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(1)ネット上に「理想の自分」ヒュー、ヒュー。風の音が鳴り、レンガの建物の間でヤシの木が揺れている。その向こうには、青空と打ち寄せる波。パソコンのキーを打つと、画面の中の人物が砂浜を歩き出した。 立体感のあるコンピューターグラフィックス(CG)で描かれた都市などの「仮想世界」を舞台に、映像や音楽を配信したり、商品を売買したりするインターネット上のサービス「セカンドライフ」の一場面。画面の人物は、アバター(分身)と呼ばれ、この世界で本人の代わりをしてくれる。実際に操作してみると、自分が異国の町を歩いているような錯覚に陥る。 セカンドライフは欧米を中心に人気を集め、先月、利用登録者が1000万人を突破した。複数の島に分かれた仮想世界には、利用者が開設した店や建物、絵画などの作品が並び、企業の出店も増えた。 昨年10月、セカンドライフ内に支局を開設したロイター・メディア社のクリス・エイハーン社長(40)は「第一に次世代の読者を意識した戦略。市場や金融の動きがある場所はそれがどこであれ、ロイターが乗り込んで報道する場所だ」と語る。 その魅力は、実際の風景に近いCGを使い、より現実味のある疑似体験ができる点だ。利用者は理想の容姿のアバターになって、自由なファッションや高級車の運転を楽しむ。 米インディアナ大のエドワード・カストロノバ准教授(44)は「人々が自分の“ファーストライフ”にいかに失望しているのか、よく分かる。皆、自分が暮らす現実世界とは違った世界を自由に描きたがっている」と話す。 ◇ セカンドライフ内で、仮想ロックバンドのギター兼ボーカルとして活動するジェッツ・フライドさん(27)の現実の姿は、名古屋在住の会社員。仮想世界では、この別名を使う。8月に開いたライブは、全世界に中継され、2000人が聞いた。 セカンドライフでは、楽器を弾く動作をするアバターと、別に作った音声データを合わせることで、仮想バンドが組める。 セカンドライフ内での音楽活動は今年4月から。バンドには「音楽をやりたいけれど、現実世界ではできない」という仲間が集まっている。フライドさんも、実際のバンド経験はない。 「楽器ができない人でもステージに上がれる」。手応えを感じたフライドさんたちは来月26日、セカンドライフに集まるミュージシャンを集めた「紅白歌合戦」を企画している。 ◇ グーグルやディズニーなどの企業は、次々と独自の仮想世界設立に動いている。米国の統計では、すでに、ネット上に80を超す仮想世界が存在するという。 多くの可能性が期待される一方で、セカンドライフには過激な性表現やギャンブルが氾濫(はんらん)し、警察も監視を強めている。リンデン社のフィリップ・ローズデール最高経営責任者(38)は、年齢確認や利用者追跡のシステム導入を明らかにし、改善を約束した。期待された経済活動も目新しさ先行で未知数の面がある。 2、3年のうちには、技術革新によって、より表情豊かで、人間に近いアバターも登場すると予測されている。現実世界では、話し手がうそを言えば、表情などに変化が出て気づくかもしれないが、仮想世界にそれはない。詐欺などに悪用される可能性を指摘する専門家もいる。 CGで作られた実体のない「現実」がそこにはある。注目の新技術は、どこへ向かうのか。 ◇ 国内外の最新事情を交え、仮想世界の課題や将来像について考える。
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