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「デジタルメモ」を新たな文化に

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立石 幸士  たていし・たかし
キングジム「ポメラ」開発リーダー
1972年、島根県生まれ。東京電機大卒。厨房機器メーカーの研究職を経て、1998年キングジム入社。開発本部電子文具開発部に所属し、ITを活用したオフィスシステムなどの開発に従事。2007年から現職。

 文房具メーカー・キングジムが2008年11月に発売した、テキスト(文字)入力専用機「ポメラ」が人気だ。本体は背広の内ポケットに入るサイズながら、折りたたみ式キーボードはノートパソコン並みの大きさで操作しやすい点が評価されている。インターネット接続もメールもできない単機能ツールを世に出した狙いを、開発リーダーの立石幸士さんに聞いた。

テキスト入力に特化したこだわりの文具

――開発のきっかけは?

 立石 私もかつてはB5サイズのノートパソコンを持ち歩いていましたが、外出先ではワードで文章を書く程度。大げさで不満がありました。そこで、持ち歩いても苦にならないテキスト入力専用機をつくってみようと思い立ち、アイデアを紙1枚に書きまとめたのが2007年6月ころです。

 携帯電話と違って素早い入力に不可欠なキーボードは折りたたみ式、画面は小型のモノクロ液晶、電源はコードの不要な乾電池、重さは持ち歩くのに苦にならない400グラム以下。余分なものは削ぎ落とすが必要なものは譲らない、そういう考えでした。

――社内での反応はどうでしたか。

 立石 上司や同僚は「おもしろいね」と言ってくれました。ただ、超小型パソコンや電子辞書と同じに見られるようでは、文房具メーカーが作る意味がない。新しいスタイルの「デジタルメモ」として、キングジムならではの文房具として、商品化したいと考えました。

――通信機能などの搭載は考えなかったのですか。

 立石 開発段階でも、通信機能やスケジューラー、ブラウザーを入れた方がいいんじゃないかという声はありました。私自身も「メールくらいできた方がいいかな」と少し不安はありましたが、あえて最初のコンセプトに戻り、そこからぶれずに進めることにしたのです。

――IT機器との違いは何ですか。

 立石 文房具ですから、機能はシンプルでも質にはこだわっています。例えばボールペンは書くだけの機能しかありませんが、すぐに色がかすれたりインクが漏れたりするようだと、買った人に使ってもらえなくなるでしょう。

 ポメラの本体は常時携帯に耐えるだけの強度を持っていますし、表面のラバーの質感にもこだわりました。重さは370グラムにまで絞り込んでいます。折りたたみ式のキーボードは、2万回の開閉と300万回の打ち込みが可能な耐久性を持たせました。小さくても打ちづらければ論外ですので、キーピッチはノートパソコン並みの17ミリを確保し、押し下げ圧も軽快な感触が得られるよう工夫しています。

 その分、コストはかかりましたが、パソコンと使い比べても大きな違和感はないと思います。機能がシンプルであるがゆえに、こだわりのある文房具にしたつもりです。

2009年2月5日  読売新聞)
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