北欧の教育
 北欧のノルウェーとフィンランドの教育施設を8月下旬、日本で新聞活用学習(NIE)を実践する小中高校の教諭16人が視察した。第10回海外NIE事情視察団として、中高生らが取材体験できる新聞社のマルチメディア施設を見学したほか、小中高校の先進的な取り組みを見聞した。すべての子供たちに平等な公教育を提供する二つの福祉国家で、視察団はNIEの近未来像を見た。同行取材の経過を中心に報告する。
(NIE事務局長 高野義雄、写真も)
ヘルシンキ中心街
ヘルシンキ中心街

国際学習到達度調査

リレモーエン小学校で
自分の好きなテーマの新聞記事や写真を切り抜きする
小学生と視察団(ノルウェーのリレモーエン小学校で)
プロNIE部長
生徒が新聞に親しむための資料を示すフィンランド新聞協会の
プロNIE部長

 海外視察はNIE活動を推進する日本新聞教育文化財団(本部・横浜市)の主催。神奈川、大阪、岡山など11府県の教諭16人を含む21人が、8月24日〜31日に首都オスロ、ヘルシンキの順にそれぞれ3泊し、小中高計5校と新聞4社などを巡った。
 ヘルシンキ市内の新聞博物館では、フィンランド新聞協会のピリョ・リータ・プロNIE部長が、フィンランドで1964年に導入され、40年以上続くNIEや若い読者向け活動の現状を説明してくれた。
 毎年2月の新聞週間に、全国約200の新聞社が、新聞を各地の学校に無料配布(今年は合計約120万部)するほか、記者が出前授業に出かけている。協会は、授業で新聞を活用する際に役立つ資料を10種類以上作って教師に無料配布。児童向けに楽しく新聞を読むための冊子4種類を作っている。
 協会は1982年から、12〜20歳の若者を対象にメディア利用について定期的調査を実施しているが、最新の調査では回答者の約9割が、少なくとも週1回新聞を読み、学校で新聞を使った授業を受けていた。
 2000年以後、経済協力開発機構(OECD)が、15歳男女を対象に3年ごとに実施する国際学習到達度調査(PISA)で、フィンランドは過去3回とも世界トップレベルの成績を収めた。追跡調査では、新聞を読む頻度が高い生徒ほど読解力の得点が高かった。
 プロNIE部長は「親が朝、新聞を読む姿を見て、子供は新聞を読む習慣をつける。読解力が高いのは、外国のテレビ番組が吹き替えでなく、字幕を読まねばならない影響もあるだろう」と話していた。

ゲーム感覚で記者体験
ヘルシンキのサノマ社のマルチメディア施設。まるで映画の撮影セットのようなミニ市街地になっている
ヘルシンキのサノマ社のマルチメディ

 視察団は、それぞれの国で新聞社が運営する先端的なNIE施設を見学した。
 どちらも体験型で、中高校生らが数人のグループに分かれ、携帯端末を使ってゲーム感覚で取材、記事を協力して書き上げる。事実確認の難しさや取材倫理も考えさせられる仕組みだ。
 フィンランド唯一の全国紙ヘルシンギン・サノマート(約47万部)を発行するサノマ社の施設(約300平方メートル)は、ヘルシンキ中央駅近くの本社地下2階にあり、映画の撮影セットさながらのミニ市街地だ。
 視察団が体験したのは高校生向けプログラム。「行方不明だった女子高校生の遺体が学校近くで見つかった」という想定で始まる。参加者はモニター画面の登場人物を見ながら携帯電話にかかってくる指示などに応じて、ミニ市街地の各所で取材し「殺人犯は恋人」という結末に至る記事を書く。同社の記者が案内人で参加者の質問に対応する。
 できた紙面は参加者全員で評価する。新聞に掲載してはいけない写真を選んだグループは倫理上の問題を痛感させられる。粘り強い取材をしないと犯人はわからない展開になっている。年間約7000人の先生と中高生が、授業の一環としてここを訪れるという。
 ノルウェー・オスロの南約50キロにある地方紙ドラメンズ・ティーダナ(約4万部)の施設(地下1階)には、近くの高校1年生約30人がやってきた。4チームに分かれ、各自が携帯端末を持って室内各所で断片情報を集め、チームでまとめて記事にする。不確かな情報に惑わされると事実を見誤り、複数の情報源から事実確認する重要性を体験する。教員経験のある案内人が生徒たちに行動を指示し、取材に際して出てくる倫理的問題などについて話し合い、深く考えさせる。
 視察した有馬進一総括教諭(神奈川県藤沢市立大庭中)は「参加した生徒には実社会で必要な情報を読み解く力が身につく。日本にも欲しい未来型のNIE施設だ」と話していた。
横浜市立大鳥小で
ノルウェーのドラメンズ紙のマルチメディア施設で、取材体験する高校生
 
食品リサイクルの輪
各自が携帯端末を使って取材、施設内の各所で情報を集め、グループごとに記事を書く


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