第14回 ドイツと中国の会計システムを共通にせよ
システムより戦略も大切
中国やインドでモノを作るだけでなく売っていこうと考えるなら、業務システムのグローバル対応は必須だ。しかし、日本アイ・ビー・エムの執行役員で業務システムの導入をコンサルティングしている富永満之さんは、「本当はシステムよりグローバル戦略の方がより重要」と語る。新興国攻略に欠かせない戦略とはいったいどのようなものなのだろう。前回に引き続き、富永さんの話に耳を傾けてみよう。
日本アイ・ビー・エム
エンタープライズ・アプリケーションズ
執行役員 富永満之さん
富永さんのところにはグローバル企業と呼ばれる大手外資系企業から、日本の拠点に「エンタープライズ・アプリケーション」と呼ばれる大規模な業務システムを導入したいという案件が持ち込まれる。最近の傾向として富永さんが強く感じているのが「導入企業の業務システムに対するガバナンス(統制)の強さ」だ。
「導入企業が日本向けの細かい仕様変更を嫌がるケースが増えている。こういう風に入れてほしいとか、このようなプロセスにしてほしいと、世界共通の仕様を具体的かつ強烈に言ってくる」
さらに、システム導入だけでなく、世界共通の業務システムを使うことの利点を実際に使う日本の従業員に対して説明し、説得してほしいとまで依頼してくる。
IBM本社の方針で、というならまだ分かるが、ユーザー企業自身がローカルでの仕様変更を強く拒否してくるのだ。富永さんはこういった企業には確としたグローバル戦略があると見ている。
業務システムを世界で共通化する利点は、前回、紹介したとおりだ。しかし、実際には国によって法律や税制、公文書の書式、商習慣なども異なっている。業務システムを共通化するといっても限界があるのではないだろうか。
IBMは現在、業務システムを見直しているさなかにあり、販売会計用システムを世界全体で共通化しようとしている。ソフトウエアには同社にとって2度目の導入となるSAPという業務システムを使い、サーバーなどのハードウエア構成も見直している。
IBMは世界170カ国に拠点があり、売上高は10兆円に達する。これだけの規模の企業の販売会計システムを世界で共通化するのは、当のIBMにとってもほとんど前例のないこと。同社では、先進国で適度な市場規模があるドイツと、現在、同社がもっとも注目している市場である中国から、販売会計システムの切り替え作業に着手している。ドイツと中国で切り替えに成功すれば、世界全体のシステム共通化もめどが立つというのが同社の目算だ。
先進国ドイツと新興国中国の販売会計システムというと、ずいぶんと違う内容になりそうだが、IBMではシステム全体の95%を共通化することを目標にしている。製品の価格設定などには柔軟性を持たせるが、請求方法や契約方法などはグローバルで統一し、現地の事情に流されないよう徹底している。
「そこまでやらないと効率化の成果はでない。IBMの取り組みが成功するかどうかはまだ答えが出ていないが、我々はそういう体制で進めている」
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