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デジタル時代の視聴率

スカパーなど、人気度把握に独自データ収集

 映画や音楽、スポーツから、囲碁、将棋、釣りなどの趣味まで――多チャンネルを売り物とする有料のCS(通信衛星)デジタル放送は、CATV(ケーブルテレビ)やスカイパーフェクTV(スカパー)などを通じて受信できる。

 衛星放送協会によると、この加入件数は今春、1000万件を超えた。しかし、これはあくまでも視聴可能な件数を意味する。

 地上波テレビのような視聴率調査は一般化していないため、どの程度見られているかはつかみにくい。

 そんな中で、300近くのチャンネルがひしめくスカパーでは、どの専門局が見られているかを知る手がかりとして、昨年末に導入した新パック「えらべる15」(月額2800円)が大きな役割を果たしている。

 加入者が「よくばりパック」(同3500円)の69チャンネルの中から15チャンネルを選ぶので、各局の順位が出る。視聴率とは異なるが、順位によって視聴料の配分金にも開きが生じる。

 田中晃常務は「視聴者は、見たい番組がないと加入してくれない。見られてこそテレビ。15局の中に選ばれるには、番組面で汗をかかないといけない」と強調。

 費用がかかる視聴率調査に頼らなくても、市場原理を導入できた点について「今のところ最も妥当なルール」と自負する。

 一方、CATV最大手のジュピターテレコム(本社・東京)は昨年末、関東・関西地区の各1000世帯を対象にして、独自の視聴率調査に乗り出した。

 多チャンネルを受信する際、加入世帯に設置される機器(セット・トップ・ボックス)を利用している。

 まだ実験段階のため、個別番組の数字は明らかにされないが、アニメの人気が際立つ。韓流ドラマは相変わらずよく見られ、日本の過去のドラマも支持されている。

 スポーツは内容によって差がある。例えば、プロ野球シーズン開幕とともにスポーツ専門局の数字が上がったという。

 加藤徹取締役は「米国では、専門局の視聴率も出される。日本もその方向に進んでほしい。そのきっかけとなるのが、うちの視聴率だ」と語る。この夏にも、データを各専門局に販売する方針だ。

 今や有料放送でも、CMが入るのは珍しくない。ジュピターテレコムによると、CATVの普及率が高い米国では、広告収入が売り上げの6、7割を占め、経営の安定に貢献しているが、日本の専門局では1、2割に過ぎない。

 加藤取締役は「専門チャンネルの広告市場は過小評価されている」と指摘し、同社の視聴率データを基にした営業活動の活発化を期待する。

 ただし、民放各局と同じく、視聴率によるCM獲得にこだわり過ぎることには、異論もある。

 BSフジの川口達也編成営業局長は「数量的な基準を示せばうまくいく、というのは幻想。スポンサーと一緒に面白い番組を考えるべきだ」と、地上波とは違う路線を模索している。

 地上波以外のテレビでも、番組の視聴率がわかるようになったら、視聴者にはどんなメリットがあるのか。

 メディアコンサルタントの西正・オフィスN代表は「『多くの人が見ている番組』と評価する材料になる。マイナス面はほとんどないだろう。そもそも専門局は制作費が安いため、民放各局が陥っている視聴率至上主義的な過当競争は起こらない」とみる。

 数多くの専門チャンネルの現状を客観的に把握するうえでも役に立つはずだ。むしろ人気度が判明すれば、それまで余り日の目を見なかった局や番組も、脚光を浴びる機会が生まれるかもしれない。

CATV
 地上波テレビやBS放送などをマスターアンテナで一括受信し、同軸ケーブルなどでサービス地域内の家庭に届ける有線放送。難視聴地域向けに地上波を同時再送信しているほか、CSデジタル放送も有料で見られる。ただし、全国の加入世帯2750万件のうち、デジタル化に対応しているのは1280万件にとどまっている(3月末、総務省などの調べ)。

ジュピターTVでは、腕時計式調査も

 専門チャンネル側でも、加入者の視聴実態について独自調査が始まっている。ドキュメンタリー専門の「ディスカバリーチャンネル」など八つの専門局を運営するジュピターTV(本社・東京)は昨年6月、ユニークな機械式調査の実験を行った。

 48の専門チャンネルを受信できる環境にある視聴者330人に対し、番組の音声だけを録音する特殊な腕時計を配る。後日回収して、その番組の音声と照合することで視聴率を算出する測定法だ。

 腕時計型にしたのは、調査対象になった家族一人ひとりの視聴状況(個人視聴率)を把握するためで、欧州ではすでに導入されている。この調査結果によると、1週間の視聴時間は平均4時間26分に上ったものの、実際に見られていたのは4局程度だった。

 有料の専門チャンネルがなぜ、測定に本腰を入れだしたのか。須藤修司リサーチ部長は「視聴率調査は番組内容を充実させるだろう。第一、視聴者がつかないところにはCMも入らない」と話す。

2006年6月29日  読売新聞)
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