管理大変 デジタル資料
日々増え続ける紙の資料の整理に頭を悩ましている。何か画期的な方法はないかと思案していたら、ある友人が、身の回りの資料数千枚をスキャナーにかけてパソコンに取り込み、紙資料を一掃したという。片付いただけでなく、キーワードを打ち込むだけでお目当ての資料が即座に呼び出せるので「超便利」だと自慢する。
その時は感心した。しかし、国立国会図書館がこのほどネット上に公開した「電子情報の長期的保存とアクセス手段の確保のための調査報告書」を読んで、デジタル頼み一辺倒に大いなる不安を感じた。
報告書の内容を友人のケースに置き換えてみる。友人はパソコンが壊れた時に備えて別の記憶媒体にバックアップを取っておく必要がある。例えば、1年分毎(ごと)にCD―RОMに焼き付けて保存したとしよう。だが、デジタル技術は日進月歩なので、いずれ、そのCDをDVDやブルーレイなどに焼き直してやったり(マイグレーション)、OS(基本ソフト)が進化して従来のCDを再生できない場合、古いOS環境を仮想的に作るソフトを使って再生(エミュレーション)することが必要になる。
国会図書館では平成11年以前のCD―RОM200点を所蔵品から無作為抽出してこの二つを実験したところ、マイグレーションはほぼ問題なく出来たものの、エミュレーションでは、なんと7割!にあたる138点が元のようには再生出来なかったのだ。
こう見ると、国会図書館が取り組むデジタル資料の保存は容易ならざる事業である。本なら空調に気をつけておけば1000年後でも読める。でも、デジタルだと、技術進化に合わせて再生可能なように、年がら年中、手を加えなければすぐにただのゴミになってしまうのだから。「大変でも、この時代を映す文化を欠落させるわけにはいかない」とする担当者に心からのエールを送りたい。(ITジャーナリスト 島田範正)
(2005年7月19日 読売新聞)