宇宙と水

地球は唯一の「水惑星」  誕生シナリオの主役はたす

 「地球は青かった」。1961年、人類として初めて宇宙を飛行した旧ソ連のガガーリンは、地球の姿をこう描写した。青く見える主な理由は海。地球の総面積の71%を占め、平均水深は約4000mに達する。ここに地球の水の97%があり、宇宙の闇を背景に地球を青く浮かび上がらせる。

 海水のように塩分を含んでいない淡水は、主に極地の氷や極圏の氷河に存在し、それが75%を占める。中でも南極の氷は多い。すべてが溶けると、海面は数十m上昇するほどだ。これに対して湖や河川の水の割合は、実はわずかで、淡水全体の1000分の1ほどしかない。残りは、地下水として蓄えられるか、水蒸気や雲になっている。

 あちこちに水存在の痕跡

 太陽系の惑星で、これだけ多くの水が、液体や気体の状態で表面に分布しているのは、地球だけだ。このため地球は、「水惑星」と呼ばれることもある。だが、水があるというだけなら、ほかにもある。

 太陽系外縁の冥王星は、岩と氷が主な構成成分とされ、うち30%が氷と考えられている。表面温度は零下235℃から同210℃のため、液体や気体の水は存在しないとみられている。海王星、天王星も岩石や氷からなる。ただ水素やヘリウム、メタンの厚い大気があり、わからないことは多い。いずれも地球と同じく青く見えるが、これは、大気上層のメタンが赤い光を吸収するためだ。

 土星と木星は、水素やヘリウム、メタン、水、アンモニア、岩石などでできている。表面に見える奇妙な模様は大気の上層部で、雲のような形も見える。また土星の輪は、氷の塊や氷で覆われた岩の集まりだ。

 こうした外惑星、とりわけ土星と木星を構成する物質は、太陽系が出来る前にあった原始太陽系の組成に極めて近いと考えられている。となると水は、太陽系が出来上がる前から、豊富に存在していた可能性がある。

 衛星エウロパに生命

 外惑星を回る衛星にも、水が大量にあると考えられるものは数多い。木星の衛星エウロパは、表面が滑らかで厚い氷に覆われている。直径は3138kmで、地球の衛星である月より少し小さいが、この氷の下に液体の水があると考えられている。水深50kmに達するとの見方もあり、今後の探査でそれが確認できれば、地球を除き太陽系で唯一、液体の水が存在する場所となる。

 エウロパには薄い酸素の大気もあることが、地球周回軌道上にあるハッブル宇宙望遠鏡の観測で最近、わかった。太陽系には、衛星が約100個もあるが、大気があるのは、このほか木星の衛星イオとガニメデ、土星の衛星タイタン、海王星のトリトンだけと考えられ、エウロパは、液体の水と大気がどちらも存在するという点でユニークな存在といえる。水の中に生命がいる可能性もある。このほか木星の衛星ガニメデ、カリストも岩と氷でできており、土星でも、5つの衛星に氷が存在する。

 火星での生命探査に期待

 火星と金星、水星も水とは縁が深い。太陽の間近にある水星は、大気がなく表面温度は数百度に達することもあるが、レーダー観測によると氷がある。クレーターの外縁が作る日陰に氷がひっそりと残っているらしい。

 金星には水がない。二酸化炭素の厚い大気があり、表面大気圧は90気圧。気温は400℃から750℃の灼熱(しゃくねつ)の世界で、厚い硫酸の雲が漂う。しかし地球に似た特徴はある。直径は地球の95%、質量は80%でほぼ同じ。地球の姉妹星ともいわれ、かつては水があったとみられている。ただ地球より太陽に30%ほど近かったため、水は蒸発してしまい、宇宙に消え去ったと考えられている。

 岩だらけの赤茶けた荒地が広がる火星も、かつては大量の水があったらしい。それを示唆する運河や湖の跡のような地形が、米航空宇宙局(NASA)の探査機でここ数年、克明に観測されている。表面直下に大量の氷があるとの観測結果もある。生命やその痕跡が残っている可能性もあり、今後の探査に期待がかかる。

 惑星進化に大きな役割

 太陽系には、過去も現在も豊富に水がある。地球の水も、起源は同じはずだ。しかも、これだけ水があるのなら、水は、惑星生成と進化に大きな役割を果たしたのではないか。東京大学の研究グループは、そう考え、水を主役にした地球誕生のシナリオを描く。

 それによると、宇宙に漂うガスが収縮して太陽が誕生した。その周囲のチリが合体し、微惑星がたくさんできた。それが互いに衝突、合体するうちに原始惑星を形成した。地球もその1つで、原始の地球には微惑星が降り注ぎ、その衝撃で熱が発生。微惑星の中の水が蒸発して原始の地球を毛布のように覆った。大気圧は高く、気温も上昇、地表が溶けてマグマの海が生まれた。マグマの中で比較的重い物質は中心部に沈み地球の核に。その周りにマントル、表面にはプレート(岩板)のもとができた。そのうち、微惑星の衝突は減少。原始地球は冷えはじめ、水蒸気が雨となって地上に降った。これにより海が誕生。マグマも冷えて固まり、地殻となった。

 地球にとって水は、現在はもちろん、誕生の時点から重要な存在だったといえる。

(井川 陽次郎)

メモ
 水の起源 太陽系には、誕生時から水があり、それが惑星の形成でも重要な役割を果たしたと考えられている。その水は、どこから来たか。実は宇宙には水が豊富にある。水分子は酸素と水素でできているが、このうち水素は、宇宙がビッグバンで誕生した直後にできた。酸素は恒星内でつくられ、星が終末を迎えて爆発したとき、宇宙に放出されたとされている。宇宙での存在量は、それぞれ1位と3位。それが宇宙空間で結びつき、水になったらしい。


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