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メディア多様化で新たな視聴率調査を模索この4月、携帯電話向けの地上デジタル放送「ワンセグ」が始まった。カーナビでも受信できる。さらに、テレビチューナーを組み込んだパソコンも珍しくなくなり、視聴形態は多様化する一方だ。 日本広告主協会、日本民間放送連盟、日本広告業協会の関係者らが21日、東京の電通銀座ビルで会合を開いた。「視聴率検討ステアリング・コミッティ」という検討会は、地上デジタル放送が三大都市圏で始まる前の2003年秋に発足した。 テーマは「デジタル時代の視聴率」。この日は、広告主協会から「新しいメディアを視聴率調査に加えるため、詳しい研究をしてはどうか」との提案があり、作業部会の設置を決めた。 広告主協会の電波委員長を務める永田圭司・キヤノンマーケティングジャパン常務も、委員の一人。「放送の変革期を迎えて、現行の調査で間尺に合うのかという問題意識が出発点」と説明する。 多くの広告主にとって、今の視聴率調査は物足りない点がある。商品によって、アピールしたい消費者の性別や年代は異なるが、今の調査システムではこうした属性を十分に把握できないからだ。 ビデオリサーチが個人視聴率の機械式調査を実施しているのは、関東、名古屋、関西の3地区だけ。年代別の集計は20〜34歳、35〜49歳、50歳以上と、15歳刻みだ。 このため、広告主の間には「個人視聴率の測定を全国に広げ、年代もせめて10歳刻みにしてほしい」という声がある。 簡単に「CMスキップ(飛ばし)」ができるハードディスクレコーダーの普及も、業界に波紋を広げる。昨春、野村総合研究所が行った調査は、スキップ率が平均64・3%で、損失額は年間540億円になる可能性を指摘した。 当時の日枝久・民放連会長(フジテレビ会長)が反論するなど物議を醸したが、「CMの効果を詳しく分析したい」という広告主の要望は強い。そんな中、ターゲットとなる視聴者を“狙い撃ち”できるメディアも登場した。 有線放送最大手のUSENが昨年4月から始めた番組配信事業「GyaO(ギャオ)」は、ブロードバンドを利用して、音楽やドラマなどの番組約1500本を無料で提供する。広告収入で運営され、今月には視聴登録者が1000万人を突破した。 ユニークなのは、登録者の性別や年齢に応じてCMを替えられる点だ。視聴時にCMを飛ばすことはできず、「BS・CS放送の数倍の広告予算を組んでいる」という生活用品メーカーも出てきた。 テレビCMとインターネット上のホームページ(HP)との連動で、宣伝効果を高めようとする動きも目立つ。 4月に続いて今月も集中的に放送された富士通の連動型CMは、人気タレント木村拓哉さんが「謎の地底人」と会話をする内容。同社のHPを開くと、地底人の着ぐるみを着た人物の正体が明らかになる。 「15秒のCMでは、商品の特徴を十分に説明できない。今の消費者はHPを見るのが当たり前になってきた」と、同社宣伝部の山口泰弘担当部長。このHPには、260万以上のアクセスがあった。 もっとも、広告主協会の永田電波委員長は「地上波の影響力は依然として強い。だからこそ、より良い視聴率調査のあり方を考えたい」と強調する。 視聴率の検討会では、地上波のアナログ放送が終了し、デジタル放送に完全移行する2011年をメドに、何らかの結論を出す構えだ。 視聴率は、2兆411億円に上るテレビ広告費(昨年、電通調べ)を左右するため、「通貨」とも呼ばれる。この通貨にもいつか、“切り替え”の時期が来るのだろうか。(この連載は解説部・鈴木嘉一、文化部・旗本浩二、川辺隆司が担当しました)
「質」測定も充実して音好宏・上智大助教授(メディア論)の話 ![]() 視聴率は調査システムの高度化によって、より精密なものに変わっていくだろう。信頼性と妥当性のあるデータが提示されることには意味がある。メッセージを効果的に送りたい広告主が、詳しいデータを求めるのは当然だ。テレビ局にとっても、視聴者の真の実態を知る重要なデータになる。 「視聴率至上主義」の弊害が指摘されて久しい。しかし、テレビ局が視聴者の反応を正確に把握し、番組制作に反映させれば、番組の質の向上が期待できる。視聴者と誠実に向き合うためのデータとして活用し、社会的責任を果たすことにつなげてほしい。 ただし、数字を独り歩きさせないためには、マスコミがデータの持つ意味をきちんと伝える必要がある。視聴者の「量」だけではなく、どう見られたかという「視聴質」を測る調査の充実も求めたい。 (2006年6月30日 読売新聞)
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