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児童ポルノ「日本発」の批判、交換ソフトで拡散インターネットでの児童ポルノ拡散事件が、埼玉県警に摘発された。ファイル交換ソフトが悪用され、被害は国境を越えて瞬く間に広がる。 一方、今の法律では取り締まりが難しく、捜査は難航。日本は「児童ポルノ大国」と海外から批判されており、規制や捜査強化が求められている。(さいたま支局 森下義臣、水野祥、地方部 森広彰) 捜査の端緒は南米から「児童ポルノが日本の20か所から世界に発信されている」。埼玉県警の捜査の端緒は、ブラジル捜査当局からもたらされた。捜査は半年に及び、今月5〜12日、男3人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供目的所持)容疑で逮捕した。 ネットに横行する児童ポルノを封じ込めようと、第3回「児童の性的搾取に反対する世界会議」が25日から、約130か国が参加してブラジル・リオデジャネイロで始まる。国際刑事警察機構(ICPO)を軸にした捜査が、会議に呼応するように、日本など70を超える国で展開中だ。 前回2001年の横浜会議以降、日本は「児童ポルノの発信基地」と不名誉なレッテルを張られた。国際NGO(非政府組織)の集計で、日本は米、露に次いで児童ポルノサイトが多い。法整備も進まず、手をこまぬいていると見なされている。「世界規模の対処」を採択した横浜会議から7年。リオ会議は、「国際協力の戦略」などを討議する。その間にも児童ポルノは広がり続ける。 ネット流出で一生消えぬ傷<自殺未遂を何度も繰り返しました。ネット上に自分の写真がばらまかれていないかと、何かにとりつかれたように探しました> 性的虐待を幼い頃に受け、写真を撮られたという女子大生から、日本ユニセフ協会に手記が寄せられた。 <あの写真があるかぎり自分は絶対に結婚もできません。児童ポルノが簡単に手に入る世の中では過去を忘れることはできません。人生は終わってしまったように感じます> 同協会の中井裕真広報室長は「ネットに流出すれば心の傷は一生癒えない。被害者は、誰に自分の画像を見られているのかと恐怖に苦しみ続ける」と訴える。 逮捕された男らは「児童ポルノをファイル交換ソフトで手に入れた」と供述。県警が押収したファイルに、数年前に別の事件で押収した女子高生のわいせつ動画や、10年前に撮影された女子児童のあられもない映像もあった。 1日1万件以上のアクセスを集めたものもあった。県警幹部は「女児が成人になっても、映像はネットに残り、広まってしまう。ファイル交換ソフトが拍車を掛けている」と指摘する。 共有フォルダーにないと逮捕不可事件で使われたのは、ファイル交換ソフト「イーミュール」。画像などのファイルを共有フォルダーに保存すると、利用者はデータを共有し、長時間の動画も短時間で受け渡しできる。 埼玉県警は、イーミュールをインストールした捜査パソコンで「サイバーパトロール」を開始。9〜10月、強制捜査に踏み切った。ところが、押収パソコンのほぼ半数は共有フォルダーに児童ポルノはなく、ファイルは消去されていた。ネット掲示板で「警察がイーミュール利用者を狙って捜査している」との情報が広まり、捜査は難航する。 児童ポルノを持っているだけでは「個人で楽しむため」と見なされて取り締まれない。共有フォルダーにあれば、「提供目的」などで摘発できる。捜査員は「共有フォルダーにないと逮捕できないのはおかしい。欧米では所持で100人単位で摘発した国もある」と嘆く。 児童ポルノ問題に詳しい後藤啓二弁護士は「ファイル交換ソフトで被害が拡散する状況が改めて明らかになった。入手する側を規制する対策を早急に講じるべきだ」と話している。 規制強化、海外に立ち遅れ児童ポルノ規制で、販売や提供を目的としない「単純所持」を禁止していないのは、主要8か国(G8)で日本とロシアだけ。 韓国は昨年、法改正し、単純所持を2000万ウォン(約140万円)以下の罰金とした。「外国からは『まだ規制していないのか』と驚かれることも多い」(外務省)という。 与党は今年6月、単純所持に罰則を設けた改正法案を国会に提出した。ネットでは所持をどの時点でとらえるか、難しい面がある。パソコンに入った時点で所持とすれば、迷惑メールを受け取った人も、所持になってしまう。与党案は「性的好奇心を満たす目的」の所持に限り、対象を児童ポルノを集める者に想定している。 一方、民主党は「恣意的な捜査につながる」と反対し、有償取得などを罰する「取得罪」を盛り込む改正案骨子を発表した。 今国会の法改正、政局混迷で難航秋の臨時国会で、改正論議の深まりが期待されていた。ところが、政局が解散含みから、世界的な経済危機への対応と目まぐるしく移り、改正案は宙に浮いたままだ。 自民党法務部会長の桜井郁三衆院議員は「臨時国会の中心は景気対策。今国会での改正は難しい」と語る。 もう一つの課題は、ネットにあふれる児童ポルノをどう消すかだ。プロバイダーの協力で画像掲載サイトを閲覧させない「ブロッキング」が注目されている。 欧米で昨年末までに10か国が導入。スウェーデンでは、ネット利用者が児童ポルノサイトに接続しようとすると、画面に「STOP」という警告と単純所持の罰則などが表示される。 堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)の話「ブロッキングは、ネット上にあふれる児童ポルノを減らす武器になる。規制のない国のサーバーを経由すれば閲覧できるため、各国間の協調も必要となる」
(2008年11月16日 読売新聞)
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