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「傘かしげ」「時泥棒」・・・今に生きる思いやり 「江戸しぐさ」道徳教材に
◆あいさつする子増えた
雨の日に互いの傘を外側に傾け、ぬれないようにすれ違う「傘かしげ」など、江戸時代の町民たちの公衆マナーである「江戸しぐさ」を、道徳の時間に取りあげる動きが広がっている。
◎「江戸しぐさ」は、当時、世界でも有数の人口密集都市だった江戸で、お互いを尊重しつつ、気持ちよく生活するため生み出された庶民の知恵。その江戸の中心地、東京都千代田区は今春から教材作りを始め、区立の全小中学校で今年度から使用してもらう予定だ。
「傘かしげ」のほか、乗合船で後から来る人のためにこぶし一つ分腰を浮かせて席を作る「こぶし腰浮かせ」、自分の過ちを率直に認める「うかつしぐさ」、断りなく押し掛け、相手の時間を勝手に使うことを禁じた「時泥棒」など、江戸しぐさは、行動規範にまで広がる。電車やバスでの席の譲り合いなど、現代社会にもつながるとして、公共広告機構の啓発広告や社員研修などに利用されている。
昨年から区民向けの教養講座などで江戸しぐさを伝えてきた千代田区では今年度から、教育現場にも導入する。区教育委員会は、10の区立小中学校と区立中高一貫校に、道徳の時間で取りあげるよう指示。道徳の教諭らが今秋を目指して、教材作りを始め、しぐさがよく分かるように、イラストを多く使ったり、映像資料を付けたりする予定という。
また、江戸しぐさを身につけた地域の“江戸っ子”を招き、授業をしてもらうことも検討中だ。「マナーとともに、地域のことを学ぶことにもなる」と、一挙両得を狙う企画。石川雅己区長も「地域が共生していくための基盤として、子供のころから身につけて欲しい」と意気込む。
すでに取り入れている学校も。江戸の下町だった台東区の忍岡中学校では2年前から、道徳の時間に教師が「傘かしげ」などの動作を取り入れた寸劇を行ったり、学校生活のルールとして紹介してきた。
そのかいあってか、「下校する中学生が横に広がって歩いていて迷惑」といった地域の苦情がなくなる一方、「道で会うとあいさつする子が増えた」と評判は上々だ。「あれをしなさい、これをするなというより、江戸っ子らしく粋にやろうといった方が、子供たちも納得してくれます」と、永久保佳孝副校長は話す。
「かつては大人から子供に受け継がれていた。小中で教わる機会があるのはいいこと」。江戸しぐさの研究家で、「江戸しぐさ語り部の会」の越川禮子会長は、こうした動きを歓迎する。最近は九州や四国などからも講演依頼があるといい、「東京だけでなく、全国に広がってほしい」と期待している。(大木隆士)
