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グーグル革命の波紋どこまで?日本のインターネット業界の寵児(ちょうじ)ともてはやされたライブドアのつまずきと対照的に、米国ではネット検索最大手グーグルの勢いが止まらない。記録的な成長はネットビジネスの世界ばかりか、他の業界も揺るがし、安全保障や文化の分野でも摩擦や懸念を生じさせている。2人の若者が1998年9月に設立して7年余り。シリコンバレー発の新たな「革命」とされるグーグル旋風の波紋はどこまで広がるのか。(ニューヨーク 大塚隆一) ■記録ライブドアに強制捜査の手が入り、株価の急落が始まった今月17日。米国ではグーグルがまた新たな事業計画を発表した。ラジオ広告会社の買収である。 翌日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは1面トップでこう報じた。 「グーグル、旧メディアの世界へさらに一歩。次の標的はテレビか」 創設者のサーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ両氏(共に32歳)は、それぞれ技術担当、製品担当の社長を務める。昨年9月には株式公開から1年2か月で時価総額が1000億ドル(約11兆7000億円)を超えた。過去最速の記録である。収入源の広告の売り上げもうなぎ登りで、今年は円換算で1兆円を超えそうだ。グーグルの国際展開にも拍車がかかっている。 ■秘密日本にもライブドアなど急成長したネット企業は多い。だが、グーグルは錬金術まがいの商法で水ぶくれした企業とは違う。 まず「検索」というネット革命の核心を押さえた。背景には技術力がある。 グーグルの検索はキーワードを入れると瞬時に結果が出る。数十億ページから集めた情報をこれほど速く処理できるのはなぜか。 米スタンフォード大のジョン・ヘネシー学長は「カギは世界最大のコンピューターシステム」と話す。と言ってもスーパーコンピューターがあるわけではない。普通のパソコンを10万台以上、巧みに組み合わせて実現したものだ。これが「最大の企業秘密」という。 大容量メールや衛星画像、ネット図書館など次々と繰り出すサービスも斬新で魅力的だ。それもすべて無料である。これも結果的に利用者を引き寄せ、広告収入の増加につながった。 ■軋轢急激な巨大化は様々な軋轢(あつれき)を生んでいる。 世界中の衛星画像が楽しめる「グーグル・アース」は紛争地を抱えるインド、イスラエルなどから「すべて丸見え。敵が利用する」と抗議された。メディアのネットニュースのさわりを紹介する「グーグル・ニュース」や世界の書籍の電子化をめざす「ネット図書館」は著作権侵害を問題にされ、訴訟が相次いだ。 個人情報をめぐる問題もある。月間約4億人の利用者の検索行動やメールの中身を見れば、その好みが分かる。こうした情報がグーグルには集積されている。史上例のない規模の市場調査システムとも言える。 ブライアン・ファフェンバーガー米バージニア大準教授は「グーグルはビジネスに転用しないと誓っているが、業績の低迷や経営陣の交代があったらどうなるか。その意味で怖い企業だと思う」と指摘する。 ■死角ペイジ氏は「創設7年で小学生になったばかり」と話す。検索技術の水準も目標の3割程度という。手綱を緩める気配はない。 だが、競争の熾烈(しれつ)なIT業界で勝ち続けるのは至難の業だ。巨人マイクロソフトも検索の重要性を悟り、必死に追い始めた。株価バブルと危ぶむ声もある。 グーグルに関する本を書いたワシントン・ポスト紙のデビッド・バイス記者は、死角があるとすれば、「おごり」と「広告収入だけに頼る危うさ」と話す。 ただ、グーグルがつまずいても、ネット広告の急増やあらゆる情報のオンライン化、それに伴う新ビジネスの誕生といった流れは止まりそうもない。別のグーグル本を出したジョン・バテル氏はこう指摘する。 「彼らはゲームのルールを変えてしまった」 「IT力」日米に大差IC時代の到来、パソコンの登場、インターネットの普及、そして検索エンジンの開発――振り返ってみれば、IT革命の根幹の技術はどれもアメリカ発だ。ネット広告などのビジネスモデルも大半は米国で考え出された。一方、日本のネット企業はほとんどが米国の二番せんじで食べている。 ITは過大評価すべきではないが、ライブドアショックで虚業と切り捨ててしまうのも間違っている。まず彼我の差の大きさを深刻にとらえるべきだと思う。 32歳の2人 “正義の誓い”サーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ両氏は1995年春、米スタンフォード大の博士課程で出会った。 ブリン氏はモスクワのユダヤ人家庭に生まれた。父親は数学の教授で、一家はブリン氏が6歳の時、自由を求めて米国に来た。 ペイジ氏も父親が米ミシガン大の情報科学の教授という学者一家の出身だ。 ともに金もうけに興味はなく、当初は広告の掲載もためらったとされる。株式公開時に当局へ出した文書では「邪悪にならない」「世界をよりよい場所にする」など異例の宣言をした。 同じ30代前半の堀江貴文前ライブドア社長とは対照的な、理想主義的な姿勢は資産がそれぞれ100億ドル(約1兆1700億円)を超える大富豪になった今も変わらない。夢は検索技術を遺伝子の解明にいかすことだという。 ただ、中国進出に際してはマイクロソフトやヤフーに続いて結局、自主検閲を受け入れた。競争激化と組織巨大化の中で創業の理念をどこまで貫けるのか。試されるのはこれからだ。
(2006年1月30日 読売新聞)
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