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セカンドライフ

500万人が参加する仮想世界ゲーム

 欧米を中心に約500万人が参加するインターネット上の仮想世界ゲーム「セカンドライフ」が急成長している。3次元(3D)の街でアバターという「分身」を歩かせて、文字による会話を楽しみ、仮想通貨で買い物もできる。

 夏には日本版ソフトも登場する予定だ。ただ、仮想通貨は米ドルという現実の通貨と交換可能なため、仮想通貨を奪う詐欺行為が起き、仮想世界での商取引が現実の不正行為の隠れみのになる懸念も指摘されている。「第2の生活」の利用には十分な注意が必要だ。(経済部 宮崎誠、河野越男)

夏には日本語版も登場

 セカンドライフは米カリフォルニア州のネット企業、リンデン・ラボ社が2003年に開設した。同社のサイトから無料ソフトをパソコンに取り込み、ネットで接続すれば、誰でも簡単に「入国」して「第2の生活」を体験できる。

 「国土」はリンデン社のサーバー内に存在し、サーバーの増設でほぼ無限に拡張できる。2月時点の面積はシンガポールの約6割にあたる411平方キロ・メートルと開設当初の約6000倍に成長した。

 セカンドライフに入るソフトは、現在は英語中心の米国版だけだが、日本語による会話もできる。操作手順などが日本語表示される日本版のサービスが夏にも始まれば、現在は数万人とされる日本人の「入国者」も急増しそうだ。

 仮想世界では「リンデンドル(LD)」という仮想通貨が流通しており、リンデン社はネット決済などを通じて公式サイトで利用者の米ドルと交換する。交換比率は需給に応じて変化しており、7日現在は1米ドル=約270LD。19億LD(700万ドル相当)以上が流通する「リンデンドル経済圏」が形成されている。

企業の“進出”も盛ん

 ここで個人や企業は、リンデン社から仮想世界の「土地」(6万5000平方メートルの最大分譲単位で約20万円)を購入したり、他の利用者から買って、専用ソフトなどで様々な街を開発している。街には商店や飲食店、ディスコ、カジノ、賃貸・分譲マンションなどが立ち並ぶ。「不動産」取引などで得た仮想通貨を米ドルと交換して多額の利益をあげた海外の利用者もいるという。

 日本のネットベンチャー企業、ジップサービス(東京)はリンデン社から約160万平方メートルの「土地」を購入し、「シブヤ」「アキバ」などの地名をつけた日本人向けエリアを開発して日本人利用者のアバターを多く集めている。

 仮想世界を企業PRなどに利用しようと、IBMなどの欧米勢に加え、トヨタ自動車や日産自動車など日本企業の進出も活発だ。日産が昨年10月、巨大な自動販売機から缶ジュースのようにコンピューターグラフィックス(CG)の車を取り出して試乗する仕掛けを作ったところ、アバターたちの注目を集め、利用者は1万7000人に達した。

 米流通大手シアーズは仮想店舗を経由して実際の商品を販売・宅配するビジネスを始めた。将来はセカンドライフを介して現実の物品を購入するネット通販も広がりそうだ。

 ロイター通信は「セカンドライフ支局」を開設して仮想世界の出来事を実際の記者がアバターで取材、配信している。

仮想通貨のドル換金で資金洗浄の恐れ

 ただ、この仮想世界は必ずしも安全とは言えない。

 日本人向けエリアでも、不正なプログラムを使って会話の相手から手持ちの仮想通貨をすべて奪う詐欺行為があったという。カジノやアダルト向けコーナーは18歳未満の入場を認めていないが、年齢を偽れば出入りは可能で、青少年への影響が懸念される。

 仮想カジノについて、警察庁は「換金性がある仮想通貨を使って日本から賭博(とばく)サイトに参加すれば賭博罪にあたる」と見ているものの、捕捉は難しい。

 アバター向け商品の売買を装ってテロや麻薬売買などの不正資金をやり取りし、仮想通貨を米ドルに換金するマネーロンダリング(資金洗浄)が行われる恐れも指摘されている。

 税制面の問題もある。例えば、個人が仮想通貨による商行為で収入を得た場合について、国税庁は「少なくとも米ドルに換金した時点で雑所得などとして申告する必要がある」と話す。だが、アバターには匿名性があるため、税務当局が実態を把握するのは難しいとの見方が強い。

 こうした問題を放置すれば、やがて法の網をすり抜けた巨大な仮想世界が生まれる状況になりかねない。米議会は個人や企業が仮想世界で得た仮想通貨を資産とみなすかどうかなど、課税ルールの検討を始めた。

 境真良(さかいまさよし)・早大大学院客員准教授は「ネット世界の急速な進化に現実の法整備が遅れている。行政は早急に対策の研究に着手する必要がある」と指摘している。

可能性と危険性の両面併せ持つ

 セカンドライフの中でアバターを操り、空を飛んでみた。人形劇のような世界と思っていたが、現実に近い雰囲気に驚いた。米紙によると、仏大統領選の陣営がセカンドライフ内で論争するなど、最近は政治活動にも使われ始めている。

 仮想世界とはいえ、人々の記憶や「通貨」を通じて現実と生々しい接点を持つところに、このゲームの可能性と危険性がある。世界をつなぐ「新しいコミュニケーション手段」(デジタルハリウッド大学院の三淵啓自(みつぶちけいじ)教授)に育つのか、不正の隠れ家になるのか。ネット時代の秩序作りで知恵が問われている。(河野)

アバター
 インド神話に由来するサンスクリット語で「化身」を意味する言葉。インターネットによるオンラインゲームでは、利用者の分身キャラクターを指す言葉として使われている。「セカンドライフ」では容姿や服飾品を自由に選ぶことができる。
2007年4月9日  読売新聞)
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