(2)ドル箱 少女撮影会「U―10の子サイコー」「水着だともっといいよね」「振り返って、笑って」 「レモン持ってみて」 身長130センチにも満たない9歳の女児が、ぎこちなくポーズを取ると、周囲に群がる男たちが一斉にシャッターを切った。数台のカメラは、小さな体の30センチ先にまで迫っていた。 「やっぱりU―10(10歳以下)の女の子はサイコー」とはしゃぐ若い男は、「水着だともっといいよね」と、制服のスカートから出た女児の細い脚に目をやる。 7月下旬、東京都内のスタジオで開かれた撮影会。被写体は9〜14歳の少女7人だ。「ジュニアアイドル」と呼ばれるタレント予備軍で、週末ともなると各地の撮影会に呼ばれていくという。中にはDVDや写真集を出している少女もいる。 参加費は2時間で2万円。モデルが成人の場合の相場に比べると倍以上の高さだが、この日は約50人が参加した。 「こういう撮影会が目立って増え始めたのは、ここ5年ほど」と、別の撮影会の運営業者は明かす。「モデルが幼いほど客が集まる。高校生より中学生、中学生より小学生が人気」 スカウトの手段は主にネットだ。子どもたちに人気の携帯サイトもよく使う。「『タレントになりたい』という欄は無数にある。ここで募集かければすぐだよ」 ◎
小中学生の撮影会やグラビア誌、DVD。ジュニアアイドル市場は今や“ドル箱”だ。「ネットが低年齢化、過激化を招いている」と、日本ユニセフ協会の東郷良尚副会長は指摘する。 今年1月、16歳の少女の過激な水着姿を撮影したとして、警視庁がプロダクション社長らを児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕した事件。被害少女がDVDに出演するきっかけもケータイの検索サイトだ。「タレントになりたかった」。だが、まさか体に食い込むような小さな水着まで着させられるとは思わなかったという。 こうした露出度の高い衣服で過激な演出を競う作品は「着エロ」と呼ばれる。中でも、幼い子どもをモデルとしたジャンルは根強い人気だ。 ネット上には、月3000円程度の会費を払えば、水着姿の小中学生の写真を見ることができるサイトもあふれる。映っているのは、タレント志望の小学生たちが、ベッド上でビキニ姿になったり、跳び箱をまたいだりするシーンだ。 ◎
ビデオカメラは少女の下半身にズームアップしていった。「13歳」を売り物にしたDVD作品。全編60分間、少女の水着姿しか映っていない。 現在高校1年の女子生徒(15)がDVDに“初主演”したのは中1の夏だった。「ドラマに出演するには、まずグラビアで名前を売らないと」。タレント事務所のそんな言葉を信じたが、結局、水着の仕事しか回ってこなかった。出演料は1作1万5000円だ。 DVD発売の数週間後。朝、登校すると、教室の黒板に書き殴られた「AV女優」の文字が目に飛び込んできた。「キモイ女」とグラビア誌も投げつけられた。その日から、誰も口をきいてくれなくなった。ネット上に、自分の水着姿の映像が、実名や学校名つきで流されていることを知ったのは、そのしばらく後だ。 動画投稿サイトには今も、少女の映像が流れている。何度消しても、誰かがコピーを別のサイトに張り付けるからだ。一度ネットに流れた映像は、永遠に消すことはできない。 (2009年8月15日 読売新聞)
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