赤ちゃんポスト

 事情があって親が育てることの出来ない子供を受け入れる「赤ちゃんポスト」について
聞いたことがありますか。半年ほど前、日本で初めて熊本県の病院が作りました。
今月のNIE特集は、熊本と、お手本になったドイツに、「ポスト」を訪ねました。
その後の動きや、受け入れた赤ちゃんはどうなるのかなどを調べながら、
「生命」の重さを考えてみたいと思います。


日赤医療センターで
モアイが立ち並ぶイースター島
赤ちゃんはお母さんのおなかの中で10か月近くもはぐくまれ、力強く生まれてくる。11月に生まれた女の赤ちゃんは、おなかがすくと泣いてミルクを求めた(東京都渋谷区の日赤医療センターで、伊藤紘二撮影)

置き去りの命 救いたい
 熊本市の慈恵(じけい)病院は5月10日、親が育てられない赤ちゃんを受け入れる「赤ちゃんポスト」(正式名称・こうのとりのゆりかご)をスタートさせた。
 病院正面から裏手に回る途中の外壁(がいへき)の地上1メートルほどの高さに扉がある。扉を開けると、手の届く位置に保育器ベッド。扉が開くと、看護師が常駐(じょうちゅう)する2階の新生児室や、ナースステーションのブザーが鳴る。保育器ベッドの天井に備え付けられた監視(かんし)カメラも作動(さどう)、病院スタッフは映像を見て駆け付ける。室内は適温に保たれ、24時間対応。親は身元を明かすことなく、赤ちゃんを託せる。
 なぜこのような「ポスト」が必要だったのか。
 新生児(生後28日未満(みまん))が捨てられ、命を落とす事件が後を絶たないからだ。捨てられる命を救いたい。慈恵病院はそう考えて、先例のあるドイツを参考に、「ポスト」を作った。設置から約7か月で11人の乳幼児(にゅうようじ)(男児9人、女児2人)が預けられた。このうち男児1人は後に親が引き取った。親たちが赤ちゃんを置き去りにした理由は分からない。一部の親が「育てられない」というメモを残しただけだ。
 やむにやまれない事情があったのだろう。扉脇(とびらわき)のインターホンを押した母親がいた。赤ちゃんを抱っこし、泣きながらその胸の内を、夜通し看護師に訴えたこの母親は、思い直して帰っていった。「ポストがなければ心中していたかもしれないケースだった」と関係者は振り返る。少なくとも11人の命が救われたのは間違いない。
 半面、ポスト設置に賛成できないという人もいる。「簡単に子どもを捨て、育児をしない親が増えるのではないか」「無責任な妊娠を結果的に後押ししてしまうのでは」「親子の結びつきが弱まるのでは」という意見だ。もともと想定した新生児でなく、言葉も話せる3歳児が預けられた時には、「安易な子捨てが現実になった」と批判が出た。
 設置を認めた熊本市や熊本県は開始後1年の実績や課題を検証し、来年夏に中間報告として結果をまとめる予定だ。
(大浦哲)


「赤ちゃんポスト」に赤ちゃんが預けられると

▼次のページへ