韓国言論財団が派遣した韓国の先生方ら11人が11月5日、読売新聞東京本社を訪れ、社内を見学し、NIE事務局員らと活発に意見交換した。韓国でNIEを実践している小中高の先生方に、日本のNIE事情を見てもらおうと企画されたもので、小学校のNIE授業を参観し、NIEを進める図書館も訪問するなど、さまざまな取り組みを視察して回った。
この日は夕方、読売新聞に到着。高野義雄NIE事務局長から読売新聞のNIEの取り組みについて説明を受け(写真右下)、元中学教諭の鹿野川喜代美NIE企画デザイナーから新聞を使った多彩な授業例を聞いた(写真右上)。
まだNIEが根付いていなかった韓国を2001年に訪れ、新聞を使った授業をした経験がある鹿野川デザイナーは「会った中学生は礼儀正しく、しつけがしっかりしていると思いました。お母さん方が先生役になってNIEの教育を行って感心しました」などと思い出を披露。
韓国側からも「10年ぐらい前だとNIEという言葉は定着していなかったが、新聞を使った教育はありました。今は創造性を広げる目的や、知識、情報を得る目的が中心」という説明があった。「日本では名門校でNIEはどう行われていますか」など、受験熱が高まっている韓国らしい質問も出された。
編集局ではちょうど5時から、翌日朝刊早版の紙面について話し合う編集会議(社内では「土俵入り」「立ち会い」などと呼ばれる)が開始。各部のデスクたちが掲載予定を説明する様子も近くで参観し、臨場感あふれる新聞制作の現場にも立ち会うことができた。
◆新聞で世の中を知るのは「初恋のドキドキ」
新聞を教材にして授業を展開する運動(NIE)を日韓両国の教諭らが考える「日韓NIE交流セミナー」(京都府NIE推進協議会主催、韓国新聞活用教育学会、日本NIE研究会、京都市教委共催)が1月24日、京都市の京都新聞社文化ホールで開かれ、「学校と家庭をつなぐNIE」をテーマに意見交換した。
日本NIE研究会の妹尾彰会長が「約20年NIEにかかわっているが、これほど幅広い団体が協力してセミナーを開くのは初めてで意義深い」とあいさつ。
韓国新聞活用教育学会の李貞均(イチョングン)会長が基調講演した。家庭で新聞を活用するファミリー・フォーカスの意義などについて、韓国ドラマ「冬のソナタ」を引用し、「家族と語らいながら多様な新聞記事で世の中を知り、情報と知識を得るのは、初恋に似たどきどき感がある」などと説明した。
続いて日韓4人の教諭らによるシンポジウムがあり、神奈川県横須賀市立鴨居小の臼井淑子教諭、ソウル市大光小の黄廷児(ファンチョンア)教諭らが学校での取り組みを紹介した。
子どもの新聞の切り抜きノートに、週末に保護者への手紙を書き、返事を求めているという黄教諭は「新聞記事が共通の話題となり家庭が子どもの学習を理解した。教諭の指導を父母の励ましの言葉が補い、子どもの学習を高めてくれる」などと効果を強調した。
また、同学会の金亨燮(キムヒョンソプ)副会長は、韓国の大学入試について、今後内申書にあたる学校生活記録簿にNIEの欄が設けられることや、口述、論述試験に時事的問題を扱う大学が多いことなどを説明、韓国でのNIEの浸透ぶりをうかがわせた。
話を聞いていた京都市立山階小の中村友彦教諭(28)は、6年生の学級でNIEを実践中。「保護者に遠慮していたが、背中を押してもらった。子どもが興味を持った記事に、まずは一行でも保護者の意見を書いてもらうことから始めたい」と話していた。
前日の23日には、日韓の教諭らの交流会が読売新聞大阪本社で開かれ、大谷まなほ・名古屋市立城山中教諭が実践報告した。詳報はホームページ「よみうりNIEネットキャスター」(
http://osaka.yomiuri.co.jp/nie/
)に掲載。
◇
京都新聞社でのセミナーに先立ち、午前中は、京都市左京区の錦林第3小学校を訪ね、3年2組の松下誠太郎先生の授業を、韓国と日本の先生たちが参観した。
