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5回転ジャンプできる?…フィギュア

 冬季五輪の華、フィギュアスケートの見どころの一つはジャンプ。五輪の男子では、4回転ジャンプなしでは金メダル獲得は難しいと言われる。約0・7秒の空中技を支えるのは、ジャンプの高さと高速回転。技術の進歩によって、5回転ジャンプも夢ではない。

走り高跳び型へ

 ジャンプは、助走でためた運動エネルギーを瞬時に、高さと回転に変える技。難易度の高い4回転ジャンプ(トーループ)に成功しているエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)、ステファン・ランビエル(スイス)らの滞空時間は少なくとも0・7秒。氷上から50〜60センチも跳び上がる。

 湯浅景元中京大教授によると、女子より体重がある男子は、本来回転しにくいが、重い胴体を大きくひねってためを作り、踏み切りで氷をけると同時に、ひねりの反動で回転を生み出す。この時、氷をける力は約200キロ・グラムを超える。回転軸を出来る限り体の中心にまとめるのが高速回転のこつだ。

 フィギュアの世界でジャンプの成功は、「跳んだ」ではなく「降りた」と表現される。着氷は極めて重要だ。4回転の成功率が上がったのは、「跳び方が、走り幅跳び型から走り高跳び型に変化し、着氷がしやすくなったことが大きい」と湯浅教授は指摘する。

 助走の勢いでできるだけ遠くへ跳ぶのが「走り幅跳び型」。着氷で横滑りして、転倒しやすかった。一方、「走り高跳び型」は、助走の勢いを、高く上がって滞空時間を稼ぐことに振り向けた。真下に着氷できるようになり、ジャンプ力のある若手選手も次々に挑戦し、成功させている。

「至難の業」

 5回転への進化はあるのか。日本代表監督、吉岡伸彦・千葉大学教授は、「身体能力の高い選手がでてきて、滞空時間、回転速度が10%ずつ向上すれば十分に可能」という。

 滞空時間0・77秒で4回転している選手の場合、10%向上すれば0・85秒(高さ89センチ)となり、空中で4・7回転できる。踏み切りのひねりを含めれば5回転できる。吉岡教授は「垂直跳びで1メートルを超える人がいることを考えれば、実現は遠くない。ただ演技の流れの中で成功させるのは至難の業だ」と語る。

3回転半 成功まで90年

 ジャンプはフィギュアの進化の歴史と重なる。トップ選手の高度な技に、多くの選手が追いつくと、さらに難易度の高いジャンプが登場してきた。最も難易度の高いアクセルの場合、1882年の1回転半から3回転半の成功までに90年以上を要した。4回転で成功しているのは、6種類のジャンプのうち難易度の低いトーループとサルコーの2種類。両方成功している選手は、数人だけだ。

 トーループは、右足の外側のエッジに体重を乗せた状態で、左のトー(爪先)で氷をけって踏み切る。両足を使ってけるため、助走のエネルギーが効率よく、高さと回転に変換される。1988年にカナダのカート・ブラウニングが世界で初めて4回転に成功した。

 サルコーは、左足内側のエッジに体重を乗せた状態で、右足を振り子のように前方に振り上げて踏み切る。ジャンプの瞬間、内またが「ハの字」になるのが特徴。片方の足だけで踏み切るため、高くは跳べないが、回転は速い。女子で初めて安藤美姫が4回転を成功させたジャンプでもある。

 「いずれ試合に勝つには、ルッツ、ループなどの4回転も必要な時代が来るだろう」とプルシェンコは予測する。

腕をたたむとなぜ速く回る

 スピンも見せ場の一つ。上体をそらしたり、足を上げたり、ひざを曲げたりしながら、多様な組み合わせで回転する。速度は、体の中心軸から手、足、頭までの距離で決まる。例えば、腕を広げると回転は遅くなり、体に近付け、頭上に伸ばすと速くなる。座った姿勢から立ち上がっても速くなる。物理学でいう「角運動量保存の法則」が成立するためで、ジャンプ時の回転も同様だ。

 美しいスピンは軸を安定させる強靱(きょうじん)な筋力が必要だが、実は軸はまっすぐに回転していない。「すりこぎのような動きをしている」と、湯浅教授は説明する。軸をななめに傾け、腰のあたりを動かさずに氷に円を描きながら回転し、姿勢を安定させている。

 選手たちは、U字形の溝がある刃の内側、外側のどちらかのエッジの1点に体重を乗せて、スピンする。練習の積み重ねで目が回ることはなく、高速回転の直後も1、2秒で風景が止まって見える。日本代表の小塚崇彦の父、嗣彦さんは「スピンでは、氷との摩擦力が小さい点を見つけられる感覚が重要。ジャンプと違い、上達は練習量に比例する」という。

2010年2月19日  読売新聞)


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