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本紙記者、「セカンドライフ」に“入国”取材コンピューター・グラフィックスによるインターネット上の仮想世界で、現実世界のように立体的であり、人との交流や経済活動などができる「セカンドライフ(SL)」。最近では、政治家の事務所や報道機関の支局なども開設され、文字通り「第二の生活環境」として関心が高まっている。どんな世界なのか、実際にSLに入り取材を試みた。(笹沢教一、吉田典之) 議員事務所 現実さながらSLは4年前に公開サービスを開始、住民(登録者)は700万人を超えた。日本人は4〜5万人。一般住民のほか、各国の企業や米海洋大気局、スウェーデン大使館などの政府機関も出先を開設。映画製作や新聞、雑誌も発行されている。仮想通貨による土地取引なども行われている。 記者(笹沢)は、まずSL内に開設されたロイター通信の支局へ。 3階建ての建物にはニュース速報が掲示されるパネルが5か所に。こうした企業や政府機関の出先はたいていそうなのだが、案内係の姿もなく、無人のショールームのよう。速報には一般ニュースに混じって、「SL発」の項目もあり、訪問者の動向やソフトの関連情報などを配信している。 先の仏大統領選では、候補者が選挙事務所をSL内にも開設。ネット選挙の新しい形として話題を呼んだ。日本でも民主党の鈴木寛参院議員が今年4月に事務所を開設した。話を聞くため、今度はDaifuku島にある事務所へ飛んだ。 室内にはポスターが張られ、選挙事務所風。開設以来、メディアから反響が多数あったが、実際にSL内で取材が行われるのは初めてだという。 本人に似せた眼鏡にスーツ姿の鈴木議員のアバター(分身)が現れた。互いに頭を下げてあいさつを交わし、チャット機能で質問をする。 笹沢 開設の動機は? 鈴木 旧通産省時代から電子商取引の実験などにかかわってきた。ネットゲームと同様に、いずれ3次元の時代になることはわかっていた。SLは新世代のデジタル環境。新たな社会実験をしようと思った。 笹沢 どんな活動を? 鈴木 今月2日に演説会を行った。会場からは政策提案など、かなり具体的な反響が寄せられた。海外の訪問者と捕鯨などの議論をしたこともある。 笹沢 手応えは? 鈴木 現実世界の要素とデジタル技術の併用で、議論の質が非常に上がる。 「住民」カジノなどに集中それにしても、常時数万人が接続しているというのに、どこもあまり、人影を見かけない。近くにいたTシャツ姿のドイツ人男性に尋ねてみた。すると「カジノやストリップのような場所に人は集まるものさ」。 実は人気が高いのは、こうしたアダルト系で、過激な内容の規制もささやかれるほど。経済活動を支える多数のショッピングモールも、より魅力的な体のパーツや下着、入れ墨を販売する店が目に付く。 立体表示をするためにパソコンに高性能が求められる点や操作の複雑さ、何かとお金がかかることも課題として指摘される。果たして普及するのだろうか。 現実世界に戻り、昨年、セカンドライフ研究室を設置したデジタルハリウッド大学院(東京)の三淵啓自室長に尋ねた。「現在は、インターネットの草創期に似ている。SLの優れた点の理解が進めば、普及に弾みがつくはず」との見方だった。 批判や「日本にはなじまない」といった冷ややかな見方がある一方、着る、手に取るなど、従来のウェブにない操作感に需要を期待する声は大きい。日本でも3月に公開試験運用を開始した「スプリューム」や、アダルト排除を掲げ、仮想空間にもう一つの東京を作る「ミート・ミー」などが参入した。 スプリュームの場合、閲覧には提供元の無料ソフトが必要だが、自分自身のホームページを立体表示でき、土地の取得や使用料などは不要だ。スプリューム社の梶塚千春社長は「だれでも自由に作り、ネットに公開できる、よりオープンなシステムだ」と話す。 野村総合研究所が先月発表した「ITロードマップ」は、現状を仮想世界サービスの黎明(れいめい)期と位置づけ、本格普及は再来年と見る。2010年ごろには携帯電話にも波及、複数世界が競合する時代を迎えるという。まるでSFのようだが、仮想世界への進出は止まらない流れのようだ。
(2007年6月24日 読売新聞)
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