NIEのこうした公開授業が京都府教委、京都市教委の後押しで、海外の先生たちと共通の経験として体験されたことは、教育関係者にとって新しい試みとして注目された。
松下先生は、新聞をそのまま授業に取り入れ、「はてな箱」に、横につないだ40bもの朝刊を用意して、子どもたちの注意を引き寄せた。また「阪神淡路大震災の10年」というとうろう流しの記事を紹介、子どもたちが何を感じてとっていくかを、黒板に書き出していった。
読売新聞大阪本社での
歓迎レセプション
錦林第3小学校の
公開授業
授業風景
松下誠太郎先生
授業風景
李会長から子どもたちにプレゼント
京都新聞社での日韓交流NIEセミナー
(第4回京都府NIEセミナー)
自然災害のこわさと、それを受け止めた市民の生活を知らせる授業は、見学者を感心させていた。子どもたちを複数、指名してつぎつぎに発表していく手法や、プレゼンテーションの力をみるやり方に、韓国側の先生たちから「熟達した授業法」として受け止められ、韓国の先生はクラスでさっそく取り入れたい、と話していた。
日韓NIEパネルディスカッション
『学校と家庭でのNIE』
2001年1月27日(土)
午後1:00〜午後5:00
読売新聞社9階会議室
▲ 日韓NIE交流
▲ 韓国側の報告から
▲ 質疑応答
▲ 韓国代表団の視察から
(1)日韓NIE交流
日韓NIE(教育に新聞を)パネルディスカッション「学校と家庭でのNIE」が1月27日午後、東京・大手町の読売新聞社で開かれた。
韓国側から韓国新聞活用教育学会(李貞均会長)メンバー15人、日本側から日本NIE研究会(妹尾彰会長)会員などNIEに関心を持つ教職員、大学生、主婦など計約50人が参加した。
日本NIE研究会の妹尾会長が「教育にNIEをどう活かすか」、また韓国新聞活用教育学会の李会長が「ファミリー・フォーカスは新しい知識編集」と題してそれぞれ基調講演した。今回の両国NIE交流テーマの一つが、ファミリー・フォーカス。新聞情報を使って家庭で親と子がコミュニケーションを深める運動のことをいう。
韓国は、欧米や日本と比べるとNIE導入が遅かったが、ファミリー・フォーカスでは注目すべき活動を展開している。このため、NIE実践成果を蓄積・発展させようと昨年有志で発足させた日本NIE研究会が、ファミリー・フォーカスの“先輩国”である韓国の関係者を招請した。
パネルディスカッションではNIEとファミリー・フォーカス活動について韓国側から4人の実践報告があった。中でも日本の参加者から注目されたのは、韓国でのファミリー・フォーカス指導者たちの育成方法についての報告。
韓国の大手新聞社が推進母体となり、ファミリー・フォーカスに経験豊富な教師、主婦などをインストラクターに委嘱。教師、主婦を対象とした研修を一九九七年以来76回開催、現在6000人の“卒業生”が学校と家庭でファミリー・フォーカスを展開。後進の育成体制を確立し、活動のすそ野の広さを誇っている。
今回の交流を通じて両国の関係者は、NIE・ファミリー・フォーカスとも、コミュニケーションを深めるための“ツール”として共通の土俵を持っており、教師と親たちが緊密な連携を保つことで、子どもたちが祖父母、親兄弟など世代間の価値観の違いを学び、多様な見方を養うのに絶好の手法であることが再認識された。
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(2)韓国側の報告から
◇李貞均さん(韓国新聞活用教育学会会長)「ファミリー・フォーカスは新しい知識編集」
FAMILY(ファミリー)とは「父と母が情報を巡って生涯教育の一つとして毎年学んでゆく」という英語の頭文字と解釈できる。
家庭は新しい知識と情報の場であり、多様化世界、個性化時代に対応する知識編集の発信基地でもある。また断絶しがちな世代間をつなぐ情報ネットワークの場としての役割も見逃してはならない。
