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ソニー、消費者の安全対策に遅れ

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売り場に表示されたソニー製のパソコン用充電池回収の知らせ(29日午後、都内の家電量販店で)
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リコール対象になったソニー製充電池(デル提供)
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 ソニーが、発火などの不具合を起こしたものと同一タイプのノート型パソコン用の充電池(リチウムイオン電池)を全面回収すると発表したのは、事態を早期に収拾しなければ、世界中のパソコン利用者に不安を与え、ブランドに決定的な傷がつきかねないとの危機感からだ。(経済部 下宮崇、松原知基)

 しかし、ソニーは、問題の充電池を搭載している自社製パソコンですら、どの機種が不具合のある電池を搭載しているか情報を公開しておらず、対応の遅れが目立つ。巨額のリコール負担も重なり、経営再建の途上にあるソニーの経営にとって大きな打撃となりそうだ。

対応に消極的

 8月に最初の不具合が発覚して以降、ソニーの対応はあまりにお粗末だった。

 8月14日に米デル製パソコンの発火事故が発覚すると、ソニーは「製造中に充電池に混入した微細な金属粒子と、デル独自の充電回路の組み合わせが原因だ」と説明し、トラブルはデル製にとどまるとしていた。

 8月24日に米アップルコンピュータ製パソコンで同様の不具合が見つかった時も、「これ以上の回収が行われることはない」とのコメントを発表した。

 ところが、9月に入って中国のレノボ(旧IBMのパソコン部門)でも発火事故が起こるなど事態はソニーの説明とは逆の方向に向かった。インターネット上ではソニー製充電池を搭載したノートパソコンが火を噴く様子の映像が世界を駆け巡った。

 米国ではテロ防止対策で飛行機内への私物の持ち込みが次々と厳しくなる中で、「ノートパソコンの機内持ち込みが全面禁止されるのではないか」とのうわさも広がった。

 「当社は部品メーカーの立場。対応はパソコンメーカーに委ねるしかない」と対応に消極的だったソニーも、さすがに危機感を募らせ、「消費者の不安を払しょくすることが先決」と、全面回収に踏み切った。

 しかし、全面回収を決めた後も、ソニーはネット上で資料を発表するだけで、公の場で責任者が説明と謝罪をしていない。人命にもかかわる製品安全に鈍感で情報開示に消極的な企業体質が露呈した格好だ。

調達の見直しも

 リチウムイオン電池は、1990年代初頭にソニーが初めて実用化。高電圧化や小型化が容易なため、パソコンや携帯電話用の充電池として需要が拡大している。ソニーは世界シェア(占有率)で2位で、供給先は数十社に上る。

 充電池の全面回収によるソニーの経営の打撃は大きい。問題のリチウムイオン電池を生産した福島県の生産子会社は、市場拡大を見込んで2004年に設立したばかりだ。子会社の売上高は04年度の1500億円から、06年度は1700億円に拡大すると見込んでいたが、今回の問題で見込みは大きく狂いそうだ。

 また、ソニー製品の品質への信頼低下が広がる恐れもある。8月のトラブル発覚直後は、デルや東芝、富士通などの主要顧客はソニーからの調達を継続する方針を示していた。しかし、9月29日にレノボ、東芝、富士通がソニー製充電池のリコールを発表したことで、ソニー製充電池の調達が見直される可能性もある。

再発防止へ技術力低下の壁

 

 今回のトラブルについて、ソニーは、単純な製造ミスで「すでに再発防止策は徹底した」とする。

 しかし、ソニーが戦略商品として11月に日米で発売する次世代ゲーム機「プレイステーション3」でも、9月6日、次世代DVD「ブルーレイディスク(BD)」の基幹部品の量産が遅れ、欧州での販売延期と日米での販売台数の大幅減に追い込まれている。

 ソニー・コンピュータエンタテインメントの久多良木(くたらぎ)健社長は「ソニーのものづくりの力が落ちていると問われれば、今日の時点ではその通りと言うしかない」と品質低下を認める。

 ソニーの中鉢(ちゅうばち)良治社長は05年の社長就任後、「現場重視」を経営方針に唱えているが、リチウムイオン電池は中鉢社長のかつての担当事業でもある。今後、ソニー経営陣の責任問題が浮上する可能性もある。

消費者軽視の批判免れない

 「これ以上のリコールの拡大はない」とのコメントを繰り返してきたソニーがリチウムイオン充電池の全面回収に追い込まれた。

 これまでソニーは、納入先のパソコンメーカーへの配慮を理由に積極的な情報公開を渋ってきたが、発火事故は人命にかかわる可能性もある。消費者軽視の批判は免れない。

 利用者の間では、ソニー製品は一定期間、使用すると「ソニータイマー」が働いて故障すると指摘する声もある。信頼を取り戻すため、ソニーはもう一度製造業の原点に戻るべきだ。(下宮)

リコールを行うメーカーの問い合わせ先

デル 0120-198-437

アップルコンピュータ 0070-800-27753-1

レノボ 0120-277-874

ソニー 0570-00-3311

※ソニーはお客様ご相談センター。東芝、富士通は未定

2006年9月30日  読売新聞)
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