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「あの失格で今がある」競歩の山崎7位入賞

男子50キロ競歩、ガッツポーズでゴールする山崎勇喜選手=今利幸撮影

 【北京=梅村雅裕】昨年の大阪世界陸上で見舞われた係員の誘導ミスによる「失格」という悲運を、北京で振り切った。22日の50キロ競歩で山崎勇喜選手(24)が7位入賞を果たした。

 目指していたのは、長距離ランナーだった。持久力には自信があり、駅伝にあこがれていた。進学先を富山商に決めたのも、陸上競技の強豪で鍛えられたかったからだ。でも現実は甘くなかった。

 「木の陰から隠れるようにじっと練習を見ていて、変な子だなと思った」。山本正樹監督(39)は振り返る。入部希望者と聞いて走らせてみたが、走り方で長距離に向かないことはすぐにわかった。「女子の練習相手かマネジャーなら」と言って入部を断ったが、本人の意志は固い。やむを得ず勧めたのが競歩だった。

 「くねくねして格好悪いし、正直言って嫌だった」と山崎選手は言う。街中での練習中、学校帰りの小学生に笑われたこともある。それでも富山県大会で優勝したりするうちに、競歩こそ自分の居場所だと思うようになったという。

 その山崎選手を一躍時の人へと押し上げたのが、「誘導ミス」だった。灼熱(しゃくねつ)の大阪で行われた昨年の世界陸上。意識が朦朧(もうろう)としていて、大声援は遠くにかすんで聞こえた。失速したはずなのに、なぜかタイムが速かった。

 「(入賞した)ヘルシンキ(の世界陸上)とは何か違う、変な空気を感じた」と山崎選手は振り返る。確かにゴールしたのか周囲の係員に聞いても、らちがあかない。失格と知ったのは、医務室に運ばれてから。頭が真っ白になった。

 公式記録は「途中棄権」扱い。しかし山崎選手は「あの経験があったから今の僕がある」と言う。世界の壁の厚さも感じ、北京に向け、さらに厳しい練習を積むきっかけになった。

 励ましのメールや手紙が全国から集まり、練習していても小学生に笑われることもなくなった。「競歩をメジャー競技にするために、僕は歩く」。山崎選手はそう決意している。

2008年8月22日22時35分  読売新聞)
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