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目標は売上げ倍増、カギは新規事業
杉本 哲哉 すぎもと・てつや
株式会社マクロミル代表取締役会長兼社長 1967年、横浜市生まれ、早稲田大学社会科学部卒。1992年、リクルートへ入社し、財務部、デジタルメディア部などを経て、2000年1月、株式会社マクロミルを設立。代表取締役社長、最高経営責任者などを歴任。2006年9月、取締役ファウンダー就任。2009年7月1日、代表取締役会長兼社長に就任予定。 インターネットを使ったリサーチ会社「マクロミル」の創業者・杉本哲哉さんが、7月1日、3年ぶりに代表取締役会長兼社長に復帰する。「再ベンチャー宣言」の下、既存の事業を強化し、新たな事業創造にも乗り出す。 トップ交代で創業時の精神復活を――今回のトップ復帰の背景は何でしょう。
杉本 3年前に社長を退いた後、会社は「第2の創業」を掲げ頑張ってきました。しかし、人は100人増えたのに、2009年6月期の業績予想では、前期に対して売り上げは3億円の増加にとどまる程度。「マクロミルは一部上場で、ネットリサーチ業界トップだ」という気持ちで入社してくる新卒社員もいる。これは、由々しき問題だと思いました。ベンチャー精神を大切にやってきた会社が、創業わずか10年でその精神をなくしつつあったのですから。これではいけない、創業時の気持ちに立ち返ろうと、今回の人事を断行しました。チームのキャプテンを代え、スピードを上げ、新規事業の芽を早く出そうと考えています。 ――目標は何でしょう。
杉本 売上高の倍増です。2008年6月期の業績では、子会社と合わせた売り上げは74億円。市場におけるシェアは約20%です。ネット調査市場は今後成長するでしょうが、おそらく500億円程度が限界でしょう。その中でこれまでと同じシェアを維持するには、100〜120億円の売り上げが必要です。しかし、それだけでは不足です。そこで、ネットリサーチと同じくらいのインパクトがある新規ビジネスが必要だと考えています。 ――具体的な計画はあるのでしょうか。
杉本 はい。新しいビジネスは、ITとマーケティングを掛け合わせた中に存在しています。我が社は、かつてIT化していなかったリサーチ事業の中で、ネットの世界でモニターを集めることの利点を示し、拡大してきました。新事業でも、IT化が進んでいない業界に対して、IT化した時のメリットを提示できたらよいなと思っています。我々には、これまで累々とノウハウを積み重ねてきたシステムがある。このシステムを応用したいと思っています。 ――時期はいつごろを考えてますか。
杉本 今年ないしは来年中に、きっちり世間に発表したい。現在のネットリサーチ事業は、10年かかって60億〜70億円に成長させました。次のビジネスもそのくらいのスパンで育てたいと思っています。 社員とともに成長したい――3年前に退任した時のことを聞かせてください。
杉本 代表を退任したのは2006年9月で、東証一部に上場した1年半後でした。それまでは会社を大きくすることが最優先。自分で選んだ中途採用者を中心に、猛烈なスピードで事業拡大を進めてきました。しかし、上場をきっかけに、新卒を定期的に採用するようになり、人をじっくり育てて大きな組織を率いるには、もっとふさわしい人がいるのではないかと思うようになりました。さらに、私は会社の筆頭株主でもあったのですが、創業者が急にいなくなって屋台骨が揺らぐような会社では困る。一部上場してからは、自分以外の人間がトップになっても滞りなく経営できる企業になることが理想だと考えていました。 ――代表に返り咲くことは考えていましたか。
杉本 ほとんど考えていませんでした。ただ、今振り返れば、いつも会社の代表のような気持ちはもっていました。これは、ベンチャー企業のオーナーの宿命じゃないでしょうか。取締役会のメンバーでもあったので、経営の重要事項を決定する際にはいろいろと意見も述べてきました。後任の代表取締役2人にはやりにくかった場面もあったのではないでしょうか。 ――改めて執る社長の職務はどうなりそうですか。
杉本 モノの伝え方などで、私自身がやり方の変更を余儀なくされそうです。ここ3年で、社員構成がずいぶん変わりました。かつては中途入社組が多かったのに、今では毎年30人ほどが新卒で入ってきています。今は25歳以下の社員が100人くらいいます。以前と同じように社員を厳しく叱咤激励しても、響き方は全く異なるでしょうね。これからは、社員とともに成長していこう、という気持ちで経営してゆくつもりです。 悶々と考えているだけではだめ――どこから手をつけますか。
杉本 実は、すでに始めているのですが、私自身が"浦島太郎"にならないように、数十人の社員をアットランダムに集めて面談をしています。「ビジョン面談」と呼んでいます。こういう社員が入ってきているんだな、こういう風に考えて仕事をしているのだなということがわかってきました。これから、全社員の前で私の考えていることを繰り返し話していこうと思っています。社員にプランを説明して、その反応を知りたいし、議論をしたい。これが今一番やりたいことです。もちろんお客様の声を聞きたいし、株主の皆さんとも話がしたい。欲張っていますが……。私が悶々と考えているだけでは良くない。 ――最近、早稲田大学や法政大学で、経営を学ぶ学生たちに教えているそうですね。
杉本 彼らに接してみて思うのは、頭一つ、いや半分出るのも拒むこと。しかし、人から遅れることもいやがります。その傾向は、経済同友会の教育問題委員会の一人として活動する中で接した中高生にも見られます。どちらも、景気が良い時代というものを経験したことがない。戦後の高度成長期には、皆が一様に豊かになっていったという経験がありますが、それがまったくない。今の若い人たちはものすごく要領は良いし、勘は鋭いし、ネット世代ですから情報のありかを見つけるのもとてもうまい。しかし、知識を蓄積するというよりも、その場その場で終わっているような気がします。国に対して希望を持っている人が少ないのも、悲しいですね。(敬称略)(メディア戦略局・丸山典昭) (2009年6月30日 読売新聞)
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