(仮名)の動機は「みんなに感謝されたい」というものだった。学校では、クラスの約半数が掲示板を利用する。「あのサイト、いいね」。新曲を大量に無料配信する掲示板は、みんなの称賛の的だからだ。

 ショウタがパソコンに向かう時間は1日30分程度。特別な知識を持ち合わせているわけではない。父親(42)は振り返る。「だからといって大丈夫、と思うのは慢心だったかもしれない。息子は親が思う以上に早熟だった」。事件後、家にパソコンを置くのはやめた。親子の会話は、むしろ増えたと感じている。

 夏休みにパソコンやケータイに向かっているだけで、被害者にも加害者にも簡単になりうる怖さ。パート3では、子どもがネットの世界に無邪気に足を踏み入れた時、そこで待ちかまえる危険を追う。

2009年8月14日  読売新聞)
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