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ネット音楽配信がCD店の売り上げ飲み込む米CD・レコード販売「タワーレコード」を経営するMTS(カリフォルニア州サクラメント)が22日、米連邦破産法第11章(日本の民事再生法に相当)の適用を申請して破たんしたのは、インターネットを使った音楽配信に顧客を奪われた結果だ。老舗レコードチェーンの暗転は、ネット社会の進化と旧来型の店頭販売の衰退を象徴している。 (ニューヨーク支局 北山文裕) ■10億曲 CD店で、好きなアーティスト、歌手のレコードやCDを買うというスタイルは、世界的な音楽配信サービスの普及で大きく様変わりした。インターネットなどを通じて好きな曲を購入し、パソコンなどに取り込んで楽しむ人がどんどん増えている。 タワーレコードの破たんは、そんな新しい時代の始まりに起きた。 2003年4月に米国で始まったアップルの音楽配信サービスは今年2月に10億曲の大台を超えた。おしゃれで手軽に音楽を“持ち運べる”アップルのデジタル携帯音楽プレーヤー「iPod」シリーズは若者に大人気だ。 1曲99セントの低価格を武器に販売を拡大し、米国では昨年7〜9月期にアップルの販売曲数がタワーレコードを上回った。 国際レコード産業連盟(IFPI=本部・ロンドン)によると、05年の世界のCD販売は前年比6%減の170億ドルに減少したのに対し、音楽配信などのデジタル販売は約2・9倍の11億4300万ドルと急増している。 ■「融合」出遅れ 一方で、旧来型の店舗販売は不振の色が濃い。米CD販売業界では今年1月、米国に約800店舗を持つ「ミュージックランド・ホールディング」(ミネソタ州)が破たんした。同業の「トランスワールド・エンターテインメント」(ニューヨーク州)が店舗の半分を買い取った。しかし、トランスワールドでもCD販売は低迷しており、オーディオ機器やゲームの販売に移りつつある。 1960年創業のタワーレコードは2004年の1度目の破たん後、直近1年間の既存店売上高は約10%減と低迷を脱却できなかった。 最近では音楽配信サービスも開始し、店頭でCDを購入した顧客に無料ダウンロードを提供するなど、店舗とネット販売の融合を図っていたが、出遅れは挽回(ばんかい)できなかった。 ■異業種参入 全世界で提供されている音楽配信サービスは約340。先行するアップルに対抗する動きも活発だ。 米ウォルマート・ストアーズなど異業種も参入し、米マイクロソフトは年内にも独自の携帯音楽プレーヤーを販売する。 フィンランドの携帯電話機大手ノキアは今月、米音楽配信会社を約6000万ドルで買収すると表明した。来年中にも携帯端末向けに自社ブランドでの配信サービスに参入する見通しだ。 国内もネット配信が全盛インターネットによる音楽配信サービスは、国内市場でも成長が著しい。日本国内の2006年上半期(1〜6月)のネット音楽配信の売上高は、前年同期比74%増の247億円と大幅に伸びた。一方で、CDなど音楽ソフトの05年度の国内生産額は4313億円と、ピーク時の1998年度から約3割も落ち込んでおり、音楽販売はネット全盛時代を迎えている。 国内のレコード・CD店には、規模拡大やネットとの融合で生き残りを探る動きが活発だ。 書籍販売やCDレンタルなどの複合店「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、05年に「ヴァージン・メガストアーズ・ジャパン」(CD・DVDの年間売上額92億円)の全株式を買収した。 CCCは今年、業界2位の新星堂(656億円)、6位のすみや(150億円)とも相次いで資本業務提携を結んだ。CCCは「音楽ニーズは減っていない。シェア拡大を通じて、物流の効率化などが図れる」としている。 米タワーレコードから独立したタワーレコード・ジャパンは、携帯電話最大手のNTTドコモとの関係を深めている。 ドコモがタワーレコード・ジャパン株の約4割を取得したのを機に、今秋からインターネットの専用サイトで音楽配信事業を始め、携帯電話への音楽配信事業も検討する。 従来の店舗販売を駆逐するネット音楽配信の勢いに、携帯電話やパソコンに習熟していない高齢者らが音楽から遠ざかるとの懸念もある。 だが、レコード小売業者の間には「ネット配信で音楽を聞く若者はまだ一部。高齢者などインターネットに接することのできない層もいる」と店舗の存在意義を強調する声は根強い。 インターネット上で購入した曲の代金を決済することに不安を覚える消費者も多く、あるCD小売業界の関係者は「このまま店舗販売がなくなることはありえない」と語気を強めている。(経済部 永田毅) ◆関連記事「ネットとケータイの配信ビジネスが急伸」(8月16日)はこちら ◆関連記事「音楽はCDよりネットで買う時代に――本格普及を妨げる配信規格の不統一」(5月11日)はこちら (2006年8月24日 読売新聞)
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