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情報格差解消へ、文章の音声化ソフト開発確固たる意志とそれに伴う明確な思想、そして、他の追随を許さない技術力さえあれば、たとえ一人でも世界を相手にビジネスチャンスをつかむことができる。しかもそれが、世界中の弱者に生きる喜びを与える分野で、という夢のような話も散見できるのがIТ界の特徴だ。 栃木県宇都宮市のスカイフィッシュ(大塚雅永社長)が開発、販売を開始した文章音声化ソフト“JukeDoX”(*1)がまさにその好例だ。 「ワード」や「エクセル」「パワーポイント」など様々な文章ファイルを音声読み上げ再生。送り・戻し・一時停止などオーディオプレーヤー同様の基本操作はもちろん、複数の文章ファイルを「プレイリスト」に登録しての並べ替え再生なども可能だ。 こうした機能は、視覚障害者に無限の利便性を提供するのはもちろん、健常者にとっても携帯端末を経由しての勉強や仕事、「悲しい」「うれしい」などといった感情表現を伴った読み上げ方もできることから、アイデアによってはエンターテインメント系利用など、様々な場面での利用が可能といえる。 「私がIТ関連の仕事を始めたのと、パソコン、インターネットが世の中に広がっていく時期が一致していました。世の中の情報格差、特に弱者のそれを間近に見るにつけ、どうにかしたくて仕方がなかった」 栃木県の第三セクターで視覚障害者を対象としたソフトの開発・販売に従事していた大塚さん、全盲のマイクロソフト社員とアメリカに出張する機会があった。その際、現地で「食事でも」と、彼をホテルの部屋に迎えにいったのだが、「その部屋が真っ暗だったんです。彼らの世界とはこれほどの“闇”なのか。何か手助けはできないものか、と本気で思いました」。パソコンやインターネットが障害者に与えることができる利便性、そしてその可能性に賭けてみようと決心した瞬間だった。 きっかけは“飛び込み営業”マイクロソフトに限らず、欧米の企業の評価すべき特徴は、その杓子定規ではない社会的弱者に対する姿勢にある。「社会貢献」とお題目を唱えるだけの、日本企業との差異は明白だ。 2007年1月30日。ビスタが世界に向けて発表された日に、スカイフィッシュも「Focus Talk」というビスタ対応のスクリーンリーダー(画面読み上げ)ソフトを発表した。ここへ向けた開発の背景にはマイクロソフトの全面的バックアップがあった。「実はその開発前、既に会社を辞めて自分なりに情報格差に取り組もうと、全くの個人として、マイクロソフトに協力を依頼しました。同社には『その辺りの話はあまり口外しないでくださいね』と言われているんですけれどね」 アクセシビリティー(*2)の向上を経営理念の大きな柱の一つとするマイクロソフトと、世の中の情報格差解消を究極の目標としたソフト開発を推進したい大塚さんの方向性がタイミング良く合致したのだ。一個人が世界的企業から一種の「全面協力」を取り付ける。それも、最初のコンタクトが“飛び込み営業”みたいなものだった、というのだから恐れ入る。 大塚さんの志に、勤め先を辞して協力してくれる若手研究者もはせ参じた。「会社は宇都宮にある普通の家の6畳二間だけなんです」と謙遜するが、「この機能を携帯電話に搭載したり、世界の主要言語で利用可能なものに発展させるのが、とりあえずの目標です」と熱く語る。 実際にデモンストレーションしてもらうと、視覚障害者や高齢者のネット利用に最高のプレゼントとなりそうだ。大量に買い上げて配布しようという太っ腹な企業はないものだろうか。(編集部・飯村毅/2008年5月24日発売「YOMIURI PC」2008年7月号から) *1 ジュークドックス。製品版は1万8900円。ソフトの体験版や購入は次のURLから。http://www.skyfish.co.jp/ *2 障害のある人や高齢者などすべての人が等しく情報を利用できること。 (2008年6月26日 YOMIURI PC)
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