対話時間を確保して世代間の理解を増し、社会における家族構成員の役割増大に即応して、ファミリー・フォーカスも積極的に普及・拡大してゆく必要がある。
文化的にも共通の背景を持つ両国がNIEの分野でも継続的に交流しましょう。私は日本映画ファンの1人ですが、周防監督の映画をもじって「shall we family―focus」と呼びかけたい。
◇韓眞淑さん(韓国NIE研究所所長)「お母さんの考え・子どもの考え」
私の娘は小学2年のときから子供新聞を読み、その記事に対する自分の考えを作文にまとめるように習慣づけました。4年生の今でも続いています。
こうしたNIE日記を一般家庭で展開するファミリー・フォーカスにも応用し、(1)その日の新聞の中で一番印象に残る記事を選択 (2)記事の内容について簡単に要約し、自分の考えを書く (3)慣れたら要約を長く書く――ことによって、社会現象に対する自分の考えと意見を持つようにします。
お母さんの努力も大切です。子どもに読ませたい記事を選び、自分の考えを書いて子どもに渡します。それだけで、子どもはお母さんの考えに興味を持ち、親と子の対話の橋渡しとなってくれるでしょう。
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(3)質疑応答
Q ファミリーフォーカスの韓国の事情について教えてください。
岸尾 「昨年十月、韓国で申さんの家庭でファミリーフォーカスを見学させていただいた。実際に新聞を使って作品をつくるところを見ました。親子四人が新聞を前に話している姿をみて、あのような姿はいまの日本でどのように持てるのか、考えました。ストックホルムでも二つの家庭で見ましたが、申さんがつくった作品のレベルには達していなかった。日韓でそれぞれ家庭の状況は違うが、韓国のファミリーフォーカスから多くのことを学んでいくことができます」 シン 「子どもが小学校に入ってから四十分、さらに六十分間は集中できるようにと、子どもと約束した。テレビのチャンネルガイドを切り取ることから始め、次第に切り取る題材を広げて子どもと記事について話すようにしていきました」
Q 韓国ではファミリーフォーカスを進めるために具体的にどのようなことが行われているのですか。
ハン 「新聞社が父母や教師のためのNIE専任講師を組織している。今回のメンバーにも講師に委嘱された六人が来日している。研修でいろんなアイデアを出し合い、この講師団が六千人の父母にNIE教育をした」
Q 募集はどのようにやったのですか。
ハン 「新聞で募集しました」
Q(韓国側の出席者から)岸尾先生の授業を拝見させてもらいましたが、生徒の発表の力に感心しました。スピーチのやり方をとくに教えていらっしゃるのですか。
岸尾 「スピーチの仕方について先生たちは意識的にやっています。韓国の六、七校を見たが、スピーチの力は日本の子どもより上だと感じました。私の学校ではデベートの授業として位置付けているが、これにもNIEは効果的で、インターネットで社会に感心を持たせ、さらに生徒にスピーチする力をつけていくのに大きく役立ちます」
Q 十九歳の大学生です。NIEの資料集に感動して、小学校の教師になろうと思っています。子どもが自発的に新聞を利用してことが大事ではないかと感じました。
シン 「この完成した本を作るまでに小学一-四年の間に練習用のスクラップ帳が何冊もできました。マンガ、記事、社説などいろいろなものを題材として取り上げていくうちに、親子の間でこころが通うようになりました。このコミュニケーションが大切だと思います」
最後に吉田伸弥日本NIE研究会副会長(元読売新聞編集委員)が「これまで学校でのNIEはあっても家庭でのNIEの視点がなかった。今回の日韓交流会の意義もここにあり、今後、先生が家庭におけるNIEを一緒になってやっていく教育が大切だと感じました。この点で新聞社や新聞協会の理解が得られれば、素晴らしいことだと思います。韓国での漢字の問題、インターネット上の難しい漢字の増加問題、それにどこにでもある親子関係の問題など共通の課題はたくさんあります。インターネットは可能性を広げてくれたが、新聞メディアの紙とインクの良さも忘れないでもらいたい」と締めくくった。
