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メール感覚で“10分小説”作家歴13年の内藤みかさん(35)は、「ケータイ小説の女王」と呼ばれる。携帯電話で小説を有料配信する「新潮ケータイ文庫」で、恋愛小説「ラブリンク」を昨年まで連載したのがきっかけだった。 アクセス数1位を独走し、5か月でその数は150万にも。以後、ほかのサイトからも依頼が殺到し、一時は六つの携帯連載を同時にこなした。 「今は忙しくて、体が一つでは足りないほど。時間ができると、道端のベンチでパソコンを開くこともあります」 横浜市の派遣社員、三上亜紀子さん(35)は毎日、バス通勤の途中などに内藤さんの連載を愛読している。2年前までは文庫本派だったが、携帯小説の連載は、1回分を10分で切りよく読めるのが気に入っている。「メールに慣れているので、横組みの小説でも違和感はありません。毎回ヤマ場があって、いいところで終わるので、続きが気になりますね」 携帯画面で表示できるのは、100字強。紙の本のように、前のページに戻るのも楽でない。「50〜100字以内で改行し、登場人物は4人以内。情景描写もシンプルに」というのが、内藤さんの「ケータイ作家」としての方法論だ。 携帯小説の草分け、新潮ケータイ文庫は2002年から始まった。「文芸誌を作る感覚で運営していますが、会員数が3万人にまで増え、昨年から黒字になりました」と、新潮社出版部の中村睦さんは手応えを語る。好調の理由は、読者の特性をつかんだこと。 最初は文芸出版社の強みを生かし、作家の知名度で勝負しようとしたが、「書店に通う読者と違い、携帯の方は作家名をよく知らない人が大半。むしろ作品の面白さが重要と分かりました」。 内藤さんも書籍のベストセラー作家ではないが、携帯小説の主要読者である20代、30代の女性からは、感情移入しやすい主人公像が支持されているという。 携帯小説向けの作家発掘を目指す動きも、広がってきた。「文庫読み放題」を運営する角川デジックスは今年、「公募ガイド」誌と共催で、「タイトルが先だ!文学賞」を始めた。 小説のタイトルを募集後、それに合わせた掌編作品を募る逆転の発想は、携帯小説の読者は作家名よりタイトルで作品を選ぶ傾向が強いことから生まれた。同社の矢辺良太アシスタントプロデューサーは、「携帯で長編を読み切る読者は少ない。短い作品を書ける才能が欲しい」と話す。 一方で、ケータイをめぐる文学は、読書離れの若者を引きつけて、次々と新たな展開を見せる。携帯小説から出発したYoshiさんは書籍でベストセラー作家になり、携帯電話で小説を執筆した高校生が、書籍デビューを果たした。 米国の作家、バリー・ユアグローさんは、来日時に携帯電話でネットを見る若者の姿に衝撃を受け、2年前、ケータイ文庫で翻訳された78作の掌編を発表した。「米国でも同じことをやりたい。アニメなど日本文化に目を向けているこちらの出版社も、携帯小説に関心があると思います」 日本の「ケータイ文学」が、世界に広がる日も遠くはない。(文化部 佐藤憲一) (2006年7月11日 読売新聞)
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