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解雇通告「つらい」

上司も重いストレス

 昨秋からの雇用危機は、職を失った人ばかりでなく、解雇を告げる人の心にも重い負担をかけている。厚生労働省が31日公表した集計では、6月末までに職を失ったか、職を失う非正社員は19万人を超え、4月までの正社員の離職者も約1万2500人に上る。雇用危機は今後も続くとみられており、専門家は、失職者・解雇通告者双方の心の負担を減らす取り組みが必要と訴える。

相手は仲間「俺に何の権利が…」

 登録した技術者を企業に派遣する東京都内の会社で、営業を担当する50歳代の男性が役員から呼び出しを受けたのは、昨年9月のことだった。「(昨年4月採用の)新入社員をこれ以上派遣に出すのは難しい。退職してもらうよう説明してほしい」。そう指示された。

 対象者は数十人。“仲間”に解雇を告げた経験などなく、どう伝えればいいのか分からなかったが、「誰かがやらなければならない」と自らに言い聞かせた。

 会社の一室で若い社員と向き合い、「年末で辞めてもらうことになった。君たちに責任はない。申し訳ない」と頭を下げた。新入社員は一瞬、泣き出しそうな顔をして黙り込んでしまった。

 会社の経営状況を丁寧に説明した。最後はひたすら、おわびの気持ちだけを伝えた。面談を終えると夕方になっていた。体はぐったりしているのに、その日はなかなか寝付けなかった。

 その男性自身も今年3月、解雇を告げられた。再就職に向け走り出さなければならないが、解雇を言い渡した若者たちに対する「申し訳ない」という気持ちから今も抜け出せずにいる。

 都内に本社がある自動車部品メーカー。注文が激減したことから、社長(56)は昨年11月、百数十人の従業員のうち約4割を占める派遣社員の段階的な削減に踏み出した。

 経営を考えれば人員整理は仕方ない。しかし、「俺に他人の人生を変える権利なんてあるのか」と、自問自答が頭の中に渦巻く。これからは正社員に対する解雇通告の決断も迫られるかもしれない。昨秋から寝不足に悩み続けている。

 心の相談に応じる神田東クリニック(東京)では昨秋以降、管理職からの相談内容に変化が表れている。「職場で一緒に働いてきた派遣社員の契約を切らなければいけない。それを告げるのがつらい」などと、雇用問題を巡ってストレスを訴えるケースが目立ち始めているという。

 副院長で精神科医の高野知樹さん(43)は、「解雇を告げる役割を、『組織を守るため』などと自分自身で意味付けができれば耐えられるが、そう簡単にはいかない。今は再就職も難しいから、解雇を告げる側の心の負担も大きい」と指摘する。

 外資系金融機関で数百人の解雇にかかわった経験がある臨床心理士の堀之内高久・横浜国大准教授(56)は、「解雇を適切に伝えることによって、解雇を告げる人の心の負担も抑えられる。解雇通告者は、職を失う人の喪失感を抑えるように心掛けることが必要だ」とアドバイスする。具体的には、事務的に解雇を告げるのではなく、これまでの会社への貢献をねぎらったり、再就職のための十分な情報を提供したりして、相手の心の痛みをなるべく減らすことだという。

2009年3月31日  読売新聞)

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