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(4)韓国代表団の視察から
日韓NIEパネルディスカッション(1月27日、読売新聞本社で開催)に参加するため先月25日訪日した韓国新聞活用教育学会(李貞均会長)の一行15人は、28日までの4日間、視察スケジュールを精力的にこなした。
一行はまず横浜市にある日本新聞博物館を訪れ、1時間半にわたって展示物やビデオを興味深げに見て回った。このあと、横浜中華街の店で日本NIE研究会メンバーと懇談。昨年は日本NIE研究会のメンバーが訪韓し、韓国のNIE事情を視察しており、両国のメンバーは互いに再会を喜び、その後の活動を報告し合うシーンがあちこちで見うけられた。
翌日は藤沢市立長後中学校を訪問、2年生4クラス135人が7班に分かれて討論しあう「平和学習中間報告会」の授業を参観した。この授業は、5月中旬に予定されている広島への修学旅行に向けての新タイプの授業「総合的な学習の時間」の一環。
班のテーマは「地雷」「劣化ウラン」「ヒロシマ・ナガサキ」などで、各班が夏・冬休みのレポートや新聞の切り抜きなどに基づいて報告、生徒たちは被爆した朝鮮半島出身の人たちにも被爆援護法適用の必要性に言及した。そして韓国のメンバーとも意見交換、生徒からの「広島・長崎の原爆投下をどう思いますか」の問いに、李会長は「悲惨で不幸なできごとだった」と答えた。
一行はこのあと東京都港区白金の聖心女子学院初等科を訪問、パソコン・ルームでの5年生の社会科授業を見学。一行が見守る中、日韓ワールドカップの記事を新聞やインターネットを使って探し出し、国際理解を深める情報の収集方法を学んだ。
李会長が初等科の5年生を前にNIE授業を展開。@国際ニュースに登場する人物写真が語りかける雄弁な情報A親か友達に見せたい新聞広告を選んでくださいB国際ニュースの発信地を世界地図から探し出し、日本と線で結ぼう――など、巧みな語り口で子どもたちの好奇心を引き出していた。
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日韓NIEパネルディスカッションに参加した主なメンバー(敬称略)
◇日本NIE研究会
妹尾彰会長(NIEコーディネーター)
吉田伸弥副会長(元読売新聞編集委員)
岸尾祐二事務局長(聖心女子学院初等科教諭)
◇韓国新聞活用教育学会
イチョンキョン会長
チスク(西串中学校教師)
キルヨンロ(創造工学研究所所長)
ハンチンスク(韓国NIE研究所所長)
シンウンチャ(亜州大学校社会教育院講師)
◇読売新聞社
岡田誠太郎(編集局NIE事務局長)
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日本新聞
博物館を見学
=1月25日
聖心女子学院の
パソコンルームで
インターネット授業
を見学(後方奥)
社内見学をする
一行
懇談会で
歓迎の言葉を
述べる読売新聞
編集局の岡田
NIE事務局長(左端)
聖心女子学院の
図書室で NIE授業をする
イチョンキョン会長(後方奥)
実践報告する
シンウンチャさん
実践報告する
ハンチンスクさん
午前中の懇談会で
両国NIE事情について
意見交換
=1月27日、読売新聞社で
社内見学のさい、老川編集局長(手前右端)から紙面の説明を受ける
民族衣装の
チマチョゴリ姿で
実践報告する
チスクさん
聖心女子学院
初等科5年生を前に
NIE授業を行う
イチョンキョン会長
(奥中央)
長後中学校の
教室入口に
掲げられた
「こんにちは」の
ハングル文字
長後中学校で行われた
「総合的な
学習の時間」の
授業風景=1